2026年4月04日
【有事の金】なぜ金が非常事態に買われるのか。理由や意味を徹底解説
金・貴金属について

金は古くから世界中で価値が認められてきた現物資産です。
物価の上昇や社会情勢の不安定な場面では、金が安全資産として注目されることも多く、最近では「有事の金」という言葉をニュースやSNSで見かける機会も多くなったのではないでしょうか。
この記事では、金がなぜ人々から「有事の金」と呼ばれるのか、非常事態に金が買われる理由を含め、投資初心者の人にも分かりやすく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.有事の金とは情勢不安の時に安全資産となるもの
有事の金とは、政治的リスクや金融危機など、有事(非常事態)の際に価値の下がりにくい金が安全資産として選ばれることを指します。
株式や債券などと異なり、金は企業の業績や国の信用に価値が依存することはありません。
仮に戦争や紛争による国の破綻、企業が倒産した場合でも”金そのものの価値”が失われることは無いため、資金の避難先として金は長年世界から注目され続けています。
実際に1979年のイラン革命や2008年のリーマンショックなど、世界が大きく混乱した有事の局面では、金が安全資産としての役割を担い、歴史的な価格高騰を記録してきました。
では、なぜ資金の避難先に金が選ばれ、人々から「有事の金」と呼ばれるのか、その具体的な理由を次の章で見ていきましょう。
2.なぜ人々は有事の際に金を買うのか。有事の金と呼ばれる5つの理由
「有事の金」と呼ばれる理由は、社会情勢が不安定になるたびに大きく買われ、何十年にも渡って価格が上昇してきた金の歴史にあります。
近年では銀やプラチナなどの現物資産も世界から注目を集めていますが、有事の際、現在でも真っ先に選ばれるのは金です。
ここでは、なぜ金が安全資産として特別な地位を保ち続け、現在も変わらず「有事の金」と呼ばれているのか。その理由を5つ紹介していきたいと思います。
2-1.理由①金は世界共通で取引されている現物資産
金は各国で発行されている紙幣や通貨とは異なり、世界共通で取引されている現物資産です。
国や地域を問わず一定の価値があり、どの通貨とも交換できる換金性の良さが、「有事の金」と呼ばれる理由にもなっています。
世界中に金の取引市場は存在し、LBMA(ロンドン貴金属市場協会)、COMEX(ニューヨーク商品取引所)、大阪取引所、香港ゴールド取引所、SWX(スイス取引所)など、土日祝を除き売買が行われています。
金は営業時間内であれば貴金属店や買取店での売買も可能です。
自分の好きなタイミングで取引ができる自由度の高さが、有事の際に金が選ばれる理由と言えるでしょう。
2-2.理由②金は価値が無くならない
金は埋蔵量が限られており、希少性が高く、今後も恒久的に価値が無くならないと言われています。
古代から世界中で通貨やアクセサリーに用いられており、事実、金は歴史上価値がゼロになったことはありません。
現在も社会情勢の不安や金融危機の場面で、金の価値が無くなった事例は一度も無く、むしろ有事の度に世界中で大きく買われ、長年に渡り金の価格は右肩上がりの成長をしてきました。
いつの時代でも普遍の価値を維持してきたことが「有事の金」と呼ばれる大きな理由です。
2-3.理由③金はインフレの際に価格が上昇する傾向がある
金はインフレが進むと価格が上がりやすい性質があります。
物価が上昇し、通貨の価値が相対的に下がる場面では、世界共通の価値を持つ金が評価されやすくなると言えるでしょう。
金を保有していれば資産の実質的な価値を守りやすく、どんな状況でも価値を保存することができる特徴が「有事の金」と呼ばれる理由でもあります。
2-4.理由④金融危機の際に価格が左右されにくい
金の現物は金融危機の状況で価格が左右されにくい傾向にあります。
発行体が無く第三者の管理を必要としないため、金の現物は信用のリスクがゼロです。
預金凍結や企業の倒産で資産を引き出せなくなる心配もなく、どんな市場環境でも自らの資産を守れる特徴があります。
株式や債券、投資信託などの金融資産は国や企業の信用が価値の裏付けとなるため、仮に金融システムのエラーや銀行の破綻が発生した場合、価格下落の影響は避けて通れません。
金の信用に依存しない価値が「有事の金」と呼ばれる理由の一つです。
2-5.理由⑤戦争や紛争が起きた際に金は「守りの資産」となる
金は戦争や紛争が発生した際に「守りの資産」となります。
2022年2月に起きたロシアのウクライナ侵略や、2026年2月に起きたアメリカとイスラエルのイラン攻撃などが代表的な例と言えます。
株や債券などの価格が大幅に下落するなか、金は従来の価格を維持するだけでなく、歴史的な価格高騰を記録し「有事の金」として大きな価値を示しました。
現在、政治的リスクは他人事では無くなりつつあります。
自分の資産を守る第一歩として、金を買うことが、有事の際に最も有効な手段となる可能性があります。
3.【有事の前に仕込みたい】金を買う5つのベストタイミング
金は有事に強い資産として世界に広く認知されていますが、実際に非常事態が起きてから金を買うことが適切とは限りません。
金の価格は世界情勢や金利、為替など様々な要因で上下するため、有事の際に買った場合でも「高値掴みをしてしまった」「買ったはいいけど含み損の状態」というケースも往々にしてあり得ます。
ここでは、有事の前に金を買うベストなタイミングを5つ紹介していきます。事前の準備を常に心がけ、自分の資産を安全に管理して行きましょう。
3-1.タイミング①世界的に不安なニュースが増え始めた時
世界的に不安なニュースが増え始めた時は、有事の前に金を買う重要なタイミングと言えます。
戦争や政治的なリスク、金融不安や感染症拡大(パンデミック)など、世界が不安定になる兆しが見えると、投資家たちは信用リスクのない金へ資金を移し始める傾向があります。
世の中の不安が募る”初動のタイミング”は、金価格が上昇する前触れとなることが多く、比較的落ち着いた価格で金を買える時期でもあります。
短期的な値動きだけで判断するのは危険ですが、社会情勢の変化は金の価格に直結しやすいと言えます。日頃からニュースをチェックし、有事の前の事前準備を心がけることが、資産管理の第一歩です。
3-2.タイミング②各国で政策金利が発表される時
各国の政策金利の発表は金の価格に大きく影響します。
金は利息を生まないため、金利が上がれば利息の得られる金融商品に注目が集まり、逆に金利が下がれば金が買われやすくなる傾向にあります。
日本、アメリカ、ユーロ圏、イギリスなど、主要各国で定期的に行われる政策金利の発表をこまめにチェックしておくことが理想的と言えるでしょう。
投資初心者の人であれば、まずはアメリカの政策金利の動向を追うだけでも十分です。
通常ドル建てで取引が行われる金の価格は、FOMC(連邦公開市場委員会)の動向に敏感に反応する傾向があります。
世界の金融市場にも強い影響を与えるため、FOMCをはじめとした各国の政策金利の発表を意識しておくことは、金をベストタイミングで買うため重要な要素となります。
3-3.タイミング③新興国の中央銀行が金を大量買いする時
近年では中国、ポーランド、インド、トルコ、カザフスタンなど、新興国を中心に金の大量買いが活発化しています。
社会情勢の不安で国際的な緊張が続くと、各国は資産の安全確保を優先し、通貨から金へ資金を避難させる傾向があります。
国家規模の金購入は長期保有を前提としていることが多いです。一度買い始めると継続的に大量買いが発生しやすく、金の価格を押し上げる強力な要因になり得ます。
各国の金に関する動向は、日頃のニュースやワールド・ゴールド・カウンシルなどの国際機関のレポートでチェックすることができるため、自分にとっての最適な価格で金を買いたい人は、意識してみてください。
3-4.タイミング④円高ドル安の時(現金の価値が下がる時)
金は主にドル建てで取引が行われるため、日本で金を購入する場合、円高ドル安の状況は非常に有利なタイミングと言えるでしょう。
一般的に円高になると日本円で購入した金の価格は下落し、逆に円安になると金の価格は上昇する傾向にあります。
近年では社会情勢の不安に伴い、為替の変動が激しく、日本国内の金価格が短期間に何度も過去最高値を更新するケースも増えてきています。
投資経験のある人にとっても難しい話ではありますが、為替の動きが落ち着いてきたタイミングや円高になった瞬間を狙うことで、金を買うコストを抑えることができます。
金の価格だけを見るのではなく、為替の仕組みを理解しておくことは、金を買う上で重要なポイントになってきます。
3-5.タイミング⑤自分が買いたいと思った時
金を買う最もベストなタイミングは「自分が金を買いたい」と思った瞬間です。
