2024年1月30日
【受け継がれるスペインの伝統】ロエベの歴史について徹底解説!
ブランド
数あるハイブランドの中でも歴史の古いロエベ。知らない人はほとんどいないのではないでしょうか?
ロエベは170年以上の長い歴史を持つスペイン発祥のラグジュアリーブランドです。1846年に小さな皮革工房として誕生してから現在に至るまで、一貫して上質なレザーへのこだわりと類いないクラフトマンシップを常に持ち続けています。その精神は全てロエベの製品に込められています。上質な素材とモダンで上品なデザインは、さすが王室御用達ブランド。ロエベのアイテムをひとつ持つだけで気品を高めてくれます。
今回は、ロエベの創業から世界に知られるトップブランドへと成長するまでを詳しく解説していきます。ブランドを語る上では欠かせない歴代のデザイナーや定番のバッグについても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
1.ロエベの歴史
ロエベが常にクラフトマンシップや上質な革へのこだわりを持ち続けていられる理由は、ロエベの歴史を知ることで理解ができるでしょう。
第1章では、ロエベの歴史について詳しく解説していきます。
1-1.スペイン・マドリードの小さな皮革工房
ロエベのルーツは、1846年に数人のスペインの革職人によって開かれた皮革工房にあります。場所は皮革製品の大国であるスペイン・マドリード市内にあるロボ通り(現在のエチェラガイ)。当時は、バッグや財布、コインケース、たばこ、葉巻入れなどのレザー製品を取り扱っていました。この工房には、腕が確かな職人たちが集まっていたため、マドリードでの評判は高いものでした。
そして開業から26年後となる1872年、この工房の評判を聞いたドイツの革職人、エンリケ・ロエベ・レスベルグが見学に訪れます。彼は、この工房で働く職人たちの技術と扱っている革の品質の高さに感銘を受け、パートナーとして一緒に働きたいと申し出ます。エンリケ・ロエベは自身の「ロエベ」の名を冠にハウスを立ち上げ、工房で働くことになりました。
このような経緯から、ロエベの起源となる工房が開かれたのは1846年ですが、正式に「ロエベ」の名のブランドとして始まったのは1872年となるのです。
1-2.E.ロエベ.ブティックのオープン
1872年にエンリケ・ロエベが工房に加わってからは、今までのレザー製品に加え、椅子などの家具も制作するようになりました。その後エンリケ・ロエベは、マドリード市内のムンタニョラ家の子女と婚姻を結んだことを機に、資金援助を受けることに。「ロエベ」の工房が手がける製品は、どれも品質が良く、上質な素材を使っていて高級感があり、次第にマドリードの貴族や富裕層の間で評判となります。
1892年には、当時マドリード市内の流行の発信地であった、プリンシペ通りに店舗と併設した工房「E.ロエベ.ブティック」をオープン。まだこの頃のスペインでは、店内に商品を陳列して販売するスタイルが珍しく、ロエベブティックは人々の間で話題となりました。また、この頃からロエベの製品全てにLeather Goods Factory(レザーグッズファクトリー)のエンブレムが施されるようになりました。
現在のロエベのメインラインナップである、婦人用ハンドバッグの製作がスタートしたのもこの頃です。
1-3.品質が認められ王室御用達ブランドに
当時、ロエベに顧客のコンキスタ公爵夫人がいました。
スペインの公爵といえば、人数は150人程度しかいなく、貴族の中でも1番トップの階級になります。そのコンキスタ公爵夫人が、ロエベの製品をスペイン王室に紹介すると、高い品質と独創的なデザインのロエベ製品が王室から認められることに。
1905年、アルフォンソ13世から王室御用達の称号を授かったのです。これをきっかけに、アルフォンソ13世はロエベをかなり気に入ったようで、その後も王妃とブティックに何度も足を運んだようです。こうして、ロエベはすでに1900年代初頭には、スペイン国内での地位を確立していたのです。
1-4.目を引くショーウインドウが話題に
1910年以降、ロエベはスペイン国内での事業拡大を進めます。
