2023年3月05日
【デザイナー✕グラスヒュッテ様式】ノモスとは?歴史や魅力を徹底解説
時計
Nomos Glashutte(以下ノモス)は1990年の東西ドイツ再統一後に生まれ、比較的歴史は浅いもののしっかりと存在感を示しているブランドです。バウハウスに基づきつつデザイナーによるモダンさを持ち合わせつつムーブメントへのこだわりも見せることで、時計入門者にも深い知識を持った時計愛好家にも愛されています。この記事ではノモスの特徴や代表シリーズ、ノモスの時計を着けている有名人などを紹介します。
目次
1 【デザイナー✕グラスヒュッテ様式】Nomos Glashutteの魅力
1-1 バウハウスに基づくモダンなシンプルさとデザイナーの融合
出典:NOMOS
ノモスのデザインはバウハウスに基づくシンプルさがベースにあります。ノモスを代表するタンジェントはミニマルで幾何学的ともいえる形状で、直線的なケース形状やフラットな文字盤と風防もバウハウスらしいデザインです。タンジェント以外のモデルも基本的に装飾や機能がほとんどないバウハウス的なモダンな展開です。
タンジェントに採用されている偶数のみのアラビアインデックスは他のドイツブランドでも見られます。1937年にバウハウスがナチスの圧力により活動できなかったころ、ドイツブランドは同じような文字盤を採用していました。様々な時計メーカーが同じ文字盤メーカーから調達することは珍しくなく、現在タンジェントに採用されているデザインはドイツにあるWeber&Baral社が製造したものとほぼ同じです。
近年では建築デザイナーに依頼し、ノモスに新たな風を吹き込もうとする動きがあります。ただシンプルでモダンな時計ではなく、バウハウス的なノモスらしさをしっかり見せつつデザイナーの遊び心や狙いを愉しめる時計が増えてきているのです。
1-2 グラスヒュッテ様式による堅牢な機構と考え方
出典:NOMOS
ノモスは正式名称にもあるようにドイツグラスヒュッテでつくられており、その称号はムーブメントの価値の50%以上をグラスヒュッテ産のパーツで構成された時計だけが名乗ることができます。ノモスは95%のパーツをグラスヒュッテ産を使用しています。
グラスヒュッテ地域の時計産業を大きく成長させたのはA.ランゲ&ゾーネの創業者アドルフ・ランゲですが、彼が遺したグラスヒュッテ様式の時計作りはランゲだけでなく同じグラスヒュッテで生まれる時計たちにも受け継がれています。ノモスも同様です。
グラスヒュッテの時計を確立させたグラスヒュッテ様式の中でもノモスがとりわけ採用している点をピックアップしまとめます。
1-2-1 グラスヒュッテ様式の特徴:3/4プレート
出典:NOMOS
ノモスの時計の裏蓋からムーブメントを見ると気づくかもしれませんが、ムーブメントのほとんどを大きな地板が覆っています。これが3/4プレートで、大きな地板がほとんどの歯車を支える役目を担っています。
代表的なスイス時計に搭載されるムーブメントは一つ一つの歯車が独立して調整が可能な代わりに、一つの歯車に狂いがあればすべての歯車を調整する必要がありました。3/4プレートは全ての歯車を一つの大きな地板で支えることによって同じ軸で設定することが可能です。組立時に全ての歯車の軸を同時に差し込む必要がありますが、堅牢なだけでなく組立時間の短縮や品質が安定しやすくなるなどメリットが大きい機構です。
ノモスは自社製ムーブメントに3/4プレートを採用しており、いずれも大きな地板がムーブメントを支えています。今では公式HPでは見ることができませんが、自社製ムーブメントが開発される以前のETA社製7001ムーブメントを搭載していたときも、ベースに採用しつつグラスヒュッテ様式に則って改良を加え3/4プレートや青焼きのネジなど、ノモスらしい時計作りをずっと貫いています。
1-2-2 グラスヒュッテ様式の特徴:グラスヒュッテストライプ
出典:NOMOS
グラスヒュッテストライプとはムーブメントの地板全体に施される縦縞模様のことです。ただの縞模様ではなくわずかに凹凸が付けられており立体感と光の当たる角度で生まれる陰影が波のような美しさとなります。
スイス時計にも同じような凹凸を付けた模様があり、コート・ド・ジュネーブと呼ばれています。細工としては同じで、時計の原産国で呼び方が変わります。ドイツ時計もスイス時計も互いに影響し合いながら成長してきた歴史があるので、どちらかが取り入れたのかもしれません。
1-2-3 グラスヒュッテ様式の特徴:ゴールドシャトン(ラックス、ラムダのみ)
出典:NOMOS
グラスヒュッテ様式の一つとしてシャトンにゴールドを使うことがあります。シャトンとは歯車の軸受に使われるルビーやダイヤモンドといった受け石を固定するための金属のリングです。主に真鍮などの比較的やわらかい金属が用いられており、高級機には18Kゴールドが使われていました。
シャトンは主に受け石とほぞ(歯車の芯)をしっかり固定することが目的でした。ルビーやダイヤモンドの加工技術が未熟だった時代の名残でもあり、今では装飾が主な目的となっています。高級機や復刻モデルに使われることが多く、当時を彷彿とさせるデザインパーツとなっています。
ノモスのラインナップにおいてもハイエンドラインのラックスとラムダのみに使われています。グラスヒュッテ様式とはいえ装飾目的としては、ノモスの通常ラインに採用することは彼らの哲学にないのかもしれません。
1-2-4 余分な機能を持たないシンプルさへのこだわり
出典:NOMOS
ノモスの特徴として、できるだけ機能を搭載しないというのがあります。シリーズ展開は10種類以上ありますが、搭載されている機能はデイト表示、パワーリザーブ、ワールドタイム、GMTだけです。クロノグラフやムーンフェイズ、トゥールビヨンといった機能を搭載した時計は一つとしてありません。展開されている時計の多くはスモールセコンドの3針で、デイト表示を搭載しているモデルもほんの一部です。
バウハウスの考えに基づき、余分な機能は徹底的に排除されています。機構が増えればムーブメントが複雑になるため、故障の可能性が高まるほかオーバーホール等のメンテの料金が高くなり、預ける期間が長くなります。時計を道具と認識しているドイツらしいともいえます。
1-3 幅広いバリエーションによる選ぶ楽しみ
出典:watchnavi
ノモスはシンプルなデザインながら幅広いバリエーションでの展開が特徴です。ケースがほぼ同じで文字盤デザインが違ったり、同じ文字盤デザインでサイズや文字盤カラーが違うなど他の時計ブランドとは一線を画す展開となっています。
1-3-1 同じケースサイズ・ほぼ同じ形状で異なる文字盤デザイン
ノモスの展開は少し他の時計ブランドとは変わっており、ケースサイズと形状がほぼ同じまま文字盤デザインだけが違うパターンでの展開が多いです。(厳密にはラグの形状やケースの丸みが少し違うなど)
例えば35mmのタンジェント Ref.TN1A1W2とほぼ同じケースサイズ、ケースデザインでローマインデックスのラドウィグ Ref.LD1A2W1、バーインデックスのオリオン Ref.OR1A3GW1が展開されており、ユーザーは純粋にデザインだけで時計を選ぶことができます。そのため、文字盤がどう描かれているかをしっかり見比べて選ぶ楽しみがノモスの特徴です。
1-3-2 同じ文字盤デザインで色違い・サイズ違い
出典:webchronos
前項で同じケースサイズで違う文字盤デザインが愉しめると書きましたが、好みの文字盤デザインを決めても、ケースサイズ違いや文字盤カラー違いがあるのがノモスの面白い点です。
例えばタンジェント Ref.TN1A1W2が気にいったとして、38mmケースのRef.TN1A1W138、ミッドナイトブルー文字盤のRef.TN1A1BL1、33mmのRef.TN1A1W133、33mmでゴールド文字盤のRef.NMTN1A1KR233など選択肢が豊富です。あるいは文字盤は同じで正方形ケースのテトラも含めると、選ぶのが大変なほど。
