2025年7月31日
エメラルドの本物と偽物の見分け方|色・ランク・合成エメラルドの価値も紹介!

エメラルドの本物と偽物の見分け方をご存じですか?
美しいグリーンと高い希少性で知られるエメラルドは、ダイヤモンド・ルビー・サファイアと並ぶ世界四大宝石のひとつです。その輝きに魅了される人も多い一方、近年では偽物や処理石が流通しているケースもあり、注意が必要です。
この記事では、エメラルドの真贋を見分けるための基本的な知識を紹介します。紫外線ライトやカラーフィルターを使った見分け方、よくある偽物の特徴、含浸処理などの加工についても詳しく解説。また、色のランクやノンオイルエメラルドといった上級者向けの情報もわかりやすくお届けします。
1.エメラルドの本物と偽物の見分け方

エメラルドは知名度も人気も高い宝石でありながら、流通量が限られているため、本物を手に入れようとすると非常に高価になります。そんな希少性の高さゆえに、残念ながら市場には偽物も多く出回っています。
「絶対に偽物のエメラルドは買いたくない!」という方は、まず信頼できるショップで購入するのが一番安心です。老舗の宝石店や有名ブランドなら、確実に本物を取り扱っています。ただし、それなりの価格になるため、なかなか気軽には手が出せないのも事実です。ショップに入ることすらためらってしまう方もいるかもしれません。
一方で、ふと立ち寄った店舗やオンラインショップで、素敵なエメラルドに出会うこともあります。そんなとき、自分でその石が本物かどうかを見極められたら安心ですよね。そこでここでは、エメラルドが本物かどうかを見分けるための基本的な方法を3つご紹介します。紫外線ライトやカラーフィルターなど、必要な道具についてもあわせて解説していきます。
1-1.見分け方①:紫外線ライトを当てる
エメラルドが本物かどうかを見分ける方法のひとつが、「紫外線ライトを当ててみる」ことです。あまり聞きなじみのない道具かもしれませんが、宝石の鑑別にはよく使われています。ジュエリーに興味がある方や、これから宝石を集めたいと考えている方は、ひとつ持っておくのもおすすめです。
紫外線ライトには「長波紫外線」と「短波紫外線」の2種類がありますが、エメラルドの見分けに使うのは長波タイプ。ブラックライトとも呼ばれ、通販などでは1,000円前後で購入できる手頃なアイテムです。購入時には「長波紫外線ライト」であることを必ず確認しましょう。
このライトをエメラルドに当てると、以下のような3種類の反応が見られます。
①:鮮やかな赤に光る: 合成エメラルドなどの偽物である可能性が高いです。
②:暗い赤に光る: 本物の天然石の可能性もありますが、合成石のこともあるため要注意。
③:イエローグリーンに光る、または変化なし: この場合も真贋の判別は難しく、次のステップが必要です。
②や③の反応が出た場合は、カラーフィルターという別の道具を使ってさらに確認するのが有効です。
1-2.見分け方②:カラーフィルターを使用する
紫外線ライトだけでは真贋の判断が難しい場合は、「カラーフィルター」を使って確認してみましょう。
カラーフィルターは、赤色とイエローグリーンの波長だけを透過させる道具です。中でも特に信頼されているのが「チェルシーカラーフィルター」。もともとエメラルドを見分けるために開発されたもので、「エメラルドフィルター」とも呼ばれています。見た目は小さなルーペのようで、持ち運びにも便利。価格は3,000~5,000円前後と比較的手が届きやすいのも魅力です。
このフィルターを通してエメラルドを観察すると、以下の3パターンの反応が見られます。
①:鮮やかな赤に見える: 合成エメラルドの可能性が高いため、購入前なら避けたほうが安心です。
②:暗めの赤やオレンジに見える: 天然エメラルドである可能性が高いと考えられます。
③:色の変化が見られない: この場合、グリーントルマリンやペリドット、または緑色のガラスなど、エメラルド以外の石の可能性があります。
この見分け方は、エメラルドに含まれる「クロム」が赤く反応する特性を利用した方法です。ただし、クロムの含有量には個体差があるため、100%確実な判別法ではない点には注意が必要です。
1-3.見分け方③:エメラルドの『傷』に注目する
それでも分からない場合、もしくは紫外線ライトやカラーフィルターを用意できない場合にはエメラルドの「傷」に注目してください。この方法は肉眼でも可能ですが、ルーペや虫眼鏡などの拡大鏡があるとより良いでしょう。
エメラルドは数ある宝石のなかでも「傷の無い物はない」と言われるほど、傷や内部の異物が入りやすい石です。ほとんどの市場に流通するエメラルドは、内部もしくは外部になんらかの傷や異物があります。なんの傷もないエメラルドは10万個に1個と言われていますから、ほぼないと考えていいでしょう。