1910年のバルセロナに2号店を出店したことをきっかけに、国内の主要都市に次々と店舗をオープンさせていきます。その中でも1939年、マドリードのグラン・ビア8番地にオープンした店舗の美しいショーウインドウが大きな話題となりました。
このブティックの建設には、有名建築家が携わり、角にある立地をうまく活かした高級感のある半円形のショーウインドウが、街を歩く人々を魅了しました。それ以降から、ロエベは新しい店舗の建設を建築家やデザイナーに任せるようになります。
それによって、ロエベはスペイン国内において、ファッショナブルでおしゃれなブランドというイメージを獲得することに成功したのです。
1-5.ロエベの海外進出
また、この頃のロエベは海外のハイブランドの販売権を獲得し、クリスチャン・ディオールやクロエなどのさまざまなブランドがロエベの店舗に置かれていました。
ロエベは、今でいう高級ブランドのセレクトショップのような立ち位置だったのです。後の1985年には、なんとルイ・ヴィトンの販売権も獲得しています。1949年には新たに主要工場を建設し、靴やトラベル用品、インテリア小物など商品ラインナップを広げました。
1950年代に入ると、国内のみならず世界各国のセレブがロエベの店舗に足を運ぶようになります。顧客リストの中には、モナコ王妃グレース・ケリーの名も記されていました。1960年代に入ってロエベはさらに海外へ目を向け事業拡大を目指します。1963年に海外1号店をロンドンのオールド・ボンド・ストリートににオープン。1965年にはウィメンズ・プレタポルテ事業を開始します。
そして1973年に日本の第1号店が三越日本橋本店にオープンしました。
1-6.ブランドの象徴となるアナグラムを発表
1975年にロエベを象徴するアイコン「アナグラム」が誕生します。
筆記体の4つのLを組み合わせたアナグラムは、スペインの画家ヴィンセント・ヴェラがデザインしたもので、現在もブランドを象徴するアイコンとして広く知られています。このアイコンは、ロエベの最高級レザーのクオリティマークであることを証明するものでもあります。
アナグラムの誕生から5年後の1975年、ロエベの象徴的なバッグ「アマソナ」を発表。アマソナは、発表から40年以上経った今も変わらず、ロエベで高い人気を誇るバッグです。1970年代は「アナグラム」と「アマソナ」というロエベにとって重要な2つのアイコンが生まれた年でした。この2つのアイコンをきっかけにロエベの世界からの認知度はますます高まったのです。
1-7.LVMHグループの傘下に
1996年、ロエベに大きな転機が訪れます。ロエベはLVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)に買収され、LVMHグループの傘下に入ることとなったのです。
※LVMHとは、ルイヴィトンを筆頭にディオール、ジバンシィ、フェンディなどといった有名ラグジュアリーブランドを含む世界最大のコングロマリット(複合企業)です。
その中にロエベも参入することとなり、さらなる飛躍を遂げていくこととなります。LVMHグループに入ったことで、今までは上流階級向けのブランドだったロエベが、もっと一般的な客層からも目を向けられるようになったのです。
また、立ち上げたものの本格的に起動していなかったプレタポルテに有名デザイナーを迎え入れるようになったことで改革が図れるようになりました。1998年からはナルシソ・ロドリゲス、2002年からはホセ・エンリケ・オナ・セルファがデザイナーに就任。
2008年にはスチュアート・ヴィヴァースがクリエイティブディレクターに就任し、プレタポルテ事業の売り上げも上昇し、業績は回復していきます。こうしてロエベは、レザーアイテムとプレタポルテの2つの事業を中心に展開を行なったのです。
1-8.新たなクリエイティブ・ディレクターの就任
2013年、新たなクリエイティブ・ディレクターが就任します。
その名は、今最も期待されているデザイナー、ジョナサン・アンダーソン。29歳という若さでロエベのトップデザイナーに抜擢されたのです。ジョナサンは、ロエベに就任してすぐに今までのロゴを刷新し、新生ロエベをスタートさせます。
