2024年9月25日
【プロダクトデザイン】アイクポッドとは?歴史や魅力を徹底解説
アップルウォッチで一躍有名となったマーク・ニューソンがかつて手掛けていたブランドとして知られるようになったアイクポッド。かつてプロダクトデザインされた数少ない高級時計として認知されていましたが、休眠を経て再上陸しています。現在は同じデザインを安価に手に入れられるように改良され、多くの人の手に届くようになりました。
この記事ではアイクポッドの歴史、魅力、代表シリーズ、おすすめモデルについてまとめました。
目次
1.【プロダクトデザイン】アイクポッドの歴史
1-1.1994年に実業家のオリバー・アイクとインダストリアルデザイナーのマーク・ニューソンによって創業
1994年、実業家のオリバー・アイクとインダストリアルデザイナーのマーク・ニューソン
によって、アイクポッドは創業しました。2年後の1996年にウミウシと名付けられたダイバーズウォッチはおわん型のケースとすりばち状のベゼルといったユニークなデザインに加え、クロノメーター認証を受けたムーブメントを搭載したことが大きな注目を浴びました。
1997年にアイクポッドの最高傑作と評されるヘミポッドを発表。70年代を思わせるレトロかつ近未来的な世界観とラグを排除したケース形状はたちまち人気となりました。1999年にはパネライに並ぶ大型46mmケースのメガポッドを発表。ヘミポッドに続きラグがない大型のケースデザインは、パネライに並びデカ厚ブームの流れをつくりだした存在の一つとされています。
2001年にマナティーを発表。マーク・ニューソンらしい角を丸めた長方形ケースが特徴で、時計本体と一体型のラバーストラップやワールドタイム表示機能を搭載するなど、新しい要素を複数備えていました。今になって見ると、どこかアップルウォッチの面影を感じるモデルです。
1-2.2006年ブランドが休眠状態に
一見、順調に見えていた2006年にアイクポッドは倒産してしまいました。2008年にアメリカの投資家によって再スタートを遂げます。同年に発表されたホライゾンはヘミポッドのケースに、秒針もインデックスもない特徴的な文字盤を合わせたアイクポッドらしさのあるユニークなオブジェでした。
もう一つ、2008年に発表されたソラリスはデュアルタイム表示をマーク・ニューソン流に表現したモデルで、2001年発表のマナティーと同様に角を丸めたラグのない長方形ケースが特徴です。表裏で異なる時刻表示ができるようにムーブメントを2つ配置し、リバーシブルに使用できるようにしました。
しかしケース素材を18Kゴールドとプラチナに限り、また高級時計店でのみ販売としたことで、売上不振に。再び倒産し、マーク・ニューソンもブランドを離れてしまいました。
1-3.2017年クリスチャン・ルイ=コルによって再スタート
2017年にクリスチャン・ルイ=コルによってアイクポッドは再度立ち上がりました。ブランドの初期からのファンであり、様々なブランドでの経験を活かして伝説を復活させる熱意のもと、低迷していたアイクポッドを購入しました。
アイクポッドを復活させるにあたって、一般ユーザーにも手に届く価格設定へ変更するべく2018年にクラウドファンディングを実施。新生アイクポッドとして新モデルとなるデュオポッドとクロノポッドを発表し、700人を超える支持を得ることができました。
デュオポッドとクロノポッドの文字盤デザインは、オーデマ・ピゲの初代ロイヤルオーク オフショアなどを手がけたエマニュエル・ギョエへ依頼。時計愛好家ならむしろ親しみのあるデザイナーでしょう。マーク・ニューソンの意匠を受け継ぎつつ、より現代的なエッセンスで仕上げています。
手に入れやすい価格設定のため、ムーブメントをスイス製の機械式から日本製のクオーツへ変更しました。また、業界で培ってきたコネクションを使い、高い品質の中国製のケース、台湾製の文字盤と針、人件費の高いスイスではなく香港での組み立てへと変更しています。
2020年には機械式時計としても復活を果たします。こちらはアレキサンドル・ペラルディへデザインを依頼。2021年に発表されたシーポッドはファブリス・ゴネへ依頼するなど、世界的なデザイナーに力を借りながら拡大を続けています。
2.【プロダクトデザイン】アイクポッドの魅力
2-1.プロダクトデザイナーが手掛けたユニークなデザイン
アイクポッドの時計はプロダクトデザイナーのマーク・ニューソン氏が手掛けています。氏は家具ブランドのイデーでデザイナーを務めたり、アップルウォッチのデザインに関わるなど世界的に評価されているデザイナーです。当時はまだあまり有名ではなかった頃のようですが、実業家のオリバー・アイクとブランドの設立に携わりました。
アイクポッドのデザインはマーク・ニューソンによるプロダクトデザインを色濃く反映したものとなっています。他のブランドでは見ないすり鉢状や円盤型のケース形状や、人間工学に基づいた手首に馴染む裏蓋など突飛なようでいて、綿密に計算されたデザインです。
