2025年2月06日
エルメスのエプソンの魅力とは?型崩れや経年劣化しないって本当?

エルメスのエプソンは、2003年に登場した雄仔牛の革素材です。エルメスを代表する素材のひとつとして知られ、バーキンやケリーなどのバッグから財布まで幅広く採用されています。また、型崩れしにくいことや比較的軽量といった特徴があり、高い評価を得ています。
本記事では、エルメスのエプソンの特徴はもちろん、エプソンを使用したバッグや財布を紹介します。また、適切なお手入れ方法、エルメスの他素材との違いについても解説していますので、素材選びの際の参考にしていただければ幸いです。
目次
1.エルメスのエプソンとは?
2003年に登場したエルメスのエプソンは、雄仔牛から作られる上質な革素材として知られています。その表面には繊細な革目の型押しが施されており、傷や汚れに強く、高い耐久性を持ち合わせています。さらに優れた耐水性も特徴で、実用的な面でも高い評価を得ています。
硬めの革質により型崩れしにくいという特性から、カジュアルなデイリーユースからビジネスシーンまで、幅広い場面で重宝されている素材です。
2.エルメスのエプソンの特徴
エルメスのエプソンは、その優れた品質と実用性により、多くの愛用者から高い支持を集めている革素材です。以下では、このエプソンならではの特徴と魅力について詳しく解説していきます。
2-1.特徴①:きめ細かい型押し加工
エルメスのエプソンに施されたきめ細かい型押し加工は、この素材の大きな特徴です。均一で繊細な型押しにより、日常的な使用で付く小さな傷が目立ちにくいという利点があります。
ただし、この均一な表面加工ゆえに、使用を重ねると角スレの傷みが気になるという声も聞かれます。エルメスのリペアサービスでは角スレの補修を受け付けていないため、素材の耐久性を心配される方もいらっしゃるようです。
しかし、過度な心配は不要でしょう。丁寧な取り扱いを心がければ、角スレの心配はほとんどありません。エルメスの素材は最高品質であることで定評があり、適切なお手入れを定期的に行いながら大切に使用すれば、数十年にわたって愛用することができます。
2-2.特徴②:型崩れしにくい
エプソンには、元来の硬めの革質に加えて、特殊な加工処理が施されています。一般的な革のなめし工程ではタンニンが使用されますが、エプソンでは化学薬品を用いたクロムなめしと、型押し加工が採用されているのが特徴です。このような特殊な加工により、エプソンは型崩れしにくいフォルムとなっています。
さらに、水に濡れた際もすぐに拭き取ることで、シミになりにくいという実用的な利点も備えています。そのため、バーキンやケリーなどの定番バッグを長年使用しても、美しい直立したフォルムを保ちたい方に特に好まれている素材なのです。エルメスの代表的な素材として知られる、トリヨンクレマンスやトゴと比較すると、エプソンは最も硬さがあるのが特徴です。
2-3.特徴③:クシュベルの後継素材
2003年に登場したエプソンは、エルメスの革素材の中では比較的新しいものとされています。それまで展開されていたクシュベルの後継素材として開発され、画像のクシュベル素材ははエプソンの登場と同時期に廃盤となりました。そのため現在、中古市場においてクシュベル素材を見つけることは貴重となっています。
2-4.特徴④:明るく発色
エプソンには、ほどよいツヤがあり、明るく発色するという特徴もあります。特にエルメスの人気カラーであるブルー系において、パステルブルーは他の素材と比べてより明るく爽やかな印象を与えるのが特徴です。
この優れた発色の特性を活かし、2011年春夏から2012年春夏シーズンまで限定販売されたキャンディシリーズでは、エプソンのみが素材として選ばれました。このシリーズは、外側と内側で異なるカラーを組み合わせた特別なアイテムとして知られています。
さらにエプソンは、マットな色調との相性も抜群です。エタンやノワールといったカラーでは、上品で洗練された雰囲気を醸し出します。なお、素材によって色の表現が異なるため、お好みのカラーを選ぶ際は、実際の素材での色味を確認されることをおすすめします。
2-5.特徴⑤:経年変化を感じづらい
革製品といえば、使い込むほどに味わいが増す経年変化を魅力に感じる方も多いことでしょう。しかしエプソンは、その硬質な素材特性とクロムなめし加工により、時間の経過による変化が比較的少ない素材として知られています。定期的な汚れの除去と丁寧な取り扱いを心がければ、長期間使用してもほぼ新品同様の状態を保つことができるのです。
また、素材の特性上、型崩れも起こりにくいため、購入時の美しい状態を長く保つことができます。このような特徴から、エプソンは経年変化による風合いの変化を好まず、購入時の状態でエルメスの製品を永く愛用したいという方に特におすすめの素材といえるでしょう。
2-6.特徴⑥:比較的軽量
エプソンは、エルメスの代表的な革素材であるトリヨンクレマンスやトゴと比べて、より軽量な素材として知られています。硬めの革質でありながら適度な伸縮性を備えており、薄手でありながら高い耐久性を実現しているのが魅力です。この軽さと実用性を兼ね備えた特性により、多くのユーザーから高い評価を得ている素材となっています。
3.エプソンとクシュベルの違いは?