ロエベの新たなロゴは、今までのLの文字が細くなり、よりシンプルですっきりしたデザインに。実はこの新たなデザインは、アナグラムを考案したスペインの画家ヴィンセント・ヴェラのデザインに近づけたものになります。
ジョナサンのモダンでトレンド感のあるデザインが、より幅広い年齢層に受け入れられるようになり、ロエベのアイテムはより若い人からも注目されるブランドとなりました。
1-9.クラフトプライズの設立
2016年にロエベ財団により、世界中のクリエイターを対象とし、芸術的で優れたハンドクラフトを表彰するための新しい賞、ロエベクラフトプライズが立ち上げられました。
現代のクラフトマンシップと、未来を切り開く才能にスポットライトを当て、表彰する機会をつくったのです。毎年1回開催され、審査員にはジョナサン・アンダーソンを始めとする世界的に有名なデザイナー、アーティスト、建築家、陶芸家、美術館のキュレーターなどといった顔ぶれが揃います。
2023年には日本人の稲崎栄利子さんが大賞を受賞。特別賞には同じく日本人の渡部萌さんとベナン共和国出身のドミニク・ジンクぺの作品が選ばれました。今のロエベは、単なるラグジュアリーブランドの立ち位置だけでなく、未来へつなぐ最高のクリエイターを輩出する場でもあるのです。
2.ロエベの歴代デザイナー
デザイナーによってブランド全体のイメージは大きく変わります。
ロエベは90年代後半からLVMHの傘下入りし、有名デザイナーを迎えるようになってプレタポルテ事業の売り上げも上昇しました。
この章では、ロエベの歴代デザイナーを紹介していきたいと思います。
2-1.ナルシソ・ロドリゲス(1998-2002)
ナルシソ・ロドリゲスは1961年生まれ、アメリカのニュージャーシー州の出身で、両親はキューバ人です。
ダナ・キャランやマーク・ジェイコブスなどの有名デザイナーを輩出したパーソンズ美術大学を卒業。ダナ・キャランのアシスタントになった後、カルバンクラインのレディースのデザインを担当しました。
1988年には、自身のブランド「NARCISO RODRIGUEZ」を設立。同じ年にロエベからのオファーを受け2002年までの4年間クリエイティブディレクターとして活躍しました。彼のデザインはアメリカンテイストをベースにヨーロッパのアーティスティックな面も持ち合わせているのが特徴です。
2-2.ホセ・エンリケ・オナ・セルファ(2002-2007)
ホセ・エンリケ・オナ・セルファは、1975年ベルギーのブリュッセル生まれ、両親はスペインのアンダルシア出身です。
ベルギーの国立ラ・カンブル視覚芸術高等専門学校でファッションを学び1999年に主席で卒業。在学中に知り合ったオリヴィエ・ティスケンスの創作活動で、パターンカッターやニットウェアデザイナーとして経験を積みます。
2000年には自身の会社「JE One Salfa」を設立。秋冬にショーを開くと高く評価されました。2002年秋冬からロエベのクリエイティブディレクターに就任。彼のデザインは、レザーファッションを中心に、エレガントで贅沢かつ、彼のルーツであるラテン系の情熱的なエネルギーの高さが製品に表れています。
2007年秋、2008年春夏コレクションを最後に、ロエベから離れます。
2-3.スチュアート・ヴィヴァース(2008-2013)
スチュアート・ヴィヴァースは、イギリス出身のファッションデザイナー。
ウェストミンスター大学を卒業後、ボッテガヴェネタ、カルバンクライン、ジバンシィといったハイブランドでキャリアを積み、マーク・ジェイコブスの下でルイ・ヴィトンのアクセサリーのデザインも手掛けるようになります。
2004年からは英国を代表するブランド、マルベリーのクリエイティブディレクターとして活躍。今までのキャリアを通じ、ルイ・ヴィトンなど他のブランドから優秀な人材をマルベリーに招き、強いデザインチームを結成。ブランドの拡大とイメージアップに大きく貢献しました。
