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【イタリアで不動の人気】エベラールとは?歴史や魅力を徹底解説

エベラールという時計ブランドをご存知でしょうか。時計愛好家の中にはクロノ4を見たことがある方がいらっしゃるかもしれません。エベラールはクロノグラフで有名になり、クロノグラフをアイコンにしているブランドで、横一列にインダイヤルを並べた特徴的なデザインは強烈な印象を見る人に与えます。また、イタリアで人気というのも珍しいので、変わったブランドとして知られているかもしれません。この記事ではエベラールの歴史、魅力、イタリアで人気の理由、代表シリーズ、人気モデルについてまとめます。 1.エベラールの歴史 出典:EBERHARD 1-1.1887年スイス・ラ・ショー・ド・フォンにてジョージ・エベラールによって創業 1887年にスイス・ラ・ショー・ド・フォンでジョージ・エベラールによって創業しました。1894年特許を取得した時刻設定システムを搭載した懐中時計を発明しました。1905年にはデジタル表示を応用した革新的な時刻表示システムを搭載したモデルを発明し、特許を取得しました。彼は10世紀からベルンで時計作りに携わってきた一族の出身で、高い技術で新しいシステムをどんどん開発していく技術屋でした。 1919年息子のジョルジュとモーリスが経営を引き継ぎ、1926年には完全に引継ぎが完了しています。引継ぎ始めと同年の1919年、初の腕時計型クロノグラフの発表。エベラールはクロノグラフを軸に新しい機構を開発していきます。1935年にリセットなしのスタート&ストップ機能を搭載したダブルプッシャークロノグラフモデルを発表しました。1938年に初の12時間積算計付きのクロノグラフ、1939年に2つの異なるラップタイムを計測できるスプリットセコンドクロノグラフモデルを発表しました。 1-2.1930年イタリア海軍将校用の時計に採用される 1930年代にイタリア海軍将校の公式時計として採用されたことからエベラールの評判は高くなっていきます。当時最も偉いのは軍人で、中でも海軍の地位が高かったと言われています。海軍将校が着けている時計として、イタリアのエグゼクティブの間でエベラール時計の評判が広まっていきました。イタリア空軍の最も有名な曲芸飛行部隊フレッチェ・トリコローリの公式時計としても採用されました。 1940年にスライディングプッシュボタン付きのエクストラフォルトを発表。1950年代には旗艦モデルとなり、後のエベラールのクロノグラフ全体へ影響を与えました。1959年にはスプリットセコンドクロノグラフのエクストラフォルトを発表。1960年にはコントグラフを発表。6時位置の日付表示と20、40、60と3つのセクターが記されたインダイヤルが特徴的です。 1970年エベラールもクオーツ時計Model-O-Quartzを発表。歴史を汲みつつ新たなトレンドに乗ることも忘れないチャレンジ精神を兼ね備えていることがわかります。 1-3.創業100年を超えてもなお新作を発表し続ける クオーツショックで時計業界が揺らぐ中、エベラールは機械式クロノグラフを再デビューさせました。時代の流れに逆らうように見えて、実は多くのブランドが機械式時計の魅力を再認識できる複雑系などのモデルが多く発表された時期です。エベラールは時代の風向きを読み取るのが上手なブランドでした。 1987年、創業100周年記念としてネイビーマスターコレクションを発表。エベラールはETAムーブメントにこだわっており、ETA7751を使用した曜日・月・ポインターデイト・クロノグラフを搭載したモデルとなっています。ちなみに、トラベルセトロのビトレというモデルにはリューズが反対側に着けられたレフティモデルも存在します。その後の1992年、生誕100周年記念として伝説のイタリア人レーサーにインスピレーションを得たタツィオ・ヌヴォラーリモデルを発表。 1996年トレンドを先取りした大型モデルのトラベルセトロを発表。後にファッションアイコンとして知られるジャンニ・アニエリが愛したモデルとしてイタリア国内で瞬く間に表案が広まります。1997年1.5mもの2本のぜんまいを搭載した8ジュールを発表し、2000年に1950年代に一世を風靡したエクストラフォルトを復刻しました。 2001年にエベラールの代表作ともいわれるクロノ4を発表。