復活後は様々なデザイナーが関わっていますが、いずれもマーク・ニューソンが手掛けたデザインにオマージュを捧げたものとなっています。
2-2.クロノメーター認定ムーブメントなど時計としての品質も高められている
アイクポッドはユニークなデザインが特徴的ですが、ムーブメントにも力を入れています。ETAベースではあるもののスイスクロノメーター認定をパスしたものを基本的には使用していました。
現在ではクオーツの他にミヨタ製機械式ムーブメントも採用することで大きくコストを下げました。中国製のものを使用すればもっと安価なムーブメントも手に入るはずですが、ただ安くつくることを目的とはしていないため、世界的にも採用されているミヨタ製を搭載したと思われます。価格に見合ったムーブメントがしっかり選定されています。
2-3.再スタート以降、リーズナブルな価格設定で生まれ変わった
アイクポッドはかつて高額な価格設定がなされており、ハイブランドと同等かそれ以上の価格帯でした。元々ブランドのファンで再スタート時に尽力したクリスチャン・ルイ=コル氏によれば、ロレックスの倍の価格だったこともあったようです。
2008年にアメリカの投資家がブランドを買い取りスタートした際にはさらに高額になり、ETA/ヴァルジューのCal.7753にデュボア・デプラのモジュールを搭載したクロノグラフモデルがおよそ170万円だったと氏は法外な価格だと話しています。
そこで氏がアイクポッドを再スタートさせた際には誰もが手に入れられる価格設定にしたいと考え、新しいモデルは従来の20分の1の価格となっています。10万円を切るモデルもあり、新生アイクポッドはユーザーを拡大させていく狙いです。
3.【プロダクトデザイン】アイクポッドの代表シリーズ
3-1.スカイポッド
スカイポッドは2019年に復活を遂げたアイクポッドが2022年に限定版として発表したコレクションです。アイクポッドのコレクターでもあるスウェーデンのデザインユニット「クラーソン・コイヴィスト・ルーネ」へ文字盤デザインを依頼しています。ケースサイズを47mmから46mmへサイズダウンしていますが、2000年当時のモデルをベースに、リスペクトを持ってリデザインされています。
2000年発表のメガポッドGMTに搭載されていたムーブメントが残されていたことや当時アイクポッドで時計師として働いていたローランド・グロア氏による仕上げなど、様々な条件が揃って初めて発表された歴史的なコレクションでもあります。世界限定のため、裏蓋には1から25のシリアルナンバーが刻印されます。
3-2.シーポッド
2021年に発表されたシーポッドはダイバーズウォッチです。ヨルグ・イゼックに師事し共に活動していたファブリス・ゴネへデザインを依頼。ブランドを象徴するUFO型ケースは46mmと大型ですが、エルゴノミクスにならうことで曲線だらけの形状ながらも着用感は抜群。おしゃれなデザインだけではなく、実際の使用感もケアされています。
ゼール、ジャック、フランソワとデザイン違いでリファレンスが分かれて発表されました。どれも世界的なダイバーから名前をとっています。全て200mの防水ケース、逆回転防止機能付ベゼル、ねじ込み式リューズといったダイバーズウォッチらしい要件を揃えています。現在ではモデル数も増え、違ったコンセプト、違ったデザインのモデルも楽しめます。
3-3.メガポッド
1999年に発表されたメガポッドはパネライやウブロを代表とするデカ厚ブームに類する大型コレクションです。チタン製の46㎜のケースにクロノグラフと計算尺を備えたパイロットウォッチとして発表されました。
現行では休眠と同時に姿を消していましたが、アレキサンドル・ペラルディによりオリジナルモデルにオマージュを捧げつつも、よりモダンなダイアルに仕上げて2020年に再度発表されました。46mmの大型ケースは健在で、人間工学に基づいてデザインされた手首に馴染むケース形状に。ミヨタ製の機械式ムーブメントを採用することでリーズナブルな価格帯で展開されています。
3-4.デュオポッド
デュオポッドは2019年の再スタートの際に立ち上がったコレクションの一つです。マーク・ニューソンが手掛けたアイクポッドのデザインをベースにエマニュエル・ギュエによって再考されたデザインを採用しています。
日本製のクオーツムーブメントを搭載していますが、クオーツモデルであることが一見してわからないように秒針を設けていないのが特徴です。「2針」の意味でのデュオが名前の由来と見られます。以前では考えられなかった価格設定がなされており、多くのユーザーの手に届けたいと考えて発表されました。
3-5.クロノポッド
名作「ヘミポッド」へのオマージュを捧げたクロノグラフモデルです。クリスチャン・ルイ=コルによる再スタートの際に行ったクラウドファンディングで、世界中の700人を超える支持者が集まりました。