2006年にはブリティッシュ・ファッション・アワードにて、アクセサリー・デザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞。その翌年2007年にロエベのクリエイティブディレクターに就任しました。
その年2007年に「ナッパアイレ」をリリースします。「アイレ」とはスペイン語で「空気」の意味。素材には柔らかくしなやかなナッパレザーを使い、バックルやリングなどの金具を一切使わずに超軽量化を実現したバッグです。
2009年に、パリでロエベでの初のランウェイを発表すると、独創的なアイディアとスタイルが好評を呼びました。2013年にロエベを退任し、現在はコーチのクリエイティブデザイナーを務めています。
2-4.ジョナサン・アンダーソン(2013-)
ジョナサン・アンダーソンは、1984年北アイルランド生まれのファッションデザイナーです。
アメリカの俳優学校を卒業したジョナサンは、演劇の道に進むためワシントンDCのスタジオシアターで働いていました。その間に、衣装デザインに関心を持つようになり、イギリスの名門ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(ロンドン芸術大学)で紳士服デザインの学位を取得。プラダのデザイナーの補佐を務めた後、ロンドンに移り、2008年の24歳の時に自身のブランド「J.W.ANDERSON」を立ち上げます。
立ち上げた当初はメンズラインのみでしたが、2010年にはレディースラインも展開。2012年にはブリティッシュ・ファッション・アワードで期待の新星としてエマージング・タレント・アワードを受賞。翌年2013年には、J.W.アンダーソンはLVMHによる少数持株会社となります。
同年2013年、29歳という異例の若さでロエベのクリエイティブ・ディレクターに就任。就任後は、ロエベのロゴを刷新し、次々とヒット商品を生み出し、ロエベの再構築を図ります。上質な素材とジョナサンのトレンド感のあるシンプルで上品なデザインによって、ロエベのアイテムはより幅広い年齢層に受け入れられるようになったのです。
3.ロエベの歴代人気バッグ
ロエベのバッグは、最高級の素材を使っていることはもちろん、それぞれに個性がありデザイン性に富んでいて魅力がいっぱい詰まっています。
ここから、ロエベで絶大な人気を誇るバッグラインを6つご紹介します。
3-1.アマソナ
ロエベといえばまず「アマソナ」を思い浮かべる人は多いでしょう。
1975年に誕生して以来、現在も変わらず愛され続けるロエベのアイコンバッグ、アマソナ。ギリシャ神話に登場する勇敢な女性「アマゾネス」から付けられた名前です。スクエアなフォルムに角部分は丸みを帯びたデザイン、そして控えめでも存在感ある上品なアナグラム。デザインは何度かリニューアルされていて、ロゴのサイズや場所に違いが見られます。
継ぎ目のない一枚の革仕立ては、ロエベの卓越した技術を持つ職人のなせる技。そしてなんと66のパーツを手作業で縫い合わせてつくられています。見た目は重厚でも、手に取ると軽くて持ちやすいことに誰もが驚くでしょう。持ち手の部分は太めにつくられていて重い荷物にも耐えられるように工夫されています。
サイズは4種類、カラー展開が豊富で、フォーマルやカジュアル、旅行などさまざまな場面で持つことができます。
3-2.フラメンコ
フラメンコは1984年に誕生したバッグで、個性的でクラシカルな雰囲気が漂うデザインです。スペインの伝統舞踊フラメンコで使うカスタネットからインスピレーションを受けて誕生しました。初登場から20年以上の時を経て2010年にスチュアート・ヴィヴァースが、その後、ジョナサン・アンダーソンによってリニューアルされ時代とともに進化してきました。
柔らかく上質な手触りのナパカーフの素材でつくられていて、とても軽くて使い勝手のいいバッグです。両サイドのノットを絞った時の巾着の形がとても印象的。サイズは5種類で1番大きいラージサイズ以外は、取り外し可能なストラップを調整するとハンドバッグやショルダーバッグとして、外すとクラッチバッグとして使えるようになっています。
3‐3.パズル
