時計といえばスイスが最も有名ですが、最近ではドイツ時計も注目を集めています。ドイツ時計の中で最も有名なブランドはランゲ&ゾーネですが、一時国営企業として合併して運営を共にしたブランドがグラスヒュッテ・オリジナルです。正確にはグラスヒュッテ時計製造会社といいます。
この記事ではドイツを代表するブランドの一つ、グラスヒュッテ・オリジナルの歴史、魅力、代表シリーズ、着けている芸能人、おすすめモデルについてまとめます。
1.ランゲと深いかかわりを持つグラスヒュッテオリジナルの歴史。
1-1.1845年アドルフ・ランゲの尽力によりグラスヒュッテにルーツとなる時計工房設立
1845年にランゲ&ゾーネ創業者のアドルフ・ランゲがグラスヒュッテの街に工房をつくったことがグラスヒュッテオリジナルの祖となっています。今ではグラスヒュッテといえばドイツ時計を代表する街として知られていますが、ランゲ&ゾーネ・グラスヒュッテオリジナル・ノモス・チュチマ・ミューレグラスヒュッテなどのブランドは元はこの工房から始まっています。
元々グラスヒュッテの街は銀の採掘場になっていましたが、次第に資源が枯渇してきたことで街は疲弊していきました。こんなときに現れたのが時計師アドルフ・ランゲ。彼はグラスヒュッテに移住後、町おこしとして時計製造の技術を伝えていきました。そうして工房を建てるに至りました。
アドルフ・ランゲは職人による組み立て・メンテナンスが必須のスイス時計とは違う設計を模索していました。スイス時計は各部品ごとに取り付けられるムーブメントの地板が別のねじで留められており、それぞれを仕上げ加工するため美観に優れていました。一つ一つを配置することはそう難しくないのですが、それぞれがしっかり噛みあうように組み立てることは熟練の職人技が求められました。
これでは組み立て技術の普及やメンテナンスにおいて不調の原因特定が難しいとし、アドルフが考え付いたのがグラスヒュッテ様式です。グラスヒュッテ様式では一枚の地板を大きく、全体の3/4を覆うほどのプレートで覆うことで、全てのねじが一度に噛みあうように配置することは難しくなりますが、歯車のズレを抑えることができました。必ずしも熟練の職人を使わずにメンテナンス性に優れる3/4プレートを基礎に、多くの優れた時計の製造に成功し、グラスヒュッテの街の時計産業は成功を収めました。
グラスヒュッテの時計が優れていたのはこれだけではありません。スイスから遠く離れていたため、それぞれの部品の調達に困難していました。そのためグラスヒュッテ内で統一の規格をつくり、それぞれの工房ごとに分担して部品をつくることとしました。いわばグラスヒュッテの街内でのマニュファクチュールを実現したことで、グラスヒュッテ製の時計はスイス時計に匹敵すると高い評価を得ていました。
1-2.1951年東ドイツ体制下グラスヒュッテに残った時計会社を統合
1990年になり、ベルリンの壁が崩壊し東西ドイツが統合された際に民営化しました。正式名称はグラスヒュッテ時計製造会社(通称GmbH)といいます。このときいくつかのブランドは復興、再スタートしています。(ランゲ&ゾーネ、ノモス(諸説あります)など。)
残ったGmbHは1994年にグラスヒュッテオリジナルとしてブランドを立ち上げ、これまでつくりあげてきた技術や実績が評価されわずか6年、2000年にスウォッチグループによって買収されました。こうして同じルーツを辿りながらも別ブランドとして、それぞれのブランドがグラスヒュッテのDNAを残しつつ独自の解釈により、世界中にドイツ時計の素晴らしさを広めています。
その後2002年にグラスヒュッテオリジナルの敷地内にドイツ時計学校を再建したり、2008年にグラスヒュッテ市の協賛を得てドイツ時計ミュージアムを開設するなど、地域への貢献を続けています。
ちなみにグラスヒュッテオリジナルの時計をオーバーホールを行う際には正規の店舗に依頼することをオススメします。海外製の時計を修理する際、並行輸入品などではオーバーホールを断られてしまうのではないかと心配な方も多いと思います。グラスヒュッテはスウォッチグループに属していることもあり、並行差別はせずに修理対応を行っています。
