2024年9月25日
【時計愛好家垂涎の的】ローラン・フェリエとは?歴史や魅力を徹底解説
時計愛好家ならローラン・フェリエの名を聞いたことがあるかもしれません。パテック・フィリップで長年研鑽してきた感性と技術を用いた独立系として活動する高級時計ブランドです。
ローラン・フェリエ自身と彼の息子により開発されるローラン・フェリエの時計はどれも高い技術とセンス、品格を兼ね備えています。この記事ではローラン・フェリエの歴史、魅力、代表シリーズ、おすすめモデルについてまとめました。
目次
1.【時計愛好家垂涎の的】ローラン・フェリエの歴史
1-1.1946年スイスジュネーブに生まれる
ローラン・フェリエ氏は1946年にスイスジュネーブに生まれました。両親と祖父母の両方が時計職人であったため、時計製造を自然と学ぶことのできる環境で育ちました。時計の国スイスの中でも多くの著名なブランドが軒を連ねる地域の時計学校で時計づくりを学びました。
1968年にジュネーブの時計学校を卒業後、パテック・フィリップに入社しています。超名門中の名門ブランドなので狭き門なのは当然です。首席、あるいはそれに準ずる技術がないと卒業後にパテック・フィリップに入社することはできませんが、時計ブランドを興すほどの技術をもった時計師の多くはパテック・フィリップで経験を積んでいることが多いです。
1-2.パテック・フィリップで時計技術の研鑽を積む
ローラン・フェリエはパテック・フィリップ在籍時にムーブメントの設計などに携わり、後期は外装パーツなども担当していました。しかしローラン・フェリエはパテック・フィリップを一時退社し、また復帰しています。
パテック・フィリップにいなかった期間、1968年から3年ほどレーシングドライバーとして活躍しており、ル・マン24時間の耐久レースにも出場しています。1979年のル・マンではポルシェ935のドライバーの一人として、3位表彰台を獲得するほどの実力者でした。この時にチームを組んでいたフランソワ・セルヴァンにパテック・フィリップのノーチラスを贈ったことがきっかけで、二人でブランドを立ち上げることを決めたと言われています。
1-3.2009年自身の名を冠したブランドを立ち上げる
1974年にパテック・フィリップが技術部門を設立したことで、休職中のローラン・フェリエに戻ってくるように声をかけ、彼が28歳のときに復帰しました。その後、設計技師を経て、技術部長へと就任しています。ローラン・フェリエは合計で37年間、63歳までをパテック・フィリップで過ごし、同社のもつ伝統と最高クラスの技術を吸収しました。
レーサー時代に出会ったフランソワ・セルヴァンにノーチラスを贈った際に時計ブランドを興すのがいいと話になったそうで、フランソワ・セルヴァンが経営を、ローラン・フェリエがクリエイションを、息子のクリスチャン・フェリエがムーブメントを手掛けるとして、3人で会社を興しました。パテック・フィリップを退職した翌年の2009年です。
パテック・フィリップで学んだ古き良き伝統的な時計づくりに現代の技術を融合させ、2010年のバーゼルワールドでデビュー。ガレ クラシック トゥールビヨン ダブルスパイラルがジュネーブウォッチグランプリの男性用腕時計部門で最優秀賞を受賞しました。
鮮烈なデビューを果たしたローランフェリエはその後も新作を次々と発表しており、2024年新作はアニュアルカレンダーにムーンフェイズを加えたクラシック・ムーンです。リューズによる早送りと逆戻しが可能なうえ、カレンダーの半瞬間送りを実現しました。
2.【時計愛好家垂涎の的】ローラン・フェリエの魅力
2-1.パテック・フィリップで学んできた古き良き古典的な感性と技術
ローラン・フェリエはパテック・フィリップに37年間在籍し、同社のもつ古典的で王道のスイス時計への感性や高い技術を学びました。設計技師を経て技術部長に上り詰めたローラン・フェリエの時計のクリエイションは、パテック・フィリップ時代のノウハウを強く反映したものとなっています。
ブランドを代表するコレクションとなるクラシックはカラトラバ、スポーツはノーチラスに影響を受けていると感じるユーザーも多いでしょう。ローラン・フェリエは40年前のパテックフィリップが採っていたのと同じ手仕上げを採用するなど、パテック・フィリップへの強いリスペクトと、今の自分たちでこそできる時計づくりを目指していると感じさせます。
2-2.マイクロメゾンならではの手仕上げによる温かみ
創業当初のローラン・フェリエはサプライヤーから供給されるムーブメントを組み立てるエタブリスールでした。長年パテック・フィリップに務めたローラン・フェリエなら一流のサプライヤーも把握しており、誇りをもったエタブリスールだったと言われています。
しかしムーブメントの装飾を社内で行うようになり、2015年に生産規模の拡大のためにスイスのプラレワットに工房を移しています。40年前のパテック・フィリップと同じ手仕上げの方法を採っており、ケースもムーブメントも手で磨いています。
手仕上げならではの美しさのためなら、地板1枚へのペルラージュ加工に2時間かけることを厭わないのがローラン・フェリエのやり方です。マイクロメゾンでしか実現できない手仕上げへのこだわりが楽しめます。
2-3.年間生産本数400本のみの稀少性
ローラン・フェリエは年間生産本数を400本程度としています。セールスマネージャーであるロバート氏が来日し、ユーザーおよびプレス向けにもプレゼンテーションが行われた際には、マイクロメゾンというと数十本をイメージしてしまうため、あえていうならスモールメゾンだと応えています。
ローラン・フェリエでは、ムーブメントごとに分けられたキットごとに組み立てるのは他社と同じですが、ローラン・フェリエはキット内で部品名がそれぞれ示された上で分類分けし、入念な作業手順書があるといいます。図面や手順書を毎回確認しながら作業を行うため、ミスを徹底してなくす手順が組まれています。非常に手間と時間がかかりますが、確実さを重視した方法です。
また、一人の時計師が組み立てからケーシングまでを行っており、ムーブメントを2度組み上げています。1度目の組み立て時にも注油し落とすことで細かなゴミを除去し、再度組み立てることで綺麗な状態で精度高く組み上げることができます。こうした手間をかけているため、ローラン・フェリエの時計は他のブランドにはない美しさをもっているものの、年間生産本数は400本程度となっています。
3.【時計愛好家垂涎の的】ローラン・フェリエの代表シリーズ
3-1.クラシック
クラシックコレクションは創業以来、ローラン・フェリエのアイコン的存在となっています。デビュー年に発表されたガレ クラシック トゥールビヨン ダブルスパイラルがジュネーブウォッチグランプリの男性用腕時計部門で最優秀賞を受賞しています。
パテック・フィリップに在籍していた際に学んできた古き良き時代の技術と感性が反映されており、19世紀の懐中時計を彷彿とさせるデザインは多くの時計愛好家たちを惹き付けています。時分と分針はアセガイ型(投槍)、秒針はバトン型、インデックスはドロップシェイプが多くのモデルに採用されており、一目でクラシックコレクションと分かる世界観をもっています。
3-2.スクエア
スクエアは1930年代に流行したアールデコ様式を象徴するクッションケースが特徴のコレクションです。ミニマルでいながら立体的なフォルムは多くの時計に採用されていますが、ローランフェリエはブランドのコンセプトに沿って、3針のみのシンプルな機能と合わせています。
「スクエア マイクロローター レトロ」ではアールデコのタッチを加えたアラビアインデックスを採用し、モダンなアワーサークルや鋭く長い針を組み合わせることで、より端正な仕上がりとなっています。
現在販売されているモデルではいずれもマイクロローターをもつムーブメントを搭載しています。ローラン・フェリエのアトリエで設計、組み立て、調整を行っており、シリコン製脱進機や独自の機構を用いることで巻き上げ効率の高い自社ムーブメントとなっています。
3-3.グランドスポーツ
グランドスポーツはローラン・フェリエが初めて発表したスポーツウォッチです。実はローラン・フェリエは1970年代にはル・マン24時間耐久レースに7度出場したカーレーサーとして知られています。グランドスポーツはスポーティーでいながらレトロな世界観をもっており、1970年代のモータースポーツを表現しています。
トノー型のベゼルとクッション型のミドルケースが特徴で、曲線で構成されながらもパワフルな雰囲気も感じさせます。パテック・フィリップに長く勤めたのもあってか、どこかノーチラスを思わせるデザインです。
ムーブメントはローラン・フェリエの工房で開発・組み立てされたトゥールビヨンを搭載しています。2つのひげぜんまいを向かい合うように据えたトゥールビヨンで、ぜんまいの拍動の際の偏りを相殺しつつ、トゥールビヨン機能による姿勢差の精度向上をさらに強化します。通常はトゥールビヨンというと文字盤側からもてんぷの動きを見ることができますが、グランドスポーツではあくまで精度向上のためなので、裏側からのみ見ることができます。
3-4.スポーツ
スポーツは2022年に発表されたコレクションで、グランドスポーツのDNAを継承しレギュラー化しました。特徴的なトノー型のベゼルとクッション型のミドルケースはそのままで、ラグジュアリースポーツウォッチらしいデザインを維持しています。チタン製ケースも健在で、軽量かつ耐傷性に優れた日常使いを想定したモデルです。