インダイヤルを一列に並べた革新的なデザインは、エベラールで最も有名なモデルと言われています。2003年にタツィオ・ヌヴォラーリシリーズに彼が勝利した有名なレースヴァンダービルトカップにちなんだ新作を追加。2004年にトノーケースで縦一列にインダイヤルを並べたクロノ4テメラリオを発表。 2007年に創業120周年記念としてクロノグラフ120周年記念モデルを発表。2008年にクロノ4にビッグサイズを意味するグランタイユを追加。2011年にエクストラフォルトにグランタイユを追加。2016年に1950年代に発表されたスカフォグラフを現代的に解釈し復刻。2018年にタツィオ・ヌヴォラーリにレジェンドモデルを追加。2019年ブランドの創立記念日に敬意を表し、手巻きモデル1887を発表。2021年には創業135周年記念としてトラベルセトロの限定モデルやスカフォグラフの限定モデルなど、多くの新作を発表しています。 2.エベラールの魅力 出典:EBERHARD 2-1.独立経営を継続していることで世界観にブレがない エベラールは家族経営を継続し、独立運営できているブランドです。1980年代以降の時計業界の買収・変革で多くのブランドが4大グループの何処かへ買収されてしまいました。1970年のクオーツショックにより経営難に陥ったブランドの多くは、廃業もしくは資金を求め経営権を手放さざるを得なかったのです。 買収されたブランドの一部ではグループ内のバランスのために、既存の流れを汲まない商品展開を行ったり、価格帯を大きく変えたりとそれまでのファンを置き去りにしてしまうこともありました。結果、販売が低迷し経営権を手放されてしまうブランドもあります。 エベラールは買収されることなく独立運営できているブランドです。クオーツショックに耐えるために相当な苦労があったはずですが、そのおかげでエベラールの時計は創業当時から独立経営を続けてきており、世界観がブレずにいるのです。クオーツショックだけでなく様々なトラブルにより経営権を手放すブランドもありますが、独立経営を続けているブランドは多くありません。エベラールがブレない世界観を貫き、昔からのファンを大事にしているブランドであることがわかります。 2-2.インダイヤルを4つ直列した唯一無二のデザインをもつクロノ4が人気 2001年に発表したクロノ4はエベラールのアイコン的存在となっています。当時CEOだったパルミロ・モンティが発案したデザインで、横一列に並んだインダイヤルが特徴です。エベラールが多くの顧客をもつイタリア人の間で人気のレーシングカーのダッシュボードに着想を得たもので、特許を取得しています。 クロノ4はサイズバリエーションやカラーバリエーションを多く発表しており、クロノ4、グランタイユ、ジェアンとケースサイズが大きくなっていっています。中でもテメラリオはトノーケースを採用し、縦に4つのインダイヤルを並べたデザインは唯一無二の人気となっています。 2-3.イタリアで絶大な人気を誇り、生産の8割が販売される エベラールはイタリアで高い人気を誇るブランドで、生産数の8割がイタリアで販売される圧倒的なシェアをもっています。イタリアで人気となったのは海軍将校に採用されたことで、エグゼクティブ層の間でステータス性の評価が高まったことが始まりです。 後にイタリアエグゼクティブ層の憧れであるジャンニ・アニエリが好んで着けたことやイタリアで伝説のレーサーとして有名なタツィオ・ヌヴォラーリとのパートナーシップなど、イタリアのキーパーソンに愛されていることが人気の秘訣といえるでしょう。 3.エベラールがイタリアで人気の理由 出典:EBERHARD 3-1.海軍将校に採用され、フレッチェ・トリコローリ公式時計になっている エベラールの時計が人気になったのは1930年に海軍将校に採用されたことがきっかけでした。当時は軍人が最も偉かったため、彼らが着けている時計にイタリアのエグゼクティブ層が憧れ、富裕層を中心に広がっていきました。 海軍将校への採用がパイプを生んだのか、1984年には最も有名な曲技飛行チームフレッチェ・トリコローリとの共同開発モデルを発表。フレッチェ・トリコローリは公式時計の選定コンテストを行っており、ブライトリング社のクロノマットも採用されています。既存モデルのモディファイで臨むブランドが多かったところ、完全に新規で開発を行ったことが功を奏し採用にいたったとされています。 3-2.フィアット元名誉会長のジャンニ・アニエリがこよなく愛した時計で知られている フィアットの元名誉会長ジャンニ・アニエリはイタリアのエグゼクティブ層の憧れであり、ファッションアイコンでした。エベラールは彼がこよなく愛した時計で、金属アレルギーだったためオンザカフス(シャツの上から腕時計を着けるスタイル)で注目を浴びました。 彼が愛用したと言われているのはトラベルセトロで、シンプルでクラシックな佇まいが彼のファッションともよくマッチしていました。トラベルセトロの開発は当時のトレンドに反する大型時計でしたが、ファッションアイコンとして知られていた彼の着用によってトラベルセトロは大ヒットしたと言われています。 3-3.伝説のレーサー「タツィオ・ヌヴォラーリ」とのパートナーシップ イタリアで伝説となっているレーサー「タツィオ・ヌヴォラーリ」は機材トラブルや怪我など逆境で力を発揮するレーサーでした。ドリフト走法の生みの親とも言われており、当時スペックの低かったアルファロメオ製のレースカーで勝ち続けたと言われています。大柄なドライバーが多かった中で162cmと体格差を覆すなど、ただ技術が高いドライバーとは一線を画す存在でした。 エベラールはヌヴォラーリグランプリのメインスポンサーとなっており、タツィオ・ヌヴォラーリの精神力や類まれなテクニックをたたえ、タツィオ・ヌヴォラーリモデルをシリーズ化しています。現在でも人気シリーズとなっており、彼の伝説がエベラールの時計とともに語られ続けています。タツィオ・ヌヴォラーリとのパートナーシップはエベラールがイタリアで高い人気を獲得した理由の一つでもあり、良い協力関係にあるといえます。 4.エベラールの代表シリーズ 4-1.トラベルセトロ 出典:EBERHARD トラベルセトロは1996年に発表されたシリーズで、大型時計の先駆けと言われています。CEOのパルミロ・モンティが考えたのは「ラグジュアリーになりすぎずも印象に残り、かつ当時のトレンドだった控えめな時計と一線を画す時計」でした。思いついたのは、誰も想像したことがないような大きさで、クラシックなフォルムを持つ、まるで懐中時計のような腕時計。 当時ケースサイズは36mmが主流な中で43mmのモデルの製作には周りが大反対したものの、これから大型時計のトレンドが来るとし、CEO権限で強行。彼の読み通り、1990年後半はデカ厚ブームになり、今でもその影響は残っています。 トラベルセトロはそんな大ぶりの時計として開発されたため、懐中時計のムーブメントユニタス6498-1を搭載。手巻きの心地よい巻き上げ感と毎時18,000振動のロービートの響きが特徴です。先端が鋭いリーフ針と夜光処理など、クラシックなデザインにまとまっています。大人の余裕を感じるようなゆったりとしたデザインで、極めてシンプルな手巻き3針ですが長く楽しめる時計です。 世界のセレブリティの憧れフィアット元名誉会長のジャンニ・アニエリがこよなく愛したモデルで、オンザカフス(シャツのカフスの上に腕時計を着けるスタイル)で世界中のファッションのアイコンとなりました。ちなみにトラベルセトロとはイタリアの小さな町の名前で、パルミロの亡くなった友人を思い名付けたといわれています。 4-2.タツィオ・ヌヴォラーリ 出典:EBERHARD タツィオ・ヌヴォラーリはドリフト走行の生みの親と言われるイタリア人レーサーです。イタリアの誇る名ドライバーで、悪路やトラブルにこそ力を発揮し数々のレースで勝利を収めてきました。周りのレーサーが大柄な中で162cmと小柄なのは彼だけであったり、当時性能が決して高くなかったアルファロメオ社製のレーシングカーで勝利するなど、技術以上にメンタルの強さなど、多くのイタリア人が誇りに思っている偉人の一人です。 エベラールはヌヴォラーリグランプリのメインスポンサーを務めています。タツィオ・ヌヴォラーリがかつてエベラール製の懐中時計をポケットに忍ばせてレースに出場していたと言われていることと彼の生き様に共感し、開発されたのがタツィオ・ヌヴォラーリシリーズです。 シリーズは大きく分けて3種類です。タキメーターをベゼルに配置した黒文字盤のクールなタツィオ・ヌヴォラーリ、タキメーターを文字盤中心に配置し、クラシックな印象を強めたタツィオ・ヌヴォラーリレジェンド、彼の優勝した最も有名なレースにちなんだヴァンダービルトカップとなっています。 共通しているのはクロノグラフを備えていることと、彼を象徴する亀のエンブレムが描かれていること。世界一速い男に世界一遅い生き物のエンブレムが与えられており、この2つはどのモデルにも備わっています。 4-3.スカフォグラフ 出典:EBERHARD スカフォグラフは1959年に発表されたエベラールのダイバーズウォッチシリーズです。1950~60年代にかけてダイバーズウォッチが普及していく中の一つでした。初代のスカフォグラフ100として100m防水モデル、翌年にスカフォグラフ200の200m防水が発表されました。ダイバーズウォッチは競合が多く、ロレックスやブランパンなどのビッグブランドがひしめく中で抜きんでる必要があり、この2種類はあまり人気が出なかったと言われています。 1964年に更に改良を施したスカフォグラフ300、300m防水を備えたモデルを発表。たちまち人気となり、スカフォグラフのDNAを受け継ぎつつ500m、1000m防水と防水性能に特化したスカフォダットを発表しました。2016年にはスカフォグラフ300を復刻し、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)のスポーツウォッチ部門で受賞しています。 復刻版のスカフォグラフ300は逆回転防止ブラックセラミックベゼルの採用や43mmケースへの拡大など現代的にアップデートされていますが、発表当時のレトロさも残されています。GPHGで受賞を果たしたことをきっかけに追加されたのがスカフォグラフGMTです。防水性能は100mですが、第二時間帯表示機能を搭載しスポーティーで実用的に仕上がっています。さらにセラミックベゼルとマザーオブパールを組み合わせたレディースモデルスカフォグラフ100を発表。着々と展開を増やしています。 4-4.クロノ4 出典:EBERHARD クロノ4はエベラールのアイコン的存在として、現在最も知られているシリーズの一つです。スケルトン加工された針、12時位置に日付表示。文字盤下部に4つのインダイヤルを横一列に配置したデザインが特徴です。クロノグラフの分、時、24時間表示、スモールセコンドの順に並んでいます。しかもこの革新的なデザインをETAムーブメントで達成しているため、メンテナンス性も優秀です。 2001年の発表時には40mmだったケースサイズは2008年のグランタイユで43mmに、2010年のジェアンで46mmに拡大しています。同時に文字盤カラーとチタン等の素材バリエーションを増やしており、クロノ4誕生20周年記念としてクロノ4 21-42が発表されています。最新モデルではクル・ド・パリ仕上げ文字盤など、それまで以上にクラシックな雰囲気が強調されています。 4-5.サイエンティグラフ 出典:EBERHARD 1950年代から急速に普及し始めた電化製品による磁気帯びの影響への対策として開発されたシリーズです。1961年に発表され、早くから耐磁時計の開発に力を入れていたことがわかります。軟鉄製インナーケースを用いたポピュラーな手法ながら、人気を博しました。2021年に初代のDNAを確かに残しつつ、現代的なエッセンス・最新の技術により復刻しています。 マットブラックな文字盤は端が少し落ちるようになっており、針も少し追いかけるように先端が曲げられています。オレンジ色の夜光処理が施された針は独特の三角形が付いた時針、バトン針の分針、先端手前に丸が付いた秒針は視認性が確保されています。全てのアプライドインデックスが同じ夜光処理が施されています。 裏蓋はスチールバックで、初代同様に軟鉄製のインナーケースで耐磁性を備えています。国際規格のISO 7642020に準拠しており、耐磁性を備えた時計として公に承認されています。耐磁性を備えた時計の多くは風変りなデザインが多いものですが、サイエンティグラフは日常使いしやすくなっています。 4-6.8ジュール 出典:EBERHARD 1997年に発表した8ジュールは8日間を意味しており、その名の通り8日間のパワーリザーブを備えたシリーズです。2本のぜんまいを重ね合わせることで、標準が30cmなのに対し1.5mと5倍の長さを搭載した特許を取得した機構を搭載しています。8日間に一度巻き上げをすればいいのですが、特許を取得している残り日数のインジケーターはシンプルで分かりやすいデザインです。 これまでは白文字盤と黒文字盤のシックなカラーリングだけでしたが、2022年に白文字盤にネイビー文字、ネイビー文字盤の2種がグランタイユとして発表されました。8ジュールとしては初めてギョーシェを使った文字盤デザインで、クラシック・スポーティーな印象に仕上がっています。グランタイユといっても41mmケースのため他ブランドに比べても標準サイズで使いやすくなっています。現在はグランタイユのみの展開となっています。 4-7.エクストラフォルト 出典:EBERHARD エクストラフォルトは1940年に初代が発表されたクロノグラフシリーズです。創業から50年の技術を結集して開発したスライディングプッシュボタン付きモデルが初代で、1950年代に入るとエベラールの旗艦モデルとして高い人気となりました。スポーツ・エレガントの先駆け的存在とも言われており、後にエベラールのクロノグラフ全体に影響を与えたシリーズと言われています。 1950年代当時、機械式時計の全盛期のエクストラフォルトを復刻させるにあたり、現代的なエッセンスと最新の技術を盛り込んでいます。シンプルでエレガントなクロノグラフのお手本ともいえる美しさは健在で、スプリットセコンドクロノグラフを搭載した特別モデルも発表されています。 基本のデザインはツーカウンターのクロノグラフです。12時だけのアラビアインデックスと6時位置の日付表示窓、楔形インデックス、タキメーターと鋭めなドーフィン針、レトロな雰囲気の残る四角いプッシュボタンとクラシックな要素で溢れています。 4-8.コントグラフ 出典:EBERHARD 1960年に発表されたコントグラフは時計愛好家の間で人気の高いシリーズです。ツーカウンタークロノグラフ、逆回転防止ベゼル、ドーフィン針などスポーツ・エレガントを象徴するデザインが特徴で、トレンドを先取りするように発表されました。エベラールの先見の明を象徴するシリーズの一つです。 2014年に現代的なエッセンスを加え復刻しており、ケースサイズは42mmへ拡大。しかし機械式時計の全盛期に発表された初代の雰囲気がしっかり残されています。ムーブメントはETA7750を搭載しているためメンテナンス性に優れています。ETA問題もあり、時計業界全体が自社製ムーブメント偏重ですが、ユーザーへの価格設定上、エベラールはETA製ムーブメントを使い続けるメリットが大きいと感じているようです。 4-9.1887 出典:EBERHARD 1887は2019年に発表されたばかりのシリーズで、創業年に思いを馳せて開発したとされています。懐古的なテーマの通りクラシックな面持ちで、長さがきっちりレイルウェイに届くように設定された鋭い剣針、偶数位置のローマンインデックスと奇数位置の楔形インデックス、日付表示窓の縁取りはカラーリングが統一されています。ロゴとシリーズ名はステージに描かれているため一段高い位置にいることでクラシックな雰囲気と高級感が演出されています。 自社製ムーブメントEB140が搭載されており、手巻きなので裏面からムーブメントの動きを見ることができます。ETA製を参考にしつつ大きめの地板を使う独特なデザインです。ベゼル、ラグは細身で、ムーブメントに合わせて設計された時計のような印象です。機械式時計の全盛期である1950年頃を思わせるレトロな雰囲気がこのシリーズの魅力です。 4-10.フレッチェ・トリコローリ フレッチェ・トリコローリはイタリア空軍の最も有名な曲技飛行グループ「フレッチェ・トリコローリ」の公式時計として採用されたモデルです。1930年にイタリア海軍将校に採用されたことをきっかけにエベラールの評価が高まっていきますが、1984年に公式時計として共同開発されました。 可動式のラグなど他のシリーズとは違う独特な世界観を持ったモデルです。凹凸の付いたベゼル、リューズを囲うように丸の装飾が付いているのはグローブのまま操作するため。根元を補足したバーハンド、バーインデックス、ベゼルは夜光処理を施し視認性を高めています。3時位置にはフレッチェ・トリコローリのロゴとそれを支えるようにひっそりとブランド名が描かれています。裏蓋には飛行機の刻印が刻まれています。 5.エベラールのおすすめモデル5選 5-1.トラベルセトロヴィトレ Ref.21020.5 出典:EBERHARD トラベルセトロヴィトレ Ref.21020.5は最もシンプルなシリーズの一つトラベルセトロの白文字盤モデルです。デカ厚ブームの先駆けとして生まれたため、懐中時計のムーブメントを搭載しています。巻き上げ感やロービートの雰囲気など、古き良き時代を思わせるようなクラシックさがあり、手巻き3針の機能が最小なのもマッチしています。 ヴィトレとはシースルーバックのことで、日本国内に流通しているのはすべてヴィトレです。手巻きムーブメントを巻き上げる際の歯車からてんぷが動くところまでを見ることができる楽しみは、ロービートなら特に心地よいものです。先端が鋭いリーフ針や、中心に向けて読めるように傾いたインデックスなど、実は独特の雰囲気をもっているデザインがエベラールならではのセンスが楽しめます。 5-2.8ジュールグランタイユ Ref.21027.1 出典:EBERHARD 8ジュールグランタイユ Ref.21027.1は8ジュール(8デイズ)のグランタイユ(ビッグサイズ)モデルです。8ジュールの名の通り、8日間に一度巻き上げればよいロングパワーリザーブモデルです。その秘密はぜんまいの長さにあり、通常は30cm程度のところ8ジュールは5倍の1.5mを備えているため、単純に長く駆動します。実際に巻き上げてみると、通常の時計よりも巻き止まり(巻き上げ完了位置)までが長いのを実感できます。 文字盤デザインはシンプルな白ベースにオールアラビアインデックス、鋭く長いリーフ針のポピュラーなデザインです。特許を取得している8日間パワーリザーブ表示とスモールセコンドはレイルウェイのように1目盛りずつ描かれており、クラシックな印象も。裏面からムーブメントの動きは見えないのですが、香箱内でぜんまいが巻きあがるさまが見えるようにのぞき穴が備わっています。のぞき穴には数字の8がデザインされています。 5-3.タツィオ・ヌヴォラーリ Ref.31038.5 タツィオ・ヌヴォラーリ Ref.31038.5はイタリアの伝説のドライバー「タツィオ・ヌヴォラーリ」の生誕100周年をたたえて発表されたモデルです。黒文字盤にシンプルな夜行処理されたペンシル針、細目の文字でスマートにベゼルに描かれたタキメーターなど、エレガントかつスポーティーな印象に仕上がっています。 9時位置にはタツィオ・ヌヴォラーリのサインとグッドラックトータスが描かれています。この亀のエンブレムは世界一速い男に世界一遅い生き物を、と与えられたエンブレムで、彼の功績の凄さを物語っています。シースルーバックになっており、ムーブメントの動きを見ることができます。自動巻きローターにはアルファロメオに乗る彼のモチーフを見ることができます。 5-4.クロノ4グランタイユ Ref.31052.1 出典:EBERHARD クロノ4グランタイユ Ref.31052.1はエベラールのアイコン的存在クロノ4の43mmケースモデルです。スケルトン化された時分針と横一列に配置されたインダイヤルが特徴的です。ケースサイズは43mmと比較的大きく、クロノグラフなので厚みもしっかりのがっしり目のモデルです。 白・黒・赤のスポーティーなカラーリングになっており、レーシングカーのダッシュボードに着想を得たとされる横一列のインダイヤルのデザインがマッチしています。特別な機能を持ったモデルですがムーブメントはETA製を使用しており、メンテナンス性にも優れています。 5-5.スカフォグラフ300 MCMLIX Ref.41034VS.10 CP 出典:EBERHARD スカフォグラフ300 MCMLIX Ref.41034VS.10 CPはエベラール唯一のダイバーズウォッチシリーズのスカフォグラフから2023年の新作です。スカフォグラフはエベラールにとって挑戦と成功を象徴しており重要な扱いとされており、復刻盤のヒットに合わせて発表されたのがMCMLIXモデルです。MCMLIXモデルは誕生年の1959年を表しており、オールブラックの文字盤とベゼルへのヴィンテージな風合いのある夜光処理が特徴です。 今回発表したのは新色のブラウン。マットブラウンの文字盤、ベゼルでの展開で、レザーストラップと組み合わせるとよりヴィンテージな雰囲気が楽しめます。逆回転防止ベゼルやねじこみリューズ、9時位置のヘリウムエスケープメントバルブなど、本格的な機能も備えており防水性は300mとなっています。裏蓋にはシリーズの象徴とされるヒトデの刻印がされており、シックな中にカジュアルさも見える普段使いしやすいモデルです。 まとめ エベラールの歴史、魅力、イタリアの人気の理由、代表シリーズ、人気モデルについてまとめました。エベラールは現在もイタリアで高いシェアをもつブランドで、他の時計ブランドとは違った歴史や魅力をもっています。エベラールの日本での本格的な取り扱いは始まって間もないので、もし街中でエベラールの時計を見かけたらぜひ一度手に取ってみてