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2024年6月04日

【質実剛健】今注目を集めるドイツ時計とは?歴史や魅力を徹底解説

時計

時計と言えばスイスと言われていましたが、実は時計ブランドは世界中多くの国に存在します。中でもドイツは時計に力を入れており、スイスに次ぐブランドの多さと高い技術を武器に今もブランドが増えつつあります。スイス時計とは違った魅力がドイツ時計にはあるのが面白いところです。この記事ではドイツ時計の歴史、魅力、ドイツ時計にまつわる偉人、代表的なブランド、おすすめモデルについてまとめました。

目次

1 【質実剛健】今注目を集めるドイツ時計の歴史

1-1 東ドイツ:戦前・グラスヒュッテで時計産業が興される

ドイツ時計の歴史を語るには、アドルフ・ランゲの半生を語らねばなりません。アドルフは1837年にはアブラアン・ルイ・ブレゲの弟子にあたるヨゼフ・タデウス・ヴィンネルの下で修行を積み、天文学や物理学を学びました。ランゲは師であり義父であるゲートケスと共に事業を行い成功を収めますが、そのうちに時計製造地の中心であるスイスやイギリスへの対抗心や市民としての義務感から、エルツ山脈に時計工房を立ち上げる決心をしたのでした。

1843年以降にはザクセン政府に繰り返し書簡を送り、貧しいエルツ山脈の住民のために新しい生業を確立するための支援を訴え続けました。エルツ山脈は銀山として知られていましたが、銀が枯渇したことによって没落してしまいました。新しいビジネスモデルへの必要な投資額や収益の見込みなどを説明し、1845年にザクセン王国内務省から承認を得ることができました。貧困状態のエルツ山脈の街グラスヒュッテで15人の若者を雇い時計師として育てることを条件に融資を取り付けることができました。こうしてランゲはグラスヒュッテに移り住みました。これがA.ランゲ&ゾーネの原型であり、グラスヒュッテ産の時計のルーツとなります。

ランゲ&ゾーネは海外でも評価が高く、たちまち拡大していきました。経営を息子たちに譲り、息子たちもまた時計師やマーケターとして力を遺憾なく発揮しました。チェーンフュジー機構を搭載した科学観測用のクロノメーター懐中時計やデッキウォッチを開発しました。当時は正確な時刻を知ることは非常に重要度が高く、航海や科学観測に向けた視認性が高く精度を重要視した時計は過酷な環境でこそ愛用されました。

1930年リヒャルト・ランゲは高齢になっていたものの、時計製造技術の開発に未だに取り組んでいました。このときに論文を元に思いついたのがベリリウムをわずかにひげぜんまいに添付することで弾力性を改善するもので、すぐに特許を取得しました。この技術を使用したひげぜんまいは、後にスイスの時計師シュトラウマンがNivarox®ヒゲゼンマイの名前で販売し、現在ではほとんどの高級機械時計に搭載されています。

1-2 東ドイツ:戦後・グラスヒュッテのブランドが一時分解される

1945年の戦争終結前夜にA.ランゲ&ゾーネの本社社屋は空襲にあい破壊されてしまいます。この頃アドルフ・ランゲの曾孫ウォルター・ランゲは時計師養成学校にいましたが、卒業を後に回して一族で協力して会社の再建に取り組みました。しかし1948年にソビエト占領地区内にあった会社は東ドイツの政府に取り上げられてしまい、ブランドは消滅してしまいます。

戦争で被害にあったブランドの多くは一つに統合され、これによってグラスヒュッテ国営時計会社(GUB)となりました。(GUBはのちに民営化し、現在のグラスヒュッテオリジナルとなります)ウォルター・ランゲはこのときに西側に亡命していました。

1989年にベルリンの壁が崩壊し東西ドイツ統一がなされると、翌年1990年にドイツ人でIWCとジャガールクルトのCEOとして実績をもっていたギュンター・ブルームライン氏とランゲ&ゾーネを復活。他にもノモスやチュチマなど、グラスヒュッテ産のブランドが独立していきました。