エプソンとその前身であるクシュベルには、主に二つの大きな特徴の違いが見られます。まず一つ目は、型押しの深さです。クシュベルの方がエプソンよりも型押しが深く、より際立ったシボを感じることができる素材となっています。
二つ目の違いは、クシュベルに施されているガラス加工にあります。この特殊な加工により、見る角度によって色合いが変化する独特の効果が生まれ、より華やかな印象を与えます。このような加工技術の違いにより、クシュベルはエプソンと比べてより豪華でスタイリッシュな雰囲気を持つ素材として評価されています。
4.エプソンとヴォー・エプソンの違いは?
エプソンとヴォー・エプソンは、同一の素材を指します。
正式名称はヴォー・エプソンであり、「ヴォー」はフランス語で「仔牛」を意味します。「エプソン」という通称が広く使用されており、両者に素材としての違いはありません。
5.エプソンが使われているエルメスの財布・コインケース
エプソンは優れた耐久性と適度な硬さを持つ革素材で、頻繁な開閉が必要な財布に最適な特徴を備えています。エルメスではこの素材の良さを活かし、多くの財布やコインケースにエプソンを採用しています。それでは、代表的なアイテムをご紹介していきましょう。
5-1.コンスタンス
コンスタンスのシリーズには、ロング、コンパクト、スリムの3つのサイズ展開があります。また、近年では、ショルダーバッグのように持ち歩けるストラップが付属した「コンスタンスロングトゥーゴー」も登場し、注目を集めています。
デザインの特徴としては、エルメスを象徴する「H」のバックルが施され、すべてのモデルがフラップ式を採用しています。このフラップ式は開閉がしやすいうえ、耐久性に優れたエプソン素材との相性が抜群であることから、多くの製品でエプソン素材が使用されているのです。
なお、コンスタンスは財布だけでなくバッグのラインナップも展開されており、両方をセットで愛用する人も少なくありません。そのため、入手が困難なことでも知られる人気の高い財布となっています。
5-2.ケリーウォレット
このシリーズは、名作として知られるケリーバッグをモチーフにしており、開閉金具からベルト、小銭入れのファスナーにいたるまで、ケリーバッグの特徴を忠実に継承したデザインとなっているのが魅力です。特に、定番カラーのゴールドやノワールは安定した人気を誇り、女性からはピンク系や赤系のカラーバリエーションへの需要も高まっています。
また、明るい発色が特徴のエプソン素材を採用することで、ケリーウォレットの魅力がより一層引き立てられ、ケリーバッグのファンを中心に高い支持を集めているのが特徴です。
5-3.ベアン
エルメスの主力製品のひとつとして知られるベアンは、マチが広いベアンスフレや、スリムなベアンコンパクト、さらにはカードケースなど、豊富なバリエーションで展開されています。デザイン面では、エルメスを象徴する「H」のロゴに、ベルトを抜き差しする開閉方式が採用されているのが特徴です。この開閉方式に適しているのが耐久性の高いエプソン素材であり、毎日何度も繰り返される開閉動作にも優れた耐久性を発揮します。
さらに、エプソン素材は経年変化が少なく、革が伸びにくいという特性があるため、長期間使用してもカードの出し入れがスムーズにできるという利点があるのです。このような優れた特徴から、ベアンシリーズの多くの製品でエプソン素材が採用されています。
5-4.カルヴィデュオ
手のひらサイズの2つ折りコインケースとして知られるカルヴィデュオは、コンパクトながらカードやお札、小銭まで収納できる実用的な設計となっています。近年のミニマリズムの流れを受けて、エプソン素材を使用したモデルは男女問わず高い支持を集め、入手が困難なほどの人気を誇っているのです。薄めの革であるエプソンは型崩れしにくい特性を持ち、カルヴィデュオの機能美を引き立てる理想的な素材となっています。