エメラルド外部の傷や内部のさまざまな異物は、小さな点や傷のように見えると思いますので、よく見て探してみてください。
もし異物がまったくない場合は、ほとんどの場合天然のエメラルドではありません。もちろんほとんど傷・異物がないエメラルドも、ごくわずかにではありますが存在します。ですがそのようなエメラルドは数十万円、数百万円といった高値がつけられるのが普通です。お手頃な値段できれいな、きれいすぎるエメラルドはほぼ偽物と考えていいでしょう。
2.本物のエメラルドの特徴

出典:GIA
エメラルドの本物と偽物の見分け方をご紹介しましたが、さらに本物のエメラルドの特徴を知っておけば、偽物を見た時に「あれ?おかしいな?」と感じることができるでしょう。
偽物を見た時の違和感に気付けるようになるためにも、本物のエメラルドの特徴を覚えておいてください。
またよく知られているグリーンでキラキラと光るエメラルド以外にも、実は個性的な特徴を持つものがエメラルドにはあります。それらのエメラルドはあまり有名ではないので、一見して「偽物だ!」と思ってしまうかもしれません。ですが、珍しい本物のエメラルドの場合もあります。そのような誤解をしないためにも、本物のエメラルドの特徴と、珍しい種類のエメラルドをご紹介しておきますね。
2-1.ほとんどのエメラルドには傷がある
前の項でも解説したように、ほとんどのエメラルドには傷や異物があります。
ほとんどの宝石は、自然の中で長い時間をかけてできあがるまでに、周囲の環境がさまざまに変化します。その影響を受けて、内部に異物を含むことがあるのです。そういった異物は、インクルージョンと呼ばれます。
エメラルドのインクルージョンは、他の鉱物や気泡などさまざまです。ジュエリーに加工する時には、できるだけインクルージョンが見えないようにカットしたりセッティングしたりするので、一見するとあまり目立たないかもしれません。ですがインクルージョンがまったくないエメラルドはほとんどなく、あったとしても桁違いの価格になりショップにはあまり流通しないので、あまり目にすることはないでしょう。ほとんどの消費者が手に取ることができるエメラルドには必ず傷がある、と思っていて間違いありません。
2-2.加工されている物が多い
宝石はさまざまな理由で加工が施されます。石自体に加工が施されるかどうか、またどのような種類の加工かは、石の特徴や個性によってことなりますが、特にエメラルドは何らかの加工が施されることが多い宝石です。
エメラルドに施される加工で多いのは、「染色」と「含浸」という加工です。どのような加工なのか、詳しく見ていきましょう。
2-2-1.よくある加工①:染色
エメラルドに施されることが多い加工、1つめは「染色」です。染色とはそのまま、石を人間の望む色に染めることをいいます。
天然石は自然の中でできあがるので、ひとつとして同じ色はありません。その中には人間が望むような色ではない宝石も、たくさんあります。色が薄かったり、好まれる色合いから少し外れていたりする宝石は少なくありません。
エメラルドだけでなく一般に宝石は、色が鮮やかで濃いほうが品質が良いとされます。そのため、宝石の色を人の手によって変えてしまうことがあるのです。
採掘された時に色が薄かったり、色ムラがあって品質が良くないと判断された石は、染色され見た目を整えられます。この処理はそう珍しいものではなく、エメラルド以外にもルビーや珊瑚、ターコイズなどでよく施される加工です。
2-2-2.よくある加工②:含浸
エメラルドは「含浸」という処理を施されることもよくあります。
含浸とは、内部の傷にオイルや樹脂などを流し込む加工です。エメラルドには傷が多いという特徴があります。そしてその傷から石が割れたり、欠けたりしてしまうこともよくあるのです。また、内部に傷があると見た目も美しくありません。そのため、見た目を整える、石の強度を上げるという目的のために含浸処理が施されます。
エメラルドに補充されるのはオイルや樹脂、ワックス、接着剤などさまざまで、また石の状態によってその量も異なります。
エメラルドは傷の多い宝石なので、オイル含浸は採掘されたほとんどのエメラルドに施されます。むしろオイル含浸しないエメラルドのほうが珍しいくらいです。
2-3.個性が美しいエメラルド
エメラルドというと、キラキラと輝くグリーンの石をイメージしますよね。ですが実はその他にも、エメラルドには珍しい見た目をした物もあります。
この項では、エメラルドキャッツアイとトラピッチェエメラルドという2種類のエメラルドをご紹介します。ショップなどで目にする機会はあまりないかもしれませんが、とても個性的で存在感のあるエメラルドですよ。もし見かけたら、ラッキーかもしれません。
2-3-1.エメラルドキャッツアイ