1-3.1990年東西ドイツ統合により民営化し、グラスヒュッテ時計製造会社として再スタート
1990年になり、ベルリンの壁が崩壊し東西ドイツが統合された際に民営化しました。正式名称はグラスヒュッテ時計製造会社(通称GmbH)といいます。このときいくつかのブランドは復興、再スタートしています。(ランゲ&ゾーネ、ノモス(諸説あります)など。)
残ったGmbHは1994年にグラスヒュッテオリジナルとしてブランドを立ち上げ、これまでつくりあげてきた技術や実績が評価されわずか6年、2000年にスウォッチグループによって買収されました。こうして同じルーツを辿りながらも別ブランドとして、それぞれのブランドがグラスヒュッテのDNAを残しつつ独自の解釈により、世界中にドイツ時計の素晴らしさを広めています。
その後2002年にグラスヒュッテオリジナルの敷地内にドイツ時計学校を再建したり、2008年にグラスヒュッテ市の協賛を得てドイツ時計ミュージアムを開設するなど、地域への貢献を続けています。
2.世界から評価されるグラスヒュッテオリジナルの魅力。
2-1.3/4プレートやゴールドシャトンなどグラスヒュッテ時計の歴史そのもの
グラスヒュッテオリジナルはグラスヒュッテ時計の歴史そのもので、街の復興から現在に至るまで常にその中心にありました。そのためグラスヒュッテオリジナルのどの時計にもグラスヒュッテ様式が反映されています。
例えば、ムーブメントの地板のほとんどを覆う3/4プレートはグラスヒュッテの復興の際に組み立てのメンテナンス性を向上させるためにアドルフ・ランゲが考案したものです。ゴールドシャトンはそれぞれの歯車・ねじを中心軸からブレさせないための軸受けとして使われていたルビーやダイヤモンドなどは固いため加工性が悪かったことを踏まえ、加工しやすいゴールド製の受け皿でまとめる役割がありました。
グラスヒュッテオリジナルの正確な創業は1994年のブランド立ち上げとなりますが、実際にはランゲ&ゾーネ他多くのグラスヒュッテ発のブランドと共に歩んできた歴史と技術が受け継がれています。そのためグラスヒュッテオリジナルの時計はグラスヒュッテが歩んできた歴史・時計そのものと言えるのです。
2-2.元国営企業だったこともあり、価格帯やデザインが豊富
グラスヒュッテオリジナルは戦後東ドイツ体制のもと、グラスヒュッテの時計関連企業を全てまとめ、国営企業として運営されました。その結果それぞれのブランドとしての運営はストップしてしまい、1990年に民営化するまでは国主導のもとで運営されました。
しかしそれも悪いことばかりではありませんでした。国営企業だったことで同時期にスイスの時計企業に大打撃を与えたクオーツショックを乗り越えることができました。また、高級時計だけではなく公共の時計や一般市民向けの時計なども製造しており、現在のグラスヒュッテオリジナルにも影響を与えています。リーズナブルなモデルからハイエンドなモデル、ヴィンテージな雰囲気をもつモデルから最新のデザインまで、幅広く展開されています。
2-3.ムーブメントから一貫生産するマニュファクチュール
グラスヒュッテ・オリジナルはアドルフ・ランゲによってグラスヒュッテに持ち込まれた時計製造技術から始まっており、時計ブランドや部品メーカーが周りに多くあるスイス時計とは環境が異なります。グラスヒュッテは組み立てや部品調達を一から始めた経緯があるため、全てをグラスヒュッテ内で調達できなければ、そもそも時計をつくりあげることが出来ませんでした。
戦争の影響により時計会社が統合されたことでそれらの技術が統合されてしまいました。ランゲ&ゾーネやヴェンペのように独立したブランドもありますが、グラスヒュッテ時計製造会社が再スタートするときにはそれらの技術を持った状態でした。既に一貫生産のマニュファクチュールの環境が出来上がっていました。
例えば3/4プレートやスワンネック緩急針などグラスヒュッテ様式はもちろん、国営企業時代には高級時計だけではなく市民が日常で使う時計までつくっていました。