さらに、エプソン素材の優れた発色性を活かし、バイカラーやカラフルな色使いまで、豊富なカラーバリエーションが展開されているのが特徴です。
6.エプソンが使われているエルメスのバッグ
エプソン素材は型崩れしにくく、経年変化が少なく、さらに耐水性に優れているという特徴から、エルメスの多くのバッグで採用されています。エプソンを使用している代表的なバッグの特徴と魅力について、これから詳しくご紹介していきましょう。
6-1.ケリーバッグ
1935年に誕生したケリーバッグは、モナコ王妃であったグレース・ケリーが妊娠中のお腹を隠すために使用している写真が世界中で話題となり、その後、エルメスの4代目社長ロベール・デュマが彼女から許可を得て「ケリー」と名付けた由緒あるバッグです。フラップ開閉式で一本のハンドルを備え、外縫いと内縫いの2種類のモデルが展開されており、エルメスならではの気品の高さを感じられる逸品となっています。
特に、エプソン素材を使用した外縫いのケリーバッグは、かっちりとしたフォルムが上品さを一層引き立てているのが特徴です。また、エプソン素材は型崩れしにくく経年変化も少ないため、購入時の美しいフォルムや色合いを長く保つことができるという利点も兼ね備えています。
6-2.バーキン
イギリスの映画女優ジェーン・バーキンのために、エルメスの5代目会長ジャン・ルイ・デュマが1984年に考案したバーキンは、今やエルメスを代表するアイコンバッグとして多くの人々の憧れの的となっています。デイリーユースのバッグとして愛用されることが多いバーキンは、耐水性があり、型崩れしにくいエプソン素材との相性が抜群です。
さらに、バッグ自体に重量があることでも知られるバーキンですが、エプソン素材は比較的軽量であることから、使い勝手を重視する方に特に支持されています。
6-3.エブリン
エルメスの象徴である「H」の文字をパンチング加工で表現したデザインが特徴的なエブリンは、5種類のサイズバリエーションを展開している人気のショルダーバッグです。カジュアルなシーンでの使用頻度が高いエブリンには、傷が目立ちにくく耐水性に優れたエプソン素材が最適な選択となっているのです。さらに、エプソン素材の優れた発色性を活かした豊富なカラーバリエーションも展開されており、入手が困難なほどの人気を集めています。
6-4.ボリード
1923年に3代目社長のエミール・エルメスによって、世界で初めてファスナーを採用したバッグとしてボリードが発表されました。その後2017年頃には、従来の特徴であったマカロンやステッチを省いた新バージョン「ボリード1923」が登場し、新たな魅力を放っています。
エプソン素材を使用したボリードは型崩れしにくく、バッグが自立して形を保つことができるのが特徴です。さらに、深い位置まで配置されたファスナーを開けると、バッグを置いたまま荷物を探せる実用的な設計となっています。ハンドバッグとして使用する際、手への負担が気になりやすいボリードですが、エプソン素材は比較的軽量なため、長時間の持ち歩きでも快適に使用することができるでしょう。
7.エプソンの適切なお手入れ方法とは?
エプソン素材は経年変化が少ないという特徴を持っていますが、定期的に適切なお手入れを行うことで、購入時の美しい状態をより長く保つことができます。日々のケアとして最も重要なのは、バッグについた細かな汚れをこまめに取り除くことです。
具体的には、革用のブラシや専用の布で表面の汚れを丁寧に取り除き、頑固な汚れの場合は水を含ませた布をしっかりと絞ってから慎重に拭き取るようにしましょう。特に、手が頻繁に触れるハンドル部分や、金具まわりを念入りにケアすることで、バッグ全体の美しさを保つことができます。
さらに、保管方法も適切なお手入れの重要なポイントです。革製品は湿気によってカビが発生しやすいため、直射日光を避けながらも風通しの良い場所で保管することが大切です。
8.エプソンとエルメスの他素材の違いは?