パズルバッグは、ジョナサン・アンダーソンがロエベのクリエイティブディレクターに就任して初めてデザインを手掛けたバッグで、2014年に発表されました。幾何学で独創的なデザインは、75枚のレザーパーツを組み合わせたまさにパズルのような構造です。
ジョナサンが日本の折り紙から着想を得てつくられたもので、バッグ自体が折り紙のようにフラットに折りたためるようになっています。ストラップは取り外しができ、ハンドバッグやショルダーバッグ、斜め掛け、ボディバッグ、クラッチバッグの5通りの持ち方ができます。
2023年には新たにパズルトートも発表され、パズルラインでの選択の幅がより広がりました。素材にはシャイニーカーフという革を使っていて上品なツヤ感が特徴です。
3-4.ハンモック
2016年春夏パリファッションショーで初登場したハンモックは、他にない存在感を放ち、発売当初から人気でロエベの新しいアイコンバッグとも言えます。名前のとおり、ゆらゆらと揺れる柔軟なハンモックから着想を得て生まれたバッグです。人気の秘密は、このバッグの多様性なデザインにあります。
マチ部分を外側に出したり内側に織り込むことでフォルムを自在に変えることができ、全く違った印象に。サイドの仕様がファスナータイプのものとドローストリングタイプの2種類あり、同じハンモックでも少しずつ違う顔が見られます。
3-5.ゴヤ
2021年に発表された「ゴヤ」は、ジュエリーのような高級感のあるバッグ。シルクカーフの上質な素材が使われ、スクエア型をベースにした丸みを帯びた形がエレガントな雰囲気を印象づけます。
大きさはミニ、ミディアム、スモールの3サイズで展開。カラーは定番のブラック、タンの他、アボカドグリーン、ソフトホワイト、イエロー、レッドなどバリエーションが豊富です。一番小さなミニサイズは、ショルダーストラップを外してクラッチバッグとしても使えます。バッグの他にゴヤのカードホルダーもコンパクトなサイズ感が魅力的で人気のアイテムです。
3-6.パセオ
パセオは2023年にスチュアート・ヴィヴァースの「アイレ」バッグから着想を得て生まれた新しいコレクションです。パセオはスペイン語で散歩を意味します。特殊な縫製法で生み出された「ひだ」のシルエットが美しく、無駄のないシンプルなデザインが特徴。
両端のコイル状の結び目は、「フラメンコ」バッグから引用されたものです。サイズは3展開、持ち手はゴールドのドーナツチェーンのタイプやトートバッグ型の5型をラインナップに、カラーはブラック、ダークバター、アップルグリーンなど全11色揃っています。
4.ロエベと日本の関係
2013年にロエベのクリエイティブ・ディレクターに就任したジョナサン・アンダーソンはかなりの日本通であることでも知られています。
第3章の「ロエベの歴代人気バッグ」でも紹介した通り、ジョナサン・アンダーソンのロエベ就任後に初めて手掛けたパズルバッグは、日本の折り紙から着想を得て生まれたものです。
ロエベクラフトプライズでも多くの日本人クリエイターが参加し、ここ数年でロエベと日本の関係はより密接したものとなっています。
この章では、ロエベと日本の関係について解説していきたいと思います。
4-1.日本での第1号店
ロエベが日本で初めて店舗を構えたのは1973年のこと。1960年代に海外進出を始め、1963年ロンドンに海外1号店を出してから10年後、日本橋三越本店に日本での1号店をオープンしました。
2023年には日本展開50周年を祝して「TOKYO 1973」コレクションを限定販売。「TOKYO 1973」はロエベの人気バッグのパズル、ハンモック、アマソナ23をベースにした全5型で、「TOKYO 1973」「MADRID 1846」をジャカードストラップに織り込みました。カラーは限定色でロエベらしい上品な色合いのオニキスブルーとアッシュグレーの2色。
特別展では、2023年の干支であった卯にちなんでウサギをモチーフにしたバニーバッグをはじめ、ハンモックナゲット、Tシャツ、スウェットシャツなどが登場。50周年記念キャンペーンのテーマを「仮装大賞」と「桜」とし、日本での半世紀の歩みを年明けから盛大に祝福しました。
4-2.日本国内最大の店舗カサロエベ表参道