1-3 西ドイツ:ユンハンス、ジンなど独自の進化を続ける

西ドイツはグラスヒュッテの時計産業とは全く別の発展をしており、グラスヒュッテともスイスとも違う進化を選んだ2ブランドを紹介します。

西ドイツ、ヴァルツヴァルトの中心にあるシュランベルクで壁掛け時計メーカーとしてユンハンスは創業しました。当初は鳩時計の部品製造など、表舞台に出るメーカーではありませんでしたが、創業から5年後の1866年に初の自社製時計を開発しました。創業者の子孫へ世代交代され、大量生産によりスイスに次ぐ世界2位の規模となるアメリカ式のマーケティングや手法をユンハンスに取り入れたことで、1903年には一躍ドイツ時計界のトップに上り詰め、従業員は3000人、年間300万個の時計を生産する世界最大の時計メーカーとなりました。

ジンは1961年に元々パイロットであり飛行教官だったヘルムート・ジン氏がブランドを立ち上げ、1994年にIWCの取締役兼製造部門マネージャーだったローター・シュミット氏が引き継ぎました。経歴からわかるように専門的な技術に詳しい経営者のため、独自技術の開発などにも積極的で、ジンを運営していくだけではなく、それまでになかった規格を制定していきます。

2 【質実剛健】今注目を集めるドイツ時計の魅力

2-1 シンプルで合理的。質実剛健と言われるスタイル

ドイツ時計の最も知られている特徴はシンプルで合理的、質実剛健とされている点です。時計に限らない話にはなりますが、日本人に気質が近くモノづくりに真摯で真面目な国民性だと言われています。ジンが掲げるコンセプトは「使うためだけの時計」ですが、大小あれどドイツブランドの多くが、時計は時刻を知る道具だと認識しているようです。

そのため視認性や堅牢性はドイツ時計において最重要の要素であり、ムーブメントへのこだわりも強いです。汎用モデルではデザインが最初にあり、デザインを実現するためのケースやムーブメントを購入品から探すといった手法が一般的です。ケースよりも数段小さなムーブメントが使われていたり、スクエアケースに丸いムーブメントが使われるのはそういったケースが多いです。

それに対し、ランゲはムーブメントファーストと言われています。各モデルごとにムーブメントを開発し、そのムーブメントに合った文字盤やケースを選んでいく手法を取ります。そのため文字盤・ケースデザインに無理が少なく、裏面からはケースぎりぎりに納まったムーブメントを楽しめます。

2-2 アドルフ・ランゲが考案した数々のグラスヒュッテ様式

グラスヒュッテ様式とはスイス時計とは異なる思想をもつドイツ時計において、A.ランゲ&ゾーネの創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲが考案した独特の機構やデザインのことです。A.ランゲ&ゾーネおよびドイツ時計によく見られる独特の機構を下記にまとめます。

3/4プレート

3/4プレートとはムーブメントの3/4を覆うほどの大きなプレートを地板とする設計で、全ての歯車、軸も一枚の上部プレートによって押さえられています。スイス時計の多くはムーブメントの上部プレートは数枚に分かれており、歯車や軸もそれぞれ分割されたプレートによって押さえられています。それぞれ独立して動く歯車を一つずつ調整するため、経年などの微量の動きで動かなくなることもありました。

しかしそれらを統一することはシンプルに堅牢性が上がることに加え、メンテナンス性・安定性が向上します。一枚のプレートが全てを制御する場合は同じ軸で全てを動かすため、組み立ての難易度は上がりますが、誰が調整しても品質のバラつきが少なく安定して動作することを目指して開発されたのが3/4プレートです。

20年の中で改良を続け今では調速機を取り付けたテンプ受け以外の歯車を固定する上部プレートはムーブメント全体の3/4を覆うものとなっています。この構造はドイツ時計(グラスヒュッテ様式)の基本にあたる部分で、同じグラスヒュッテのヴェンペやノモスといったブランドも採用している構造です。

グラスヒュッテストライプ

ムーブメントに施される波状の装飾で、細かな凹凸を加えることで光が当たる角度によって表情を変える美しさが特徴です。

生産地によって名前が変わるものでスイスではコート・ド・ジュネーブ、ドイツではグラスヒュッテストライプと呼ばれており、いずれも同じ処理のことです。

ゴールドシャトン

シャトンとは歯車の軸受(主にルビー)を留める金属製のリングのことで、人口ルビーの加工精度が悪かった時代に軸を抑える役割として使われていました。真鍮や18金ゴールドが使われることが多いのですが、現在では加工精度が向上したためシャトンが必要なのは一部の歯車に対してのみとなっています。