エルメスでは、エプソン以外にも多種多様な素材が使用されており、それぞれに特徴的な個性を持っています。ここからは、代表的な3種類の素材について、エプソンとの違いを詳しく解説していきます。
8-1.トリヨンクレマンス
エルメスを代表する素材のひとつとして知られるトリヨンクレマンスは、バーキンやケリーバッグなど、エプソンと同様の製品に使用されています。エプソンとの最大の違いは、トリヨンクレマンスならではの柔らかな質感にあり、使い込むことで革が次第に手に馴染んでいくという点です。エプソンが形状を保ちながら自立する性質を持つのに対し、トリヨンクレマンスは柔軟性のある柔らかな質感が魅力となっているのです。
また、発色に関してもエプソンがツヤのある仕上がりになるのに対し、トリヨンクレマンスはより自然な光沢を放つことが特徴です。これは特に、ノワール(黒)の場合に顕著に表れます。
8-2.トゴ
エルメスを代表する革素材のひとつとして知られるトゴは、雄仔牛から作られる高級な革素材となっています。その革の柔らかさは、エプソンとトリヨンクレマンスの中間に位置しており、柔らかすぎることなく、かといって硬すぎることもない、絶妙な柔軟性を備えています。そのため、バーキンやケリーといった象徴的なバッグだけでなく、財布や小物類にも幅広く使用されているのです。
また、トゴの特徴として、エプソンにはない天然の革本来の血筋が見られ、使い込むことで生まれる経年変化も魅力のひとつとなっています。
8-3.シェーブル
山羊革から作られるシェーブルは、牛革素材と比べて軽量で、その希少性の高さが特徴となっています。山羊から採取できる革の範囲は牛と比べて限られているため、主に小さいサイズのバッグや、財布などの小物製品に使用されることが多いのが特徴です。
エプソンと質感などが比較的似ている点が多いですが、シェーブルの方が革が柔らかく、心地よい柔軟性を持ち合わせています。さらに、淡い色合いの発色の良さも、シェーブルならではの魅力となっています。
9.エプソンはどんなシーンにおすすめ?
エプソンは優れた品質と汎用性を持つ革素材として知られており、カジュアルからフォーマルまで、さまざまなシーンで活用できる特徴を備えています。以下では、エプソンがどのようなシーンで活躍するのか、それぞれの場面に適したバッグとの組み合わせについて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
9-1.普段使いやカジュアルシーン
エプソン素材の特徴である型崩れしにくさを活かし、普段使いやカジュアルシーンでは、バーキンやエブリンがとりわけ重宝されています。バーキンは当初から日常使用を想定して作られた経緯があり、エプソン素材との組み合わせは、その軽量性も相まって理想的な選択となっているのです。
一方、カジュアルな場面で人気の高いエブリンには、エプソン特有の鮮やかな発色を活かし、ファッションのアクセントカラーとして取り入れられるといった魅力もあります。
9-2.フォーマルシーン
フォーマルな場面では、エプソン素材を使用したケリーの外縫いモデルがおすすめです。エプソンならではの品のある質感が、ケリーの端正でフォーマルな雰囲気を一層引き立てます。特に、エタンやノワールといった落ち着いたカラーを選べば、結婚式や各種式典などの厳かな場面でも違和感なく使用することができます。
このようにエプソンは、日常のカジュアルな場面から改まった席まで幅広く対応できる、実に汎用性の高い素材だと言えるでしょう。
10.エプソンは多彩な魅力を備えたエルメスを代表する素材
クシュベルの後継素材として2003年に登場したエプソンは、きめ細かい型押し加工とクロムなめしによる特徴的な質感を持つ革素材です。傷が目立ちにくく優れた耐水性を備えているため、バッグから財布などの小物に至るまで、幅広いアイテムに使用されています。また、型崩れしにくい性質を持ち、経年変化も控えめであることから、適切なお手入れを定期的に行えば、長期間にわたって購入時の状態を保つことができるのです。
このような多彩な特徴を持つエプソンは、エルメスを代表する革素材のひとつとして高い評価を得ています。