珍しいエメラルドの種類、1つ目はエメラルドキャッツアイです。
キャッツアイとは、宝石内部の細かい異物が一直線に並び、光に反射して白い筋のように見える物のことで、光の筋が猫の目の瞳孔のように細く縦長に見えることからこの名前がつきました。
キャッツアイはさまざまな種類の宝石に見られる効果です。有名なものだと2月の誕生石であるクリソベリルキャッツアイや、アレキサンドライトキャッツアイ、オパールキャッツアイなどがあります。エメラルドは透明度の高い宝石ですが、キャッツアイを含むエメラルドはインクルージョンを多く含んでいるため、半透明から不透明の石が多いです。
また、エメラルドキャッツアイは、カットも通常のエメラルドとは異なります。エメラルドによく施されるのはエメラルドカットという平面的なカットですが、エメラルドキャッツアイは光の筋をより美しく見せるため、ドーム状のカボションカットが施されることが多いです。
2-3-2.トラピッチェエメラルド
トラピッチェとは、スペイン語で「歯車」という意味です。歯車のように中心から6方向に黒や茶色の線が伸びているエメラルドを、トラピッチェエメラルドと言います。
エメラルドキャッツアイの白い線は内部のインクルージョンが光に反射していますが、トラピッチェエメラルドの黒い線は、黒いインクルージョンがそのまま歯車の線のようになっています。中心に6角形があり、そこから6方向に線が伸びているものもあれば、中心の6角形はなく線が交差しているものなど、見た目はさまざまです。名前通り歯車のように見えるものも、花のようなかわいらしい形に見えるものもあります。
トラピッチェエメラルドは、エメラルド全体の1%ほどしか産出されません。しかもジュエリーに加工されるような品質の良いトラピッチェエメラルドとなると、それよりさらに希少です。もし目にする機会があれば、とてもラッキーなことと言えるでしょう。
3.偽物のエメラルドの種類
本物のエメラルドについてご説明した後は、偽物のエメラルドについてです。
「エメラルドの偽物」と言っても、その種類は1つではありません。さまざまなものが、エメラルドの偽物と呼ばれます。その中にはガラスなどで作られた、まるっきりの偽物もあれば、ただエメラルドに見た目が似ているというだけで偽物にされてしまう別の種類の天然石などもあります。中には偽物だから価値がないと切り捨てるにはもったいないような石もあるのです。
この項では偽物のエメラルド・3種類とその特徴について詳しく見ていきます。
3-1.①合成エメラルド
合成エメラルドは、希少で高価な天然エメラルドの代替品として人の手によって作られた人工宝石です。化学的な組成は天然エメラルドと同じですが、成長過程や外見においては大きな違いがあります。一言で言えば、「個性のある天然エメラルド」と「均一な合成エメラルド」です。
合成エメラルドは、天然に比べてインクルージョン(内包物)が非常に少ないか、一定のパターンに限られているのが特徴です。また、色ムラもほとんどなく、全体的に均一で美しい色をしています。
一方、天然のエメラルドは自然の中で長い時間をかけて形成されるため、傷や色ムラといった“個性”があるのが普通です。そのため、完璧すぎる見た目のエメラルドには注意が必要です。
合成エメラルドは価格が抑えられているため、「天然にこだわらない」「見た目がきれいで手ごろな価格のものがほしい」という理由で、あえて選ぶ人も増えています。ただし、価値としては天然石には及びません。
問題は、それを「天然」と偽って販売する業者がいること。購入する際には、鑑別書の有無やショップの信頼性をしっかり確認しましょう。
3-2.②他の種類の宝石
合成エメラルドとは違い、エメラルドに似ているというだけの種類の違う天然石が、エメラルドの偽物にされていることもあります。エメラルドはとても高価な宝石なので、他の種類の天然石をエメラルドとして売ってしまうような悪質な業者がいるのです。
よく偽物のエメラルドになっているのは、グリーンガーネットなど鮮やかなグリーンで、エメラルドよりも産出量が多い天然石です。エメラルドカットされたグリーンの宝石を見たら、多くの人がエメラルドに違いないと思うでしょう。その先入観を狙っているのかもしれません。
「本物の宝石=本物のエメラルド」ではないということを覚えておきましょう。
3-3.③ガラスなどで作られたイミテーション
偽物のエメラルドとして、ガラスや人工樹脂などで作られたイミテーションが売られていることもあります。これは合成石でも天然石でもない、まったくの偽物です。
ガラスで作られているようなものだったら、さすがに見ればわかると思うかもしれませんね。ですが現在は技術が発達していて、宝石に詳しくない人が少し見ただけではわからないような、精巧なイミテーションがたくさんあります。