3.グラスヒュッテ・オリジナルの代表シリーズ
3-1.セネタ
セネタの初出は1997年ですが、祖となるGUB時代のモデルを含めるともっと遡ることとなります。グラスヒュッテオリジナルとして再スタートしセネタを発表したことで、ドイツ時計のDNAを後世に残しつつ最新の技術やエレガントさを取り入れたシリーズとして確立しました。
かつて海上で正確に時刻を知ることは命を守ることだった時代にドイツでは多くのマリンクロノメーターを製造しており、セネタはそれらのデザインを多く取り入れています。大型の懐中時計を腕時計化したような機能的・無骨・クラシック、それらの要素を歴史とともに表現することができました。
繊細なシルバーグレインの文字盤と細身のスペード針を基本のデザインとしつつ、クロノグラフやレギュレーターなどの実用的機能を備えたバリエーションはもちろん、トゥールビヨンやスケルトンなどの機構を楽しむモデルも展開されています。
3-2.パノ
パノは2002年に登場したシリーズで、時分針やインダイヤル各種機能の表示がアシンメトリーに配置されたデザインが特徴です。同じドイツのランゲ&ゾーネのランゲ1を想起させますが、パノは機能やデザインが幅広く展開されており、ステンレスケースやパワーリザーブとビッグデイト表示に絞ったモデルなど、よりカジュアルに楽しめるようになっています。
例えば、パノインバースは「インバース=反対の、逆」を意味しているように、ムーブメントを裏返しにして設計されている珍しいモデルです。そのため普段は裏面から見ているムーブメントを文字盤にして楽しむことができます。ほかにもパノリザーブやパノマティックルナなどの派生モデルがあり、デザインの好みやグラスヒュッテ時計の基本から最新のモデルまで幅広く展開されているシリーズです。
3-3.スペシャリスト SeaQ
初代は1969年にグラスヒュッテ・オリジナル初のダイバーズウォッチとして発表されたSpezimatic RP TS 200。50年後の2019年に初代に立ち返るように発表されたSeaQは最新の技術を搭載しながらも発表当時のレトロな雰囲気が漂っています。アラビアインデックス、針、インデックスは初代を思わせるラジウムが灼けたようなオレンジの色合いに仕上げてあります。
その後4時位置に大型の日付表示窓を備えケースサイズをアップ、防水性も200mから300mへ強化したパノラマデイトを追加。SeaQでは200m防水にちなんで20本の波を刻印したスチールバックでしたが、パノラマデイトではシースルーバック仕様にしたことで、より幅広い楽しみ方ができるようになりました。2022年にはフライバッククロノグラフを搭載しつつ300m防水を備えた新モデルを発表。ツーカウンターのクロノグラフで、レトロな世界観をもつSeaQのDNAをしっかり感じる新作です。
3-4.カレ
グラスヒュッテ・オリジナル唯一の角型シリーズです。大まかに2種類のケースデザインで展開されており、どちらかというとトノー型に近くラグ幅が広めなタイプと長方形ベースの八角形ベゼルと上下に縦断する長いラグ、せりだしたケースサイドをもつタイプに分かれます。どちらかというと後者のほうが数多くのモデルが展開されており、シンプルな3針からムーンフェイズ、クロノグラフなど多機能です。
デザインはラウンドと同じくグラスヒュッテ様式のミニマルで無骨な部類です。視認性がとにかく高く複数の機能を搭載しても見やすいため、時計を道具として捉えているドイツらしいデザインです。手巻きムーブメント搭載モデルの一部には専用に開発された長方形ムーブメントを搭載しており、3/4プレートやスワンネック緩急針などグラスヒュッテ様式をラウンド同様に楽しめます。
3-5.シックスティーズ・セブンティーズ
シックスティーズはその名の通り1960年代を、セブンティーズは1970年代の機械式時計が最も成熟していたとされる時代の時計をモチーフにしたシリーズです。シックスティーズはラウンド型で文字盤の端が沈み込んだボンベ型文字盤と細身のペンシル針、丸みを帯びた柔らかいフォントのアラビアインデックスなど、シンプルでエレガントな当時のデザインが忠実に再現されています。