しかし古き良き時代からの時計や高級機にはゴールド製のシャトンが使われることが多く、固定のブルースチールのビスも合わせて、特別感のあるデザインに仕上げてくれる重要なパーツです。

ジャーマンシルバー

ジャーマンシルバーとは洋銀や洋白と呼ばれる材質で、時間の経過とともにゆっくり色が変わっていく性質を持っています。ドイツ時計でよく使用される材質で、ムーブメントの地板やテンプ受けによく使われるため、グラスヒュッテストライプと合わせた美しさが愉しめます。経年とともに淡い黄金色が出てくるのが特徴で、永く使うパートナーウォッチとしても楽しみになるポイントです。

実は銀は含まれておらず、銅・ニッケル・亜鉛の合金ですが、銀のような輝きをもつことからジャーマンシルバーと呼ばれています。

2-3 ドイツクロノメーターやパイロットウォッチといった規格を制定

ドイツ時計の特徴の一つに計測の厳密さが挙げられます。グラスヒュッテ規格、ドイツ・クロノメーター規格、そしてパイロットウオッチの新規格テスタフの三つです。

グラスヒュッテ規格とはメイドインジャーマニーを更に具体的に定めた規格で、明文化されている基準は以下の通りです。「製造と手間を含めて、グラスヒュッテでの作業がムーヴメント原価の50%以上であること」。これはおおむねメイドインスイスの基準と同じですが、もう少し厳密です。例えば購入したムーブメントなら3/4プレートに仕上げるなどをしないと原価の50%以上にはなりません。こうした規格でメイドイングラスヒュッテを明確に表しています。

スイスとドイツではクロノメーターの計測の仕方が大きく異なります。スイスクロノメーターではムーブメント単体で精度を計測しますが、ドイツクロノメーターではケースに入れた状態で計測を行います。ケースに入れるとわずかに精度が変わってしまうので、ドイツは更にユーザーの使用勝手に忠実です。もし不合格な場合はケースからムーブメントを取り出して再度調整し、またずれるケース内部へ。こうした手間をかけるかどうかがドイツクロノメーターの厳密さです。

テスタフ(TESTAF)はジンが定めた世界初のパイロットウォッチの標準規格です。テスタフは強度だけではなく、パイロットが実際に時計を使うときを想定して必要となる機能についても謳っています。飛行機のコクピットが壊れた状態を想定して、マイナス13℃からプラス55℃という広い幅で精度が計られます。上空でかかるG、手首にかかる圧力を再現するために数千回の圧力テスト。防水性は単純な水ではなく、燃料やクリーニング駅、解凍液への耐性もチェック。パイロットウォッチがもつ磁場が航空電子機器に影響を与えないように磁気帯びへの対策など、多くの要件をクリアして初めてパイロットウォッチの規格を通過できるのです。

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3 【質実剛健】今注目を集めるドイツ時計にまつわる偉人

3-1 フェルディナンド・アドルフ・ランゲ

ドイツ時計の祖であり、グラスヒュッテの街に時計産業が根付いたのはフェルディナンド・アドルフ・ランゲの功績が大きいです。アドルフ・ランゲがドイツ時計をグラスヒュッテ発として拡大していくことは歴史の項の通りです。ここでは時計師としての観点での功績をまとめます。

アドルフ・ランゲは職人による組み立て・メンテナンスが必須のスイス時計とは違う設計を模索していました。スイス時計は各部品ごとに取り付けられるムーブメントの地板が別のねじで留められており、それぞれを仕上げ加工するため美観に優れていました。一つ一つを配置することはそう難しくないのですが、それぞれが独立しているためしっかり噛みあうように組み立てることは熟練の職人技が求められました。1つの部品がずれるだけで全ての部品の再調整が必要なため、維持やメンテナンスの点で難易度が高かったのです。

これでは組み立て技術の普及やメンテナンスにおいて不調の原因特定が難しいとし、アドルフが考え付いたのが3/4プレートです。3/4プレートでは一枚の地板を大きく、全体の3/4を覆うほどのプレートで覆いました。全てのねじが一度に噛みあうように配置することは難しくなりますが、歯車のズレを抑えることができました。全てが同軸上で動くため、原因の追求やメンテナンス性に優れていました。必ずしも熟練の職人を使わずにメンテナンス性に優れる3/4プレートを始め多くの機構を開発し、グラスヒュッテの街の時計産業は成功を収めました。

グラスヒュッテの時計が優れていたのはこれだけではありません。スイスから遠く離れていたため、それぞれの部品の調達に困難していました。そのためグラスヒュッテ内で統一の規格をつくり、それぞれの工房ごとに分担して部品をつくることとしました。いわばグラスヒュッテの街内でのマニュファクチュールを実現したことで、グラスヒュッテ製の時計はスイス時計に匹敵すると高い評価を得ていました。

3-2 ヘルムート・ジン

ジンは元々パイロットであり飛行教官だったヘルムート・ジン氏がブランドを立ち上げ、IWCの取締役兼製造部門マネージャーだったローター・シュミット氏が引き継ぎました。経歴からわかるように専門的な技術に詳しい経営者のため、独自技術の開発などにも積極的です。ローター・シュミット氏はジンを運営していくだけではなく、それまでになかった規格を制定していきます。

世界初のパイロットウォッチ規格TESTAF(テスタフ)を制定したことで知られています。TESTAFは強度だけではなく、パイロットが実際に時計を使うときを想定して必要となる機能についても謳っています。他にも世界で初めてヨーロッパのダイバー器具規格に準拠したモデルを開発しています。150年以上の歴史を持つ船級・認証機関DNVにより数々のテストが課されています。ジンが準拠しているダイバーズウォッチ規格DIN8306は13もの項目でテストされています。

3-3 ギュンター・ブルームライン

今日の高級時計産業を語る上で欠かせないとされているギュンター・ブルームライン氏はランゲ&ゾーネを復活させた立役者の一人として知られています。彼はジャガールクルトやIWCを立て直したことで知られるコストカッターでしたが、同時に欠かせないものを見極める力を持っていました。

ランゲ&ゾーネの復活を手掛けたことは、彼の功績の中でも最も大きな成功と言われています。アドルフ・ランゲがグラスヒュッテに時計産業を培ったのも素晴らしい功績ですが、それをランゲ&ゾーネの復活として現代に繋いだのも同じくらいの功績といえます。

4 【質実剛健】今注目を集めるドイツ時計の代表シリーズ

4-1 A.ランゲ&ゾーネ

元祖ドイツ時計であり、グラスヒュッテで時計産業が栄えたときの始まりのブランドです。グラスヒュッテ様式は実質的にはランゲ様式と言い換えることもでき、スイス時計との違いを多く模索していました。そうして考案されたのが3/4プレートやグラスヒュッテストライプです。戦争などを理由に一時休眠状態にありましたが、1994年に復活。元祖ドイツ時計の根源的で独特な世界観が愉しめます。

おすすめはランゲを代表するランゲ1。オフセンターされた時分針、表示窓が大きくとられているアウトサイズデイト、ドイツ語で描かれたパワーリザーブなど時分針を中心に据えないユニークなデザインながら、絶妙なバランス感が特徴です。ワールドタイムや永久カレンダー、トゥールビヨンを搭載するなど多機能も展開されており、一目で誰もがランゲの時計だと分かる美しさをもっています。

4-2 グラスヒュッテオリジナル

グラスヒュッテオリジナルのルーツはグラスヒュッテにあります。グラスヒュッテの多くのブランドは第二次世界大戦末期に時計工場がロシア軍により爆撃され、製作機械や部品など多くのものを失ってしまいました。終戦後1951年には東ドイツ体制下でグラスヒュッテに残った時計会社を全て統合し、グラスヒュッテ国営時計会社(通称GUB)として国により運営されました。

1990年になり、ベルリンの壁が崩壊し東西ドイツが統合された際に民営化しました。正式名称はグラスヒュッテ時計製造会社(通称GmbH)といいます。残ったGmbHは後にグラスヒュッテオリジナルとしてブランドを立ち上げました。これがグラスヒュッテオリジナルです。その後2002年にグラスヒュッテオリジナルの敷地内にドイツ時計学校を再建したり、2008年にグラスヒュッテ市の協賛を得てドイツ時計ミュージアムを開設するなど、地域への貢献を続けています。

グラスヒュッテオリジナルのおすすめはセネタです。かつて海上で正確に時刻を知ることは命を守ることだった時代にドイツでは多くのマリンクロノメーターを製造しており、セネタはそれらのデザインを多く取り入れています。繊細なシルバーグレインの文字盤と細身のスペード針を基本のデザインとしつつ、クロノグラフやレギュレーターなどの実用的機能を備えたバリエーションはもちろん、トゥールビヨンやスケルトンなどの機構を楽しむモデルも展開されています。

4-3 ミューレ・グラスヒュッテ

ミューレ・グラスヒュッテもグラスヒュッテに時計産業が栄えたときのブランドの一つです。1869年に測定機器と精密機器の専門製造業者として出発したハンス・ミューレが設立した、MUHLE GLASHUTTE(ミューレ グラスヒュッテ)社が始まりで、戦争による分解と合併が終わった後、1994年に新生ミューレとして再スタートしました。

ミューレ・グラスヒュッテの基本コンセプトは『時計はあくまでも測定機器である』です。全てのムーブメントにミューレファインチューニングという高精度の調整だけでなく、独自の仕上げが施されています。機能を優先させ、いかにもドイツらしい無駄の無いデザインと堅牢な本体が特徴です。

おすすめはM29 クラシック アインツァイガーです。1800年代の精密計測機器をモチーフにしたワンハンドウオッチです。1針の極めてシンプルなデザインですが2分刻みの目盛りを配すことで、通常の3針時計と遜色のない実用性を獲得しています。

4-4 ジン

「使うためだけの時計」をコンセプトに掲げるジンの時計はあくまで時刻を見る道具であり、過酷な環境でも安心して機能を果たす質実剛健さが特徴です。ドイツの警察の特殊部隊やテロ対策部隊に採用される高い信頼性を得ており、実用性に特化しています。

80,000A/mもの防磁性能、Arドライテクノロジーによる除湿機構、極限の暑さ・寒さの中でも精度に影響しない特殊オイルなどいずれもジンが独自に開発した技術で、時刻を見る道具としての時計を過酷な環境でも問題なく使えるように開発されています。

おすすめはダイバーズウォッチの一つであるEZMです。ドイツ警察特殊部隊用に開発されており、ジンがコンセプトとして掲げる「使うためだけの時計」を体現したモデルです。80,000A/mという高い防磁性能、Arドライテクノロジーによる除湿機能、ジン独自で開発した特殊オイルなど、ジンの技術力が発揮されています。

4-5 チュチマ

グラスヒュッテ様式が息づく歴史あるドイツマニュファクチュールブランドの一つがチュチマです。戦争によって国外で活動せざるを得なかった期間が長く、2008年にようやくグラスヒュッテへの帰還を果たしました。

ドイツで初めてクロノグラフウォッチを開発したブランドで、ドイツ国防軍空軍の標準装備品として採用されていたこともありパイロットウォッチに一日の長があります。現在でもチュチマのアイコン的存在として愛されています。

おすすめはやはりパイロットウォッチのフリーガーです。歴史ある伝統的なデザインと通常のパイロットウォッチからは考えにくいカラーリングのパイロットウォッチなど、長い歴史の裏付けがあるからこそ遊べる余裕のようなものを感じさせます。

4-6 ノモス

長い歴史をもつブランドが多い時計業界において、ノモスは1992年創業の新進気鋭のブランドです。シンプルな文字盤デザイン、肉薄なベゼル、絞り込まれた最小限の機能など洗練された無駄のないデザインをモットーとするバウハウスの思想が息づいています。

ラムダ、ラックスといった特別モデル用に自社製ムーブメントをつくる他、OEMとしてヴェンペへムーブメントを販売するなど、ムーブメント製作の技術を備えていました。2015年頃からは自社製ムーブメント(DUW)を基本モデルに搭載したネオマティック、薄型自動巻きムーブメントを搭載したミニマティックを発表しています。ハイエンドモデルを発表するのではなく全体の品質を底上げする方法を取るのが、実直なドイツブランドらしいです。