筆者の私も金を購入した経験がありますが、「今買って高値掴みにならないだろうか」「買った後で暴落したら」などの葛藤があり、実際はなかなか購入に踏み出すことが出来ませんでした。
購入した後は価格変動に一喜一憂することはあっても”価値がゼロにならない資産”を持っている安心感が強く「これから金の価格が高騰するかもしれない」という期待値が精神的な支えにもなりました。
金の購入を検討している人にとって、最近の金相場は買い時の判断が非常に難しいと言えます。
しかし、現在の価格が最安値になる可能性も十分にあるため、”今だ”と思えた瞬間に金を買うことが一番納得のいくタイミングかもしれません。
4.【相場変動!?】「有事の金」の売り買いで相場変動する5つの要素
有事に強い金であっても、金融市場の動向によって価格が大きく上下することがあります。
相場が変動する要因を理解しておくことで、金の買い時や売り時がより明確になると言えるでしょう。
ここでは、金の相場変動に大きく関わる5つの要素を分かりやすく解説していきたいと思います。
4-1.【高騰】有事予想の金相場になっている
社会情勢が不安定になり始めると、投資家たちは「これから有事が起こるかもしれない」という予想を立て、前もって金を大量買いする傾向があります。
実際に非常事態が発生していなくても、予想の段階で金の大量買いが積み重なり、本格的な有事の前に価格がピークを迎えているケースも少なくありません。
そのため有事の真っ只中で金を購入しても「全く価格が上がらない」むしろ「価格が下がってしまった」など、思わぬ損失が発生してしまう可能性も十分にあり得ます。
ニュースやテレビで有事の予兆を敏感に察知し、前もって金を購入しておくことが資産管理における重要なポイントとなります。
4-2.【下落】有事予想の相場で投資家たちの大量売り
有事の予想段階で金は大きく買われる傾向にありますが、実際に有事が発生した状況では、投資家たちの利益確定による大量売りで金の価格が下落するケースも少なくありません。
また、有事が人々の想定よりも深刻ではなかった場合、長期化した場合は、投資家たちの資金が金から株や債券などのリスク資産に移る傾向があります。
特に短期で利益を狙う投資家たちの動きが重なり、金相場の急落に繫がる可能性もあるため注意が必要です。
4-3.【下落】金融市場の急激な冷え込みに伴う換金売り
金融市場が急激に冷え込むと、投資家たちは手元の資金を確保するため、金をはじめとした投資資産を換金売りする傾向があります。
実際に2008年のリーマンショックなど、世界的な金融危機が発生した時は、株や債券のみならず有事の金でさえ売られる場面が見られました。
金の価値が下がったのではなく、株式や先物取引における資金の継ぎ足し、純粋に現金を確保するためなど、投資家たちが仕方なく金を売却したことが主な要因です。
換金売りは一時的であることが多いですが、市場全体がパニック状態に陥ると、たとえ有事の金であっても、連鎖的な資産売却の煽りを受ける可能性があることは覚えておきましょう。
4-4.【下落】利上げや高金利の維持が金価格に大きな影響を与える
金は保有していても利息が生まれない資産です。
各国が利上げを行い、高金利の状態が続くと利息を得られる資産に資金が流れ、金の価格が下落しやすくなります。
実際に2026年の3月半ばには、世界各国が物価高を抑制する目的で金利の水準を維持、あるいは利上げの方針を固めました。その結果、金相場が一日で11%も大暴落するなど、46年ぶりの歴史的な価格変動の引き金にもなりました。
金の価格はインフレや有事だけではなく、金利にも大きく左右されます。これから金の購入を検討する人は、各国の政策金利の発表や金融政策の動向は必ずチェックしておきましょう。
4-5.【下落】金以外の現物資産や投資先に資金が流れる
金融市場の盛り上がりや社会情勢によっては、金以外の投資資産が注目され、金の価格が下落する可能性もあります。
最近では、銀やプラチナなどの現物資産も歴史的な高騰を記録し、金の価格に連動する暗号資産が誕生するなど、利益を狙える投資商品は一昔前と比べて多くなりました。
金は”守りの資産”のイメージが強く、最近では有事の金として役割を担う場面も非常に多いですが、投資先の豊富な現代において、高いリターンを求める投資家たちから需要が弱まりやすい傾向にあることも理解しておきましょう。
5.過去に「有事の金」として注目された歴史的な事例5選
金は様々な非常事態のなかで”資産を守る手段”として選ばれ続けています。