自社製ムーブメントを搭載しているモデルやデイト表示搭載モデルもありますが、基本的には使い勝手は大きく変わりません。ノモスのムーブメントへの強いこだわりと技術力を感じたいなら自社製ムーブメントを、そうでなければデザインの好みだけで選んで問題ありません。それがノモスの楽しみ方です。
1-4 デザインだけではなくムーブメントへのこだわりも強い
出典:NOMOS
デザインだけではなくノモスはムーブメントへのこだわりも強いブランドです。2005年から開始した自社製ムーブメントの開発はラムダ、ラックスといったハイエンドモデルを皮切りに展開を広げていきました。これらに対しても元々ノモスはヴェンペ他ドイツブランドからのOEMとしてムーブメントを製造していた経緯があるため、突然開発に着手したわけではなくやっと始めたかという印象すらあります。
2014年にはノモススウィングシステム、翌年にはそれを搭載した自社製ムーブメントDUW3001が発表されました。ノモススウィングシステムは脱進機を含め設計から製造まで自社でつくることができる画期的な機構でした。特に脱進機の開発は世界的に見ても手掛けるブランドが少なく、専門メーカーから購入するのがほとんどです。今ではノモスの時計のほとんどに搭載されています。
ノモスが変わっているのは自社製ムーブメントを開発して新作を次々に発表するのかと思いきや、新作は控えめに既存ラインの自社製ムーブメント化を進めたことです。例えばチューリッヒ Ref.ZR1E3W2は元々ETA社ベースのξ(クシー)を搭載していましたが、今では自社製ムーブメントDUW5001に置き換わっています。外観からの違いが大きくないため、気付いたら自社製ムーブメントに変わっていたというほどです。
2 【デザイナー✕グラスヒュッテ様式】Nomos Glashutteの代表シリーズ
ノモスは主に機能ではなくデザインで幅広いシリーズ展開を行っています。シンプルながら10種類以上のデザインを展開しているのはデザイナーの力が大きいといえます。
2-1 タンジェント
出典:NOMOS
12・2・4・8・10が書かれたアラビアインデックスのシンプルなデザインがタンジェントの特徴です。タンジェントとは直角を表しており、様々な直角がデザインに盛り込まれています。
例えばストレート形状のラグがケース本体に対し直角に溶接されています。通常、ケースのカーブに沿ったラグが取り付けられることが多く、ノモスにおいてもチューリッヒはそうしたデザインです。タンジェントは直角へのこだわりが強いため、こうしたデザインを採用しています。
他にもケース自体がカーブしておらず円柱形状であるのも、ケースを横から見た際に直角であるためです。また、ラグは手首に沿ってカーブするのが一般的ですが、タンジェントは直角ではないもののカーブではなく120度程度に折れ曲がることで、直線でのデザインイメージに近くなっています。
ノモスの原点にあたるシリーズで、後述するタンゴマットやアホイなどのデザインのベースとなっています。ノモスのアイコン的存在で広告露出の際に選ばれるため、最も目にする機会の多いシリーズです。
2-2 ラドウィグ
出典:NOMOS
ラドウィグは12、2、4、8、10をローマ数字で書かれたインデックスをもつクラシックなデザインのシリーズです。また、文字盤外周はレイルウェイになっており、シンプルさとの調和がとれた匠な文字盤です。
一見タンジェントのローマ数字版のようですが、そう単純ではありません。ケースはタンジェントのような直角ではなく、お椀のように手首にちょうど収まるようにデザインされています。ラグは手首に沿って自然にカーブしており、硬い印象はありません。
タンジェントが直角をイメージした直線の時計なら、ラドウィグは曲線の時計です。文字盤から始まりケースやラグなど、クラシックなだけでなくエレガントさを感じさせるデザインにまとまっています。
2-3 オリオン
出典:NOMOS
オリオンは細身のバーインデックスをもつノモスの中でも特にシンプルなデザインのシリーズです。インデックスはゴールドで植字になっており、ノモスの中では珍しく立体感を見せるデザインとなっています。
ラグの形状はタンジェントやラドウィグとは違い、ケースに沿うカーブと手首に沿うカーブがついたポピュラーなものとなっています。
シンプルなデザインからか派生モデルが多く展開されており、ベルリンの壁崩壊25周年記念のブラックグレー文字盤にゴールドインデックスの文字盤やグレー文字盤にグレーロジウム針とインデックス、ローズ文字盤にゴールドインデックスなど、様々なデザインが愉しめるシリーズとなっています。文字盤のカラーバリエーションとサイズ展開が豊富なので、ペアウォッチとしても選びやすいです。
2-4 テトラ
出典:NOMOS
テトラはその名の通り四角いケースが特徴のシリーズですが、正方形ケースがかなり珍しいデザインです。文字盤デザインはタンジェントと同じ12、2、4、8、10のアラビアインデックスで、日付表示の展開もない極めてシンプルな機構のシリーズです。正方形ケースに垂直に取り付けられたラグは段差がついて2段になっており立体的です。
カラーバリエーションが非常に多いシリーズで、白やミッドナイトブルーだけではなく抹茶や赤、プラムなど珍しい色の文字盤が展開されています。針の色もブルースチールとゴールドが文字盤によって使い分けられています。
2-5 タンゴマット
タンゴマットはタンジェントをベースに自動巻きにしたシリーズです。タンジェント(TANGente)の自動巻き(AUTOMATic)で造語です。基本モデルとなるRef.TN1E1W1は一見、タンジェントRef.TN1A1W2と区別がつかないほどデザインはそのままです。違いは自動巻きであることと、ケースサイズが手巻き35mmと自動巻き38mmと大きくなり、厚さも同様に増していることです。ちなみにタンジェント38mm Ref.TN1A1W138との違いになるとケースサイズもほぼ同じになるため、一見区別がつきません。
実はタンジェントにも自動巻きシリーズが展開されています。タンジェントネオマティックRef.TN130011W2という自社製ムーブメントを搭載したシリーズで、発表当時は35mmの自動巻きなので、タンゴマットとはケースサイズ、針の色やインデックスの色、タンゴマットは自社製ムーブメントではない違いがありました。
しかし後に既存シリーズのほとんどに自社製ムーブメントを搭載するというノモスの方針でタンゴマットにも自社製ムーブメントが搭載されました。さらにタンジェントネオマティック39mm Ref.TN130011W239というケースサイズ、ムーブメント(厳密には搭載しているムーブメントは違います)、厚み、針の色とほぼ同等のモデルが展開されています。タンゴマットは過去のシリーズとしてなくなってしまう可能性があるといえます。
2-6 クラブ
出典:NOMOS
クラブはノモスの中でもカジュアル・スポーティーなシリーズです。ベゼルは肉厚でRがかっておりラグも大きめ、リューズもノモスとしてはかなり大きく針も太めで芯には差し色がデザインされており、カジュアルに使いやすいデザインです。インデックスはタンジェントと同じで偶数のアラビアインデックスですが文字は太めで、モデルによっては別の色で縁取りされているなど、ノモスとしては異色のシリーズです。
ノモスのシリーズの多くは、防水性は日常生活防水程度しか基本的には設定されていませんが、クラブは10気圧が設定されています。夜光処理された針は暗闇でも見ることができるなど、スポーツウォッチの多くが持つ機能をノモスの雰囲気を崩さずにセットしたシリーズといえます。
文字盤のバリエーションが多く、カジュアルなカラー展開が多くされているためストラップとの組み合わせが愉しめます。ダイバーズウォッチほどではなくスポーティーで、ノモスのシンプルでモダンなデザインが愉しめるいいとこ取りしたシリーズです。