おすすめは自社製ムーブメントを搭載したネオマティックとミニマティックです。自社製とはいえシンプルなデザインや最小限の機能に絞り込み、ノモスらしさをしっかり残したマニュファクチュールの新しい方向性です。

4-7 ユンハンス

西ドイツ、ヴァルツヴァルトの中心にあるシュランベルクで壁掛け時計メーカーとして創業したのがユンハンスの始まりです。当初は鳩時計の部品製造など、表舞台に出るメーカーではありませんでしたが、創業から5年後の1866年に初の自社製時計を開発しました。

創業者の子孫へ世代交代され、大量生産によりスイスに次ぐ世界2位の規模となるアメリカ式のマーケティングや手法をユンハンスに取り入れました。その一つが星型のロゴで、アメリカのマーケティング理論に基づいたロゴデザインを1890年に発表。現在も使われている星型ロゴのルーツとなります。1903年には一躍ドイツ時計界のトップに上り詰め、従業員は3000人、年間300万個の時計を生産する世界最大の時計メーカーとなりました。

おすすめはマックスビルです。バウハウスの最後の巨匠と呼ばれるマックスビルが手掛けたシンプルながらしっかりと機能を果たすデザインが特徴です。機能での展開もデイト表示・クロノグラフに絞り込まれており、流行り廃りなく使えるコレクションです。

4-8 モリッツグロスマン

19世紀に活躍した時計師モリッツ・グロスマンの作品からヒントを得て開発されたグラスヒュッテのブランドです。創業は2008年で、旧GUB、A.ランゲ&ゾーネでマイスター時計師としてキャリアを重ねたイェンス・シュナイダーが主任設計者を務めています。究極の手仕事にこだわっており、生産本数は極めて少数。仕上げの美しさは群を抜いています。

おすすめはアトゥム エナメル ジャパンリミテッド。日本限定で7本のみ生産されたモデルで、エナメル文字盤の名門ドンツェ・カドランに依頼したクリーム色を帯びたエナメル文字盤とモリッツ・グロスマンを象徴する手仕上げのブラウンバイオレットカラーの針の組み合わせが美しい一本です。

4-9 ヴェンペ

ヴェンペは1878年に創業した高級時計宝飾店です。1905年からは船舶用のマリンクロノメーターの製造を開始し、2006年からはオリジナルウォッチの製造も手掛けています。ヴェンペの時計は宝飾店として長年積み上げたユーザーのニーズを拾うことで、リーズナブルな価格で人気の高いデザインや機構が楽しめるのが特徴です。

ヴェンペは今でもマリンクロノメーターの製造を継続していますが、精度に高いこだわりを持っています。2005年にはグラスヒュッテ天文台を買い取りクロノメーター認定局を再建、ドイツクロノメーター検定精度を復活させました。ヴェンペの時計は全てドイツクロノメーター検定を取得しています。

おすすめはツァイトマイスターアイアンウォーカーです。ETAムーブメントをベースにしていますが、一度分解し再度モジュール等を追加しながら組み立て直すことによりメイドイングラスヒュッテ、精度の追求等を実現しています。同じコンセプトで展開されるラグジュアリースポーツモデル等と比べてもリーズナブルで高い品質が楽しめます。

4-10 クドケ

クドケは2007年に独立時計師ステファン・クドケ氏が創業したブランドです。グラスヒュッテの時計学校を州ナンバーワンの実力で卒業し、グラスヒュッテオリジナルで複雑時計の開発・設計に携わりました。スウォッチグループの修理センターでブレゲ、ブランパン、オメガの修理業務で技術を磨き、独立しています。

クドケの時計の特徴はなんといっても彫金技術です。時計師でもあり彫金師でもあるクドケによるエングレービングは一本一本手作業で施されています。2018年には自社製ムーブメントを開発し、搭載したKUDOKE1を発表。技術力、独創性が認められ、独立時計師協会(AHCI、通称アカデミー)の準会員に選出されています。KUDOKE1の派生モデルKUDOKE2はGPHG(ジュネーブ時計グランプリ)にて“小さな針賞”も受賞しました。