日本国内での最大店舗は、2004年にオープンしたカサロエベ表参道です。
日本1号店の50周年と同じ年2023年11月にリニューアルオープンしました。
店舗面積466平方メートル、3フロアからなるカサロエベ表参道には、地下1階に「LOEWE ReCraft(ロエベ リクラフト)」を置き、ロエベの革職人がレザーグッズの修理・メンテナンスを行います。
アートコレクターの邸宅をイメージした店内には、パブロ・ピカソやアンセア・ハミルトンなど世界的に著名なアーティスト、また、ロエベクラフトプライズのファイナリストに選ばれた四代目辺竹雲斎などの作品が展示されています。
外壁は、カサロエベ表参道のためにつくられたスペイン製の1万1700枚のシルバータイルで覆われています。ファサードに表参道のけやき並木が映り込み、自然とのつながりを感じられるデザインになっていて通りを歩く人たちを立ち止まらせます。
4-3.ジブリとのコラボレーション
2021年1月にジブリ「となりのトトロ」とのコラボレーション発表に、驚いた人も多かったでしょう。
職人の手仕事を大切にしてきたロエベと、スタジオジブリの伝統的なアニメーションづくりのクラフトマンシップに対する共通する理念が、このコラボを実現させました。2021年10月にロエベ財団は「三鷹の森ジブリ美術館」を運営する「徳間記念アニメーション文化財団」と3年間のスポンサーシップ契約を締結したことを発表しました。
この契約は、コロナ禍で休館を余儀なくされ、その後も来館者が減ってしまったジブリ美術館をロエベがサポートするためのものでした。2022年の1月には、コラボ第2弾「千と千尋の神隠し」が始まりました。
主人公の千尋はもちろん、ハクや湯婆婆、カオナシ、ススワタリなどの個性あふれるキャラクターたちがロエベのアイテムになって登場。カオナシを大胆にあしらったブラックのハンモックバッグは、かなりのインパクトです。世界中で人気の高い「千と千尋の神隠し」とのコラボは、注目度が高くSNSなどでも話題を呼びました。
そして2023年の最後となるコラボは「ハウルの動く城」でした。主人公のソフィーやハウル、炎の悪魔カルシファーやマルクル、荒地の魔女などのキャラクターがロエベのレザー製品やウェアになって現れました。また、ハウルの城自体が世界22個限定のスペシャルバッグになって登場。
契約期間が終わり、ジブリとのコラボは終了してしまいましたが、ジブリファン、ロエベファンからまたコラボしてほしいとの声が絶えません。
4-4.陶芸制作ユニット「スナフジタ」とのコラボ
「スナ・フジタ」は京都を拠点とするアーティスト、藤田匠平と山野千里による陶芸制作ユニットです。2023年11月にロエベは「ロエベ×スナ・フジタ」コラボコレクションを公開しました。
スナ・フジタのアート作品は、動物や自然の景色からインスピレーションを得て、イマジネーションや子供の頃の思い出、息子や愛犬との日々の暮らしから生まれたものです。彼らの緻密なタッチで、陶磁器に手描きされていきます。
ロエベとのコラボでは、ハンモックやパズルなどのアイコンバッグや財布、スリッパ、アクセサリーなどに素朴で愛らしいキャラクターたちが表現されています。また、カサロエベ表参道のリニューアルオープン記念として販売された期間限定クッキーやチョコレートなどのスイーツは、大盛況に終わりました。
「ロエベ×スナ・フジタ」の売り上げの一部は、世界中の子どもたちに安全で保護された学習環境を保証するための「セーブ・ザ・チルドレン」に寄付されます。
5.まとめ
いかがだったでしょうか?
今回はロエベの170年以上にわたる長い歴史から、歴代デザイナー、人気バッグ、日本との関係について解説させていただきました。
小さな皮革工房から始まり、王室御用達ブランド、ショーウィンドウの先駆け、スペイン国内での確立、そして世界へ進出しトップブランドへと成長。ロエベは常に時代の先を見て歩み続けてきました。
ロエベの強みは、厳選された最高級の素材と妥協を許さない職人の高い技術にあります。それはこの先、何があっても受け継がれていくことでしょう。
今後もロエベの活躍には注目していきたいですね。