ですが、イミテーションの場合は前の項で述べたエメラルドの見分け方を用いれば、はっきりと判別することができます。冷静になってよく見ればエメラルドかどうかわかりますので、焦らずによく見て判断してくださいね。
4.合成エメラルドや偽物の価値・値段
偽物のエメラルドをうっかり購入してしまった場合、その石に価値があるのか気になる方も多いでしょう。結論から言うと、合成エメラルドやイミテーションには資産価値はほとんどなく、買取価格もつかないケースが大半です。特にガラスなどで作られた模造品は、売却しても値段がつかないことがほとんどです。
とはいえ、見た目が美しくジュエリーとして楽しめるのは確か。天然にこだわらず気軽に使いたい方には、普段使いのアクセサリーとして活用するのもひとつの選択です。仮に他の天然石だった場合も、エメラルドではないと割り切れば、その美しさを前向きに楽しめるかもしれません。
5.【FAQ】エメラルドに関するよくある質問
最後に、エメラルドのよくある質問にお答えします。
素敵なジュエリーを見つけたから即購入するというのも、絶対に間違いというわけではありません。ですが、エメラルドについてあまり知らないうちに購入してしまうと、「やっぱり別の物にしたほうが良かったかな?」と悩んだり後悔したりする原因にもなりかねません。
スッキリした気持ちで納得できる買い物ができるよう、購入する前に気になる事は解決しておきましょう。
5-1.エメラルドは色でランクが決まるって本当?
はい、本当です。エメラルドの価値は色・透明度・カット・大きさなどで判断されますが、なかでも最も重要なのが「色」です。
高品質とされるのは、鮮やかで濃く、ムラのないグリーンのエメラルド。特にコロンビア産のムゾー鉱山で採れるエメラルドは、色の深みとやわらかさが両立しており、世界的にも高い評価を受けています。次いでジンバブエのサンダワナ産も人気があります。
透明度については、インクルージョンが少ないものが望ましいとされますが、エメラルドは傷が多い宝石のため、ある程度の内包物は自然なものです。
また、エメラルド専用に考案された「エメラルドカット」は、その色を美しく見せるための工夫のひとつ。大きさや産地、地金やブランドも含めて、総合的に価値が決まることを覚えておきましょう。
5-2.エメラルドの原石には価値がある?
宝石といえば、照明に照らされたジュエリーショップのショーケースに並ぶ、輝く宝石を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし宝石の魅力は、それだけではありません。
実はエメラルドには、カットや研磨をされる前の「原石」の状態にも独特の美しさがあります。ミネラルショーや鉱物専門店では、採掘されたままの個性豊かな原石を見ることができます。ジュエリーとは異なる、自然が生み出した造形美に魅了される方も少なくありません。
ただし、エメラルドの原石には一般的に資産価値はほとんどなく、買取店でも値段がつかないことが多いです。一部のコレクター向けショップを除けば、売却は難しいと考えておくのが無難です。
それでも気に入った原石を手に入れられたなら、それは唯一無二の宝物になるかもしれません。
5-3.ノンオイルのエメラルドって何?
エメラルドは傷や内包物が多い宝石のため、ほとんどの石に「オイル含浸」と呼ばれる処理が施されています。これは、エメラルドの内部にオイルを浸透させることで見た目を美しくし、割れや欠けを防ぐための加工です。一般的な処理とされており、価値を大きく下げるものではありません。
ただし、オイルは時間の経過とともに蒸発や漏れが起きるため、定期的なメンテナンスが必要です。
そんな中で、極めてまれに「ノンオイル」のエメラルドが存在します。これは、処理を施さなくても美しさを保てる高品質な石で、経年劣化の心配も少なく非常に価値が高いとされています。
ただし注意したいのは、見た目ではノンオイルかどうか判別できないという点です。信頼できる鑑別書に「ノンオイル」と明記されているもの以外は、うのみにしないよう注意が必要です。
6.まとめ
今回はエメラルドの本物と偽物の見分け方、代表的な偽物の種類や特徴、よくある質問について解説しました。見分け方としては、紫外線ライトやカラーフィルターを使った方法のほか、肉眼やルーペでインクルージョンの有無を確認するのも有効です。不自然なほど透明だったり、傷が全くない石は注意が必要です。
偽物には、成分は同じでも人工的に作られた合成エメラルドや、ガラス・他の天然石を使ったイミテーションなどがあり、それぞれ価値は大きく異なります。
確実に見分けるには鑑別機関に依頼するのが一番ですが、現実的には「信頼できるショップを選ぶこと」と「納得するまで購入を決めないこと」が何より大切です。大切な買い物だからこそ、じっくり選ぶことをおすすめします。