2-7 チューリッヒ
出典:NOMOS
チューリッヒは金融・銀行の世界的中心地である都市にちなんで名付けられたシリーズで、チューリッヒで活躍するビジネスマンをイメージしてデザインされたと言われています。チューリッヒを拠点とする建築デザイナー ハンス・ウェッツスタインによってデザインされており、一見シンプルながら随所へのこだわりが深いものとなっています。
インデックスは手作業で立体的な植字となっており、文字盤外周から中心に向けて傾斜がついています。ラグは別で制作したものと取り付けたものになっており、溶接とは違い合わせの部分までしっかり磨きをかけることができる構造です。機能美としての美しさを追求したデザインは建築デザイナーならではの印象の時計です。
同シリーズにはワールドタイマーも展開されており、通常のワールドタイマーとは違い世界の都市の時刻を同時に知るのではなくボタン操作によるGMTに近いものとなっています。ワールドタイマーとしてもノモスとしても変化球なシリーズですが、ノモスらしさはしっかり感じられる雰囲気をもっています。
2-8 メトロ
出典:NOMOS
メトロはドイツベルリンで活躍するマーク・ブラウンをデザイナーに迎え、地下鉄の路線図にインスピレーションをえてデザインされたシリーズです。ニューヨークのエンパイアステートビルのような針の形状やポップなカラーリングが特徴です。
既存のノモスのラインとは異なり、ワイヤーラグやローレット加工されたリューズなど、クラシックなような工業的なような様々なデザイン要素が複雑に組み合わされています。初代のRef.MT1D4W2のみパワーリザーブが付いており、ドイツの地下鉄路線図に使われるカラーリングでパワーリザーブの残量を示しています。
チューリッヒに続き外部デザイナーを迎えてのシリーズ展開ですが、変化球ながらノモスらしい雰囲気は健在です。
2-9 アウトバーン
出典:NOMOS
アウトバーンはドイツの家具デザイナーであるヴェルナー・アイスリンガーとのコラボレーションにより生み出されたシリーズです。精緻なドイツ製クオリティという意味と6車線からなるドイツの高速道路に由来しており、往年のオールドカーを想起させるデザインとなっています。
時分針は色と太さがそれぞれ違っており、時針は太めで先までオレンジ色でインデックスに届かない長さです。分針は太めで時針と重なる長さは白、時針を超えたらオレンジ色となっています。文字盤にはスピードメーターのような弧が描かれており、時針はスピードを示すようにその上を動いていきます。弧は夜光処理されており、弧が描かれている夜8時から明け方4時までは暗闇でもスーパールミノバが機能するといった設計となっています。
ムーブメントは自社製DUW6101で初めて日付表示を搭載したモデルです。デザイン、ムーブメント共にノモスの最新のデザインや技術が反映されているシリーズといえます。
2-10 ミニマティック
出典:NOMOS
ミニマティックはノモスの自動巻きラインです。タンゴマットはタンジェントがベースのデザインですが、ミニマティックはよりミニマルなデザインとなっています。
一見タンジェントと同じ偶数アラビアインデックスですが、フォントや針の色、はかまやラグの形状など少しずつ違っておりクリームいろの文字盤に赤い針が際立つ可愛らしさを感じるデザインとなっています。どこかレトロでミニマルな雰囲気の中に、モダンなノモスらしさもしっかり主張しています。
ミニマティックは自社製自動巻きムーブメントDUWシリーズ発表の先駆けとして発表されており、今ではそれぞれのシリーズにネオマティックモデルとして展開されています。
2-11 アホイ
出典:NOMOS
アホイはノモスのダイバーズウォッチシリーズです。アホイの名称は船乗りの掛け声に由来しています。ベースのデザインはタンジェントで、偶数のみのアラビアインデックスや直線的なラグとケースサイドなどは受け継がれています。