セブンティーズはクッションケースにペンシル針の組み合わせで、ケースとラグが一体化したデザインとなっています。3針、クロノグラフで展開されており、文字盤カラーバリエーションも豊富です。2022年にも新作が発表されており、現在でも人気の高いシリーズとなっています。
3-6.パボニーナ
ラテン語で孔雀という意味のパボニーナは、孔雀のような優雅な美しさをもつレディースウォッチシリーズです。往年のクッションケースのようなオーバルなケースとワイヤーラグの組み合わせがレトロな趣です。文字盤はマザーオブパールやギョーシェなど様々な種類があり、控えめなリーフ針でバランスがとられています。
女性用のためトレンドに合わせて微調整され新モデルが開発されています。専用ブレスレットやラグやインデックスへのダイヤモンドセット、ストラップのカラーリングなど、幅広いデザインで展開されています。レディースウォッチとしてはありそうでなかった世界観で、斬新にはならずに、でも人と少し違う時計が好みの方におすすめのシリーズです。
3-7.レディセレナーデ
レディセレナーデはグラスヒュッテ・オリジナルによるオーソドックスなレディースウォッチシリーズです。ラウンドケースに12、3、9の植字のローマンインデックスのクラシックなテイスト。基本的にはバーインデックスを採用しながらダイヤモンドやサファイアをインデックスに使うことも。ベゼルいっぱいにダイヤモンドセットされた華やかなモデルも展開されています。
3針での展開がほとんどですが、中にはクロノグラフ搭載モデルも。クオーツ、自動巻きの両方が展開されているため、時計に慣れた方もそうでない方にも使いやすくなっています。マザーオブパール文字盤やリューズカボションなど、レディースウォッチの教科書的なデザインは網羅されているため、末永く使えるパートナーです。
4.グラスヒュッテ・オリジナルの時計を着けている有名人5選
4-1.俳優 中村 蒼 セネタ エクセレンス パノラマデイト Ref.1-36-03-05-02-31
俳優 中村 蒼さんが着けているのはセネタ エクセレンス パノラマデイト Ref.1-36-03-05-02-31です。中村さんはパイロットウォッチのようなスポーツ&レトロな世界観が好みで、ベル&ロスやブライトリングの時計を着けていることで知られています。
Ref.1-36-03-05-02-31はミニマルでオーソドックスなセネタの一本。ホワイトラッカー文字盤のつるんとした質感は、現在では希少なデザインの一つです。楔形インデックスと4時位置に日付表示があります。ホワイトラッカー処理が煩雑になるため、ホワイトラッカーと植字インデックス、日付は通常同居することはありません。一見シンプルな普通の時計ですが、実は高い技術力が投影されている一本です。
4-2.アイドル 永瀬 廉(King & Prince) セネタ エクセレンス パノラマデイト Ref.1-36-03-04-02-30
アイドル 永瀬 廉(King & Prince)さんが着けているのはセネタ エクセレンス パノラマデイト Ref.1-36-03-04-02-30です。永瀬さんはロレックスデイトナやカルティエロトンドトドゥカルティエなど、メジャーブランドのクラシックウォッチが好みのようです。
セネタ エクセレンス パノラマデイト Ref.1-36-03-04-02-30はエレガントさに重きをおいたシンプルな3針モデルです。ガルバニックブルーのサンレイ文字盤で、繊細で深みのある色合いが特徴です。ホワイトゴールド製の楔形インデックスと鋭い剣針がシャープな雰囲気を演出しています。4時位置の日付表示窓はジャンピングデイト機構により日付が変わる瞬間にジャンプするように切り替わります。
4-3.声優、俳優 津田 健次郎 セネタ・オブザーバー Ref.100-14-07-02-70