アイクポッドの最高傑作とされるヘミポッドのアイコニックなケースデザインはそのままに、エマニュエル・ギュエによってデザインされた斬新な文字盤が特徴です。絶滅したと言われる、幻の鳥ヘミポッドがリューズに刻印されています。
ムーブメントをスイス製の機械式から日本製へ、ケースの製造を信頼性のある中国メーカーへ、組み立てを人件費の高いスイスから香港へ切り替えることで、価格設定を大きく見直すことに成功しました。かつての銘品ヘミポッドを現代的なニュアンスと手にしやすい価格で発表されたユーザーライクなコレクションです。
4.【プロダクトデザイン】アイクポッドのおすすめモデル5選
4-1.メガポッド アワーグラス Ref.IPM106HGSILB
2020年にリデザインされて発表されたメガポッドから発表された限定モデル。2010年に発表されたモデル「HOUR GLASS」を彷彿とさせるデザインを採用しており、限定モデルは7つのリファレンスで展開される合計100本のみのコレクターズアイテムです。
砂時計の形状をした秒針が特徴的なデザインです。46mmの大型ケースですが人間工学に基づいた手首に馴染むケース形状になっており、ユニークなデザイン以上に使い勝手の良い時計です。ムーブメントは他のメガポッドと共通でミヨタ製の機械式ムーブメントのため、限定モデルながら、比較的リーズナブルな価格設定となっています。
4-2.シーポッド ゼール Ref.IPS001SILB
2021年に発表された機械式のダイバーズウォッチコレクションのシーポッド。マーク・ニューソンから受け継いだデザインを新生アイクポッドとしてファブリス・ゴネへ依頼。プロダクトデザインを感じさせつつも、一目でアイクポッドだとわかるデザインへ仕上げました。人間工学に基づいた形状により手首にフィットしやすくもなっています。
ブランドのイメージカラーとなるオレンジを使ったゼールは、スキューバダイビングの創成期のパイオニアであり、水中写真家、また女優としても活躍したゼール・パリーから名付けられました。
4-3.スカイポッド リミテッド Ref.IPSK01RPLB
2019年のブランド復活後に発表された限定コレクションのスカイポッド。アイクポッドのコレクターでもあるスウェーデンのデザインユニット「クラーソン・コイヴィスト・ルーネ」へ文字盤デザインを依頼し、マーク・ニューソンの生み出したプロダクトデザインをベースとしながらもケースサイズを縮小するなど、リデザインされています。
かつてのメガポッドGMTに残されたムーブメントを搭載し、当時アイクポッドで時計師として働いていたローランド・グロアの協力もありました。当時のモデルのスペックに忠実に、それでいて新しいアイクポッドの世界観を見せてくれるモデルです。
4-4.アイソポッド デュアルタイム ダイヤモンド コレクション Ref.ISDBS01L
プロダクトデザインされた流線形で近未来的な世界観が特徴のアイクポッドを小振りなサイズで楽しめるアイソポッド。縦2つ目のデュアルタイムモデルで、12時位置のインダイヤルで第二時間帯、6時位置で日付表示となっています。
ブラックPVD処理されたステンレス製のシックなケースにベゼルを埋めつくすダイヤモンドがエレガントに仕上がっています。黒文字盤にインデックスやインダイヤルは白で描かれている中で秒針だけはオレンジカラーを選択。重たくなりすぎずスポーティーな印象も追加されています。
4-5.リップル オブ キティ(2024年新作)
アイクポッドは2024年新作としてサンリオのハローキティが生誕50周年を迎えた記念モデルとして、リップルオブキティを発表しました。世界を繋げるのは海というコンセプトにより文字盤のキティはシーブルー(海色)で描かれています。また、ベゼルに描かれたインデックスは50周年に合わせ、50はシーブルーで書かれています。
アイクポッドのシーポッドコレクションをベースにデザインされており、大型のUFO型ケースや人間工学に基づいた手首に座る形状は健在です。裏蓋への「HELLO KITTY 50TH ANNIVERSARY」の刻印や専用ボックスなど、ファンにはたまらない仕様が詰め込まれています。
5.【プロダクトデザイン】アイクポッド
アイクポッドの歴史、魅力、代表シリーズ、おすすめモデルについてまとめました。プロダクトデザインされたことで他のブランドではあまり見ないデザインを採用しているアイクポッドは、様々な思惑が絡み合った歴史を歩んできました。時にはユーザーライクではなかった時期もあるようですが、現在は多くのユーザーに手に取って欲しいとした価格設定やデザインがなされています。生まれ変わったアイクポッドは要注目ブランドの一つです。もしアイクポッドの時計を見かけたらぜひ一度手にとってみてください。