防水性は20気圧で、リューズガードや夜光処理された時分針、手入れが簡単な耐水ナイロンベルトがアホイの特徴です。ノモスのDNAをしっかりもちながらスポーティーな雰囲気も愉しめます。アホイアトランティックと呼ばれる深海の青のようなディープブルー文字盤モデルや空色のシグナルブルー文字盤モデルも展開されています。
通常のアホイはケースサイズが40mmですが、ネオマティック36mmと小ぶりなモデルもあります。現在はどちらも自社製ムーブメントを搭載されているためサイズ違いとなります。
2-12 ラックス、ラムダ
出典:NOMOS
ラックスとラムダはノモスが初めて自社製ムーブメントを搭載したシリーズで、発表当時はラムダはローズゴールドケース、ラックスはホワイトゴールドケースのみの1サイズでの展開でした。
ラムダはラウンドケースで12時位置に針が270度周るパワーリザーブと時分秒表示とシンプルな機能です。針は細く長くインデックスは目立たないものの視認性が高く、品格の高さを感じさせるデザインです。ムーブメントはDUW1001に始まるノモス初の自社製ムーブメントで、3/4プレートやゴールドシャトン、スワンネック緩急針などグラスヒュッテ様式で設計されています。
ラックスはトノーケース、ワイヤーラグといったノモスとしては珍しいデザイン様式のシリーズです。インデックスに沿って描かれた円の中に時分針やスモールセコンドが配置されており、円の外はモデルによって様々なカラーリングが展開されています。ムーブメントはトノーケースに合わせた形状になっており、トノーケース用に開発されたムーブメントだとわかります。
ノモスの自社製ムーブメントとしての発表はラムダ、ラックスが初ですが、実はOEMとしてドイツブランドからのムーブメント製造委託を受けており、それらを流用したのがラムダ、ラックスです。そのため発表としては初でも自社製ムーブメントとしての製造実績は長く、それらの技術・経験がラムダ、ラックスのムーブメントやネオマティックの開発に活かされています。
3 【デザイナー✕グラスヒュッテ様式】Nomos Glashutteを着けている芸能人・有名人5選
ノモスの時計は決して派手なわけではありませんが、名脇役的な存在として活躍するような時計です。世界中の有名人も着けており、日本でも俳優の方々に人気があるようです。ここではノモスの時計を着けている有名人の情報についてまとめます。
3-1 俳優 永山瑛太 タンジェントスポーツ Ref.TS1A1S2
俳優 永山瑛太さんが着けているのはタンジェントスポーツ Ref.TS1A1S2です。永山さんは他にもいろいろな時計を着けてTVに出ていますが、タグホイヤーモナコ復刻版やGショック、ルミノックスなどあまり派手な時計は普段着けていないようです。ノモスのそのうちの一本です。
Ref.TS1A1S2はモデル名タンジェントスポーツで、夜光処理された太めの針と防水性10気圧が備わっており、その名の通りタンジェントのスポーツタイプです。ケースサイズも通常よりも1.5mm大きめの36.5mmですが、体感ではほとんど変わりません。現在ではディスコンとなり公式HPでも掲載されていない希少なモデルです。
3-2 女優 木村佳乃 タンジェント Ref.TN1A1W1
女優 木村佳乃さんが着けているのはタンジェント Ref.TN1A1W1です。木村さんは他のTV番組ではヴァンクリーフアーペルやハリー・ウィンストンなど派手でダイヤモンドが散りばめられた時計を多く着けているようですが、まるで正反対ですがノモスの時計が選ばれたようです。
タンジェント Ref.TN1A1W1は最もスタンダードなタンジェントで、ノモスのアイコンモデルです。35mmケース、偶数のアラビアインデックス、直線的なケースデザインでシンプルでいてモダンなデザインが特徴です。
3-3 女優 杏 ラドウィグ Ref.LD1A2W2
女優 杏さんが着けているのはラドウィグ Ref.LD1A2W2です。杏さんは普段カルティエのサントスを着けているのが知られているようで、レディースらしい可愛らしい時計です。