グランドスポーツではトゥールビヨンのみの展開でしたが、現行のスポーツオートでは自動巻きでの展開でリーズナブルな価格設定となっています。とはいえ搭載されているムーブメントCal.LF270.01は1つあたり139を超える手作業による仕上げが施されており、ローランフェリエによる手仕事への強いこだわりは変わりません。
4.【時計愛好家垂涎の的】ローラン・フェリエのおすすめモデル5選
4-1.クラシック・トラベラー LCF007.R5.AR1.1
クラシック・トラベラーはローラン・フェリエを代表するシリーズであるクラシックから発表されたGMTモデルです。バーチカルサテンブラッシュ仕上げのスレートグレイ文字盤にレッドゴールド製針とインデックスを組み合わせたエレガントな世界観を見せるモデルです。
3時位置の小窓は日付表示で、9時位置の小窓でGMT表示を行います。第二時間帯表示として時差分ズラして設定した時針として扱うため、メインの時針の進みとズレた分がそのまま同期しながら使用します。ブレゲの時代には実現不可能だったナチュラル脱進機を進化させたダブルダイレクトシリコン脱進機を搭載しており、トルクの効率を最高効率で使用することができる画期的な機構だ。
4-2.スクエア・マイクロローター アイスブルー LCF013.AC.CG7
Ref.LCF013.AC.CG7はアールデコ様式を象徴するクッションケースを採用したスクエアコレクションの一本です。サンバーストサテン仕上げされたアイスブルー文字盤は独特のエレガントさやファンタジーの雰囲気をもつ美しさが特徴で、ホワイトゴールド製のインデックスやスモールセコンドを組み合わされています。
他モデルと同様で、3日間パワーリザーブをもつマイクロローター式のナチュラル脱進機式の自社製ムーブメントを搭載しています。ローラン・フェリエのアトリエで設計、組み立て、調整が施されており、高い巻き上げ効率や美しい仕上げを堪能できます。
4-3.グランドスポーツ・トゥールビヨン パシュート LCF044.T1.RN1
Ref.LCF044.T1.RN1はローラン・フェリエの創業者である2人によって生まれたモデルです。2人が出会ったモータースポーツを思わせる流線形のケースデザインやクッション型ベゼルは、どこかレトロさを感じさせつつ洗練されたスポーティーな雰囲気をもっています。
ムーブメントは2つのひげぜんまいを180度向きを変えて配置することで互いの偏心を相殺し合い、安定した振動・精度を実現します。トゥールビヨン機能による安定した精度をさらに補強します。シリコンパーツや超高精度での加工を行うLIGAプロセスなど、最新の技術も取り入れており、磁気に強く注油を必要としないためメンテナンスまでの期間を延ばしています。
4-4.クラシック・トゥールビヨン アイボリー・エナメル・グランフー LCF001.02.J1.E09
ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(GPHG)2010メンズウォッチ賞受賞モデルのグランフーエナメル文字盤モデルです。19世紀の懐中時計にインスパイアされたクラシックコレクションからの一本で、やわらかなカーブを描くベゼルや大きめのリューズなどクラシックなデザインに統一されています。
搭載されているムーブメントCal.LF619.01はダブルバランススプリングトゥールビヨンを備えています。てんぷを2つ配置することで互いの偏心を相殺し、より安定した精度を出すトゥールビヨンの特徴をもっと引き出します。
4-5.クラシック・ムーン シルバー LCF039.R5.G3N(2024年新作)
ローラン・フェリエを代表するコレクションとなるクラシックから2024年新作モデルです。このデザインは創業の年でもある2010年にGPHGのベストメンズウォッチに選ばれたモデルをベースにしており、ブランド初となるムーンフェイズを追加しました。
12時位置の窓で曜日と月、文字盤外周を使ったポインターデイトと6時位置のムーンフェイズとなっています。夜明けを思わせるやわらかな印象のアイボリー文字盤が特徴で、どこか懐かしさすら感じるデザインです。
5.【時計愛好家垂涎の的】ローラン・フェリエ
ローラン・フェリエの歴史、魅力、代表シリーズ、おすすめモデルについてまとめました。パテック・フィリップに所属後に独立した時計師が興すブランドは数多くありますが、ローラン・フェリエほどパテック・フィリップのDNAを感じさせる時計師はいないでしょう。手仕上げにこだわるのも、かつてのパテック・フィリップと同じ手法を採る意味合いも感じられ、深いリスペクトとこだわりの強さがローラン・フェリエの持ち味です。もし街中でローラン・フェリエの時計を見かけたらぜひ一度手にとってみてください。