声優、俳優 津田 健次郎さんが着けているのはセネタ・オブザーバー Ref.100-14-07-02-70です。津田さんは自身のSNSでパネライの時計について語るなど、時計好きであることが知られています。高級品に限らず着けているようで、幅広いブランドのモデルを着けています。
Ref.100-14-07-02-70はグラスヒュッテオリジナルの中で正統派ドレスウォッチシリーズとなるセネタの一本です。最も特徴的なのは海上で時刻を知るためのマリンクロノメーターやデッキウォッチをモチーフにしたデザインになっていることです。
ツーカウンターのインダイヤルは3時位置がパワーリザーブで9時位置が秒針となっているのは、それらのデザインが基になっています。大型の44mmケースなのは懐中時計のDNAも残っているためで、一見シンプルな機能をもった時計ですが、語る歴史が多いモデルです。
4-4.タレント 草彅 剛 セネタ シックスティーズ Ref.1-39-52-01-02-04
タレント 草彅 剛さんが着けているのはセネタ シックスティーズ Ref.1-39-52-01-02-04です。草彅さんは時計愛好家として知られており数多くの時計を所有しています。ロレックスエクスプローラーからベル&ロスのヴィンテージラウンドモデルやブレゲクラシックなど、クラシックなデザインが好みのようです。
セネタ シックスティーズ Ref.1-39-52-01-02-04は機械式時計の全盛期である1960年代のデザインとなっています。当時のドーム状のプラスチック風防をサファイアクリスタルで再現したり、バーインデックスを植字にするなど、こだわりと実現させる高い技術を感じさせます。
ケースサイズは39mmと現在としては小振りに仕上げてあります。シースルーバックは当時の時計にはない要素なので、モダンなエッセンスと上手く融合しています。
4-5.俳優、お笑い芸人 ジョエル・マクヘイル セブンティーズ パノラマデイトRef.39-47-13-12-04
俳優、お笑い芸人のジョエル・マクヘイルさんが着けているのはセブンティーズ パノラマデイトRef.39-47-13-12-04です。ジョエルさんは海外のコメディアン兼俳優で、幅広い分野で活躍されています。時計愛好家として知られており、ブライトリングやパネライを着けています。
Ref.39-47-13-12-04はヴィンテージな世界観をもつセブンティーズパノラマデイトの一本です。ラグと一体化したケースにシンプルで控えめな剣針と楔形インデックス、ブルーのグラデーションが特徴です。6時位置にはパノラマデイトが配置されており、同心円状にセットされた2枚のディスクで日付表示を行います。さらに12時の日付の切り替わりタイミングに一瞬で切り替わります。
5.グラスヒュッテ・オリジナルのおすすめモデル5選
5-1.パノマティック カレンダー Ref.1-92-09-02-05-62
パノマティック カレンダー Ref.1-92-09-02-05-62はオフセンターされたダイヤルの配置が特徴的なパノシリーズの一本です。文字盤の左半分を使い時分針とスモールセコンド、2時位置にムーンフェイズ、4時位置にビッグデイト表示とレトログラード式の月表示となっています。アニュアルカレンダーのため、年一度だけの調整で済む機能的なカレンダーです。
マットな美しさのシルバーオパリン文字盤で、通常ある位置にインデックスがありません。正確にはそれぞれの小さなダイヤルには用意されているのですが、文字盤全体を覆うミニッツレール、レイルウェイの類が存在しないため、複数の機能を備えているのに非常にシンプルで端正な雰囲気をもっています。シースルーバックとなっている裏面からグラスヒュッテ様式の3/4プレートやスワンネック緩急針を観るのも楽しみの一つです。
5-2.パノマティック インバース Ref.1-91-02-02-02-61
パノマティック インバース Ref.1-91-02-02-02-61は反対の、逆を意味するインバースの通り、ムーブメントを反転させて設計された文字盤が特徴です。通常のパノと同様、時分針と秒針がオフセンターに同心円状に配置されています。普段裏面で見る3/4プレートの大型ブリッジを文字盤側に使用したことで、文字盤のほとんどを一枚の板が覆っています。グラスヒュッテストライプももちろん施されています。