ラドウィグ Ref.LD1A2W2は基本となるタンジェントをローマインデックス化したモデルです。ケース形状も丸みをつけてクラシックな装いに似合うように微調整が施されています。同じケースサイズならばコスト的には共通にすべきですが、デザインへのこだわりが強いノモスはケースデザインがそれぞれ違っています。
3-4 女優 稲森いずみ ミニマティック シャンパーニュ Ref.MM130011CH2
女優 稲森いずみさんが着けているのはミニマティック シャンパーニュ Ref.MM1300CH2です。稲森さんはピアジェアルティプラノやヴァンクリーフアーペルなどレディースモデルを中心としながらもセンチュリーやスウォッチといったハイブランド以外も着けているのが知られています。
ミニマティック シャンパーニュ Ref.MM130011CH2は自社製自動巻きムーブメントを搭載したシリーズでシンプルなアラビアインデックスのモデルです。タンジェントとは細かなデザインが違っており、偶数だけの表記は同じですがフォントが違っていたり、針のはかま部分が大きめにとってあります。ラグの形状もケースも丸さに沿っており、クラシックなシリーズを多く輩出するブランドでよく見られる古典的なデザインです。
かちっとした印象の手巻きモデル中心のタンジェントやラドウィグよりも丸みを帯びたクラシックな雰囲気となっており、デザインが区別されています。
3-5 俳優 岡田将生 タンジェントネオマティック Ref.TN130011SC239
俳優 岡田将生さんが着けているのはタンジェントネオマティック Ref.TN130011SC239です。岡田さんはラコやハミルトンなどのオールドな雰囲気の時計を多く着けているようです。
タンジェントネオマティック Ref.TN130011SC239はノモスを代表するタンジェントをベースに水平方向にブラッシュ磨きを施したシルバー文字盤と赤の秒針が特徴のモデルです。元々フラットな要素が多く硬いイメージのタンジェントがシルバー文字盤でさらにソリッドな印象です。ムーブメントは自社製の自動巻きDUW3001。フラットデザインな雰囲気よりも工業用品のような雰囲気が強めの一本です。
4 【デザイナー✕グラスヒュッテ様式】Nomos Glashutteのおすすめモデル5選
ここでは具体的なおすすめモデルを5つ紹介します。
4-1 オリオンネオマティック Ref.OR130013W2
オリオンネオマティック Ref.OR130013W2はバーインデックスのシンプルなオリオンに自社製自動巻きムーブメントDUWを搭載したモデルです。通常のオリオンRef.OR1A3GW1よりも、ケースサイズは1mmだけ大きい36mmですが、文字盤デザインとムーブメントは大きく変わりました。
バーインデックスの大枠はそのままで時分針はブルースチールから黒に、秒針は赤に変更されました。インデックスの外周付近には5刻みで05〜60まで青い文字で書かれています。ブルースチールの針を基本としたオリオンのこれまでよりもシックで間口の広いデザインとなっています。
ムーブメントは自社製のDUW3001を搭載しており、ノモススウィングシステムにより一から製造されています。脱進機から製造できるメーカーは世界的に見ても珍しく、ノモスの技術の粋が集まったものとなっています。
4-2 チューリッヒワールドタイマー Ref.ZR1X4W2
チューリッヒワールドタイマー Ref.ZR1X4W2は世界24都市名の書かれたディスクと時分針、3時位置のホームタイムのディスクで時刻を知るモデルです。ベースのデザインはチューリッヒのため、ケースへのこだわりが強く感じられます。
変わった機構を搭載しており、他のワールドタイマーとは違った楽しみ方ができます。2時位置のプッシュボタンを押すと時針は1時間先へジャンプ、都市名リングは反時計周りに回転します。3時位置はホームタイムのため動きはなし、分針・6時位置の秒針も動きません。リューズ二段引きの時刻合わせにおいては時分針だけでなくホームタイムのリングも動くため、ホームタイムを基準として時刻合わせを行います。