歴史を振り返ると、政治的混乱、戦争、金融危機、パンデミックなど、世界が不安定になる局面で大きく買われ、金の価格は右肩上がりの上昇をしてきました。
ここでは、金がどのような場面で安全資産としての強さを発揮してきたのか、「有事の金」として世界から注目された歴史的な事例を5つ紹介していきたいと思います。
5-1.事例①1979年:イラン革命
1979年に起きたイラン革命は、金価格が歴史的に高騰した代表的な事例です。
当時のイランは世界有数の原油国であり、国内クーデターをはじめとした革命運動は中東のみならず、世界各国に石油供給のショックという大きな影響を与えました。
インフレの懸念が高まったことで、1978年まで1オンス約185ドル(当時約1300円)だった金は1979年末には約512ドル(当時約2200円)まで上昇。わずか一年で約2.7倍に跳ね上がりました。
イランの政治的な混乱が世界経済に波及し、金が資産の”避難先”として強く買われた象徴的な事例と言えるでしょう。
5-2.事例②1979年末:ソ連のアフガニスタン侵略
1979年末、ソ連がアフガニスタンへ侵略したことでイラン革命に続き、世界は再び非常事態に陥ります。
ソ連の軍事行動は世界に強い不安を与え、投資家たちのリスク回避の姿勢が一気に強まりました。
金の価格は更に上昇し、1980年1月には1オンス約850ドル(当時約4500円)を記録。
当時の史上最高値を更新し、イラン革命前の約185ドルから4.5倍以上の高騰となりました。
僅か数年で立て続けに発生した政治的リスクが、金価格を押し上げた典型的な例であり、「有事の金」という言葉が世界に広く浸透した出来事と言えるでしょう。
5-3.事例③2008年:リーマンショック
2008年、アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻し、世界中の金融市場が大混乱に陥りました。
株式や債券といったリスク資産が大幅に下落した歴史的な事例です。
ショック直後は有事に強い金も市場混乱の煽りを受け、一時的に換金売りで価格が下落しました。しかし、金融危機が深刻化するにつれて、金は再び安全資産として投資家たちから注目を集めます。
2008年の初頭には1オンス約840ドル(当時約2900円)だった金は、リーマンショックの真っ只中である2011年に約1900ドル(当時約4400円)を記録。約2.2倍の高騰を見せました。
金融システムの揺らぐ場面で、発行体を持たない金の価値が際立つ出来事だったと言えます。
5-4.事例④2020年:コロナショック
2020年に発生した、新型コロナウイルスの感染拡大は、経済活動を停止させ、世界中の市場に大きな混乱をもたらしました。
株式市場は急落し企業活動も停滞するなかで、投資家たちは安全資産を求め、金を積極的に購入しました。
コロナ前の金価格は1オンス約1550ドル(当時約5300円)でしたが、2020年8月には約2070ドル(当時約6900円)を記録し、史上最高値を更新。僅か半年で約1.3倍の価格上昇となりました。
パンデミックという過去に例を見ない非常事態は、金融危機や戦争などとは異なる形で世界経済に大きな影響を与え、「有事の金」が改めて人々に認知された事例でもありました。
5-5.事例⑤2022年:ロシアのウクライナ侵略
2022年2月、ロシアがウクライナを侵略したことで、世界は再び大きな非常事態に直面しました。
エネルギー資源の価格高騰、インフレ、通貨不安などの要因が人々の金購入を加速させ、2026年を迎えた今もなお状況は続いています。
ウクライナ侵略前の金価格は1オンス約1800ドル(当時約7600円)でしたが、侵略直後には約2050ドル(当時約8900円)まで上昇。
その後も有事は長期化し、2024年には約2386ドル(当時約11000円)まで価格は上がり、日本価格で初の1万円台に到達しました。
金の価格に与える影響を示す最新の事例であり、歴史上で最も「有事の金」が世界で意識されている出来事と言っても過言ではありません。
6.まとめ
金は社会情勢が不安定になるたびに安全資産として選ばれてきました。
政治的リスクや金融危機、インフレなどどんな場面でも価値がゼロになることはなく、現在も有事の金として世界から注目を集め続けています。
これから金の購入を検討している人は、是非この記事を参考にしながら、自分の資産を守る第一歩を踏み出してみてください。