ムーブメントを反転するもう一つのメリットはてんぷの動きを目の前で見れることです。スケルトン文字盤であってもムーブメントの裏側のため距離がありますが、パノマティックインバースでは反転しているため目の前で大きな動きを観察できます。グラスヒュッテ様式のスワンネック緩急針や美しいエングレービング、ブルースチールのねじやてんわのチラネジなど、普段よりもムーブメントの動きに釘付けになってしまいます。
5-3.スペシャリスト SeaQ Ref.1-39-11-06-80-33
スペシャリスト SeaQ Ref.1-39-11-06-80-33は1969年発表のSpezimatic RP TS 200を元に開発されたスペシャリスト SeaQの一本です。初代に倣ったデザインのためレトロな雰囲気が漂っており、アラビアインデックス、針・バーインデックスは初代を思わせるラジウムのようなオレンジ色の夜光処理が施されています。見通しの悪い水中でも時刻読み取りがしっかりできるように配慮されているのも機能性を重視するドイツ時計らしい要素です。
Ref.1-39-11-06-80-33は2019年に発表されたスペシャリスト SeaQとして最初の一本です。3時位置に日付表示窓をもつ3針で、ケースサイズ39.5mmと取り回しもよく使いやすいミニマルな機能性です。スチールバックで200m防水をあらわす20本の波と海を象徴する三叉槍がエングレービングされています。
5-4.セネタ クロノメーター レギュレーター Ref.1-58-04-04-04-50
セネタ クロノメーター レギュレーター Ref.1-58-04-04-04-50は正統派ドレスウォッチシリーズとして展開されるセネタの一本です。時分針、秒針を別軸でそれぞれ動かすことで時刻を読み取りやすくするレギュレーター仕様となっています。元々教会の時計など公共の場で使われていたデザインで、シルバーオパリン文字盤のクラシックな雰囲気とマッチします。
12時位置のインダイヤルで時針、分針は通常通り、6時位置で秒針、9時位置でパワーリザーブとなっています。レイルウェイとの組み合わせやパワーリザーブの表記の仕方はマリンクロノメーターにも共通しており、ドイツでかつて製造されていた歴史も一緒に楽しむことができます。裏面はシースルーバックになっており手巻きムーブメントなので、巻き上げによる歯車の動きやグラスヒュッテ様式の3/4プレート、スワンネック緩急針、ゴールドシャトンなどレトロなつくりも観ることができます。
5-5.セブンティーズ パノラマデイト クロノグラフ ミントグリーン Ref.1-37-02-15-02-70 (2023年新作)
セブンティーズ パノラマデイト クロノグラフ ミントグリーン Ref.1-37-02-15-02-70は2023年新作カラーとして発表されたセブンティーズの一本です。100本限定カラーとして様々な記念モデルを開発していますが、今回は中国でメジャーなSNS「wechat」ブティックの立ち上げ記念モデルと言われています。
柔らかなミントグリーン文字盤が特徴です。フライバッククロノグラフ、パノラマデイト、月表示、パワーリザーブ(9時位置インダイヤルの小さなバー)の複数の機能を備えています。1970年代のレトロな世界観とミントグリーンの色合いがマッチしており、エレガントさと可愛らしさが同居しています。
6.まとめ
グラスヒュッテオリジナルの歴史、魅力、代表シリーズ、着けている芸能人、人気モデルについてまとめました。グラスヒュッテの街とともに歩んできた歴史そのものがグラスヒュッテオリジナルだとすると、これ以上にグラスヒュッテらしい時計はないのではないでしょうか。
スイス時計とはまた違った魅力をもつドイツ時計はこれからも世界に広まっていくと観られます。もし街中でグラスヒュッテオリジナルの時計を見かけたら、ぜひ一度手にとって見てください。