このモデルは3時位置のリングをホームタイムとし、プッシュボタンでディスクを回すことで様々な都市の時刻を知ることができるモデルです。既存のワールドタイマーのように一度に複数の都市の時刻を見ることはできませんが、どちらかといえばGMT機能のように最も気にしておくべき都市に設定しておくのが使いやすい機能です。
4-3 メトロ Ref.MT1D4W2
メトロ Ref.MT1D4W2は従来のシンプルなノモスのスタイルに新しい風を吹き込むシリーズとして発表されました。ドイツベルリンで活躍するマーク・ブラウン氏をデザイナーに迎え地下鉄の路線図にインスピレーションをえてデザインされました。ポップで現代的なカラーリングが特徴で、ニューヨークのエンパイアステートビルを思わせる針のデザインです。
機能としては変わらずシンプルで、6時位置のスモールセコンドと日付表示、12時位置の小窓のパワーリザーブです。パワーリザーブは巻き上げるにつれてゲージが赤から白に変わっていきます。文字盤全体に白、秒針の赤、要所にミントカラーの可愛らしさもある色使いです。細身の管のようなワイヤーラグでレトロな雰囲気もあります。
ムーブメントは自社製キャリバーDUW3001手巻きを搭載しています。手巻きなのもあって薄く、取り回しがよいのも魅力です。風防は少し丸みを帯びており、硬さを感じるタンジェントとは逆にやわらかさを感じさせるデザインにまとまっています。
4-4 タンジェントカラット Ref.TN1A1KR233
タンジェントカラット Ref.TN1A1KR233はノモスのアイコンモデルであるタンジェントをベースにゴールド文字盤にケースサイズは33mmにコンパクトにしたモデルです。どちらかといえばレディース寄りなデザインですが、落ち着いた雰囲気が好きな男性にもおすすめのモデルです。
文字盤はゴールドブラッシュ仕上げで落ち着いた印象です。時分針・秒針すべての針がローズゴールドです。偶数のみのアラビアインデックスですが、ゴールド文字盤に馴染むように茶色文字となっています。ストラップは通常はシェルコードバンですが、ベロアレザーでヴィンテージのような手触りと雰囲気となっています。
4-5 ラムダ ローズ39 Ref.LA3DR3W239BL
ラムダ ローズ39 Ref.LA3DR3W239BLはラムダRef.NMLA3DR3W2の39mmモデルとして発表されました。Ref.NMLA3DR3W2との違いはケースサイズだけで、ムーブメントもそのままサイズダウンしたことで着けやすくなりました。
Ref.LA3DR3W239BLは18Kローズゴールドケース、ローズゴールド針ですが、ノモスの雰囲気を損なわないようにデザインされています。文字盤への装飾はほとんどなく、針は極細ですがインデックスまで届く長さです。12時位置の270度周るレトログラード式のパワーリザーブ、時分針、スモールセコンドとあり、細くとも針の動きのダイナミックさが感じられます。
ムーブメントはDUW1001とノモスが初めて手掛けた自社製ムーブメントです。3/4プレート、ゴールドシャトン、スワンネック緩急針とグラスヒュッテ様式に忠実につくられています。テンプ受けに「グラスヒュッテより愛を込めて」とエングレービングされており、手作業で年間でも少量のみしかつくられないノモスの技術の粋を愉しめるモデルです。
5 【デザイナー✕グラスヒュッテ様式】Nomos Glashutte
ノモスの魅力やシリーズ、おすすめのモデルなどについてまとめました。モダンなデザインでミニマルな雰囲気のノモスですが、最近ではデザイナーとのコラボやグラスヒュッテ様式の技術の高さを活かしたモデルを多く発表しています。これからどう進化していくかが楽しみなブランドの一つです。もしノモスの時計を見かけたらぜひ一度手にとってみてください。