おすすめはスケルトンウォッチのHS1 Ringです。高い彫金技術と向こう側が透けて見えるほどの肉抜き処理など、他のブランドでは見ることのない斬新なデザインはまさに唯一無二と言えるでしょう。しかし奇抜ではないため、末永く愛用できる安心感のあるスケルトンウォッチです。

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5 【質実剛健】今注目を集めるドイツ時計のおすすめモデル5選

5-1 A.ランゲ&ゾーネ グランド ランゲ1 ムーンフェイズ Ref.139.032/LS1394AA

Ref.LS1394AAはランゲ&ゾーネを代表するランゲ1の一回り大きなグランドランゲの一本。アシンメトリーでオフセンターされた時分針、2時位置のアウトサイズデイト、3時位置のパワーリザーブなど、ランゲ1のデザインは健在です。

ムーンフェイズも正確に調整、設計されています。正確な朔望月である29.531日ないし29日と12時間44分3秒という値を、99.998パーセントの精度で実現しています。シースルーバックの裏面からはグラスヒュッテ様式で製造された3/4プレートやグラスヒュッテストライプが楽しめます。

5-2 グラスヒュッテオリジナル パノマティック インバース Ref.1-91-02-02-02-61

Ref.1-91-02-02-02-61はアシンメトリーな文字盤が特徴のパノマティックの一本。

ムーブメントを逆転させたようなグラスヒュッテストライプが施され、3/4プレートで設計された大きな地板を思わせる文字盤です。文字盤は所々にブルースチールのネジで留められており、同じようにブルースチールの針と合わせて統一された美しさをもちます。

文字盤側にバタフライブリッジと呼ばれるダブルスワンネック緩急針が配置されており、てんぷの動き、精緻なエングレービング、その下にはチラネジが観察できます。2時位置のパノラマデイトは同心円状に配置されたディスクで表示されており、日付の読み取りが明瞭です。デザインは特殊ですが、ドイツ時計らしい視認性を重視したデザインです。

5-3 ジン Ref.603.EZM3

EZMはドイツ警察特殊部隊用に開発されたダイバーズウォッチで、ジンがコンセプトとして掲げる「使うためだけの時計」を体現したモデルです。80,000A/mという高い防磁性能、Arドライテクノロジーによる除湿機能、ジン独自で開発した特殊オイルなど、ジンの技術力が発揮されています。

フォルクスワーゲンのCMで着用されて話題になったモデルで、ジンの知名度を押し上げました。ヒューマンエラーを防ぐ明瞭なデザインや機能性は時計を道具とするジンらしさが現れたモデルです。

5-4 ノモス メトロ ネオマティック Ref.MT130014W2

メトロはドイツベルリンで活躍するマーク・ブラウンをデザイナーに迎え、地下鉄の路線図にインスピレーションをえてデザインされたシリーズです。ニューヨークのエンパイアステートビルのような針の形状やポップなカラーリングが特徴です。

既存のノモスのラインとは異なり、ワイヤーラグやローレット加工されたリューズなど、クラシックなような工業的なような様々なデザイン要素が複雑に組み合わされています。

自社製自動巻きムーブメントCal.DUW3001が搭載されたネオマティックモデルで、巻き上げ効率の改善やグラスヒュッテ様式、切手9枚ほどの薄さなどマニュファクチュールならではの技術が発揮されています。

5-5 クドケ KudOktopus

KudOktopusは時計師「Kudoke」と蛸を表す「Oktopus」を組み合わせた造語です。デザインのスケッチから部品の製作、メッキ処理、組み立てなど多くのことを手がけるKudokeならではのデザインです。

氏の得意なエングレービングで蛸を表現したモデルで、8本の蛸の足がムーブメントを包み込むようなユニークなデザインが特徴です。裏面から見るとしっかりと蛸の後ろ姿が描かれています。足の吸盤など、立体的で繊細な表現は唯一無二です。

6 【質実剛健】今注目を集めるドイツ時計

今注目を集めるドイツ時計の歴史、魅力、偉人、代表ブランド、おすすめモデルについてまとめました。ランゲ&ゾーネを筆頭にグラスヒュッテ、あるいは西ドイツの時計のスイス時計とは違った魅力をもつドイツ時計の魅力が少しでも伝われば幸いです。もし街中でドイツ時計を見かけたらぜひ一度手に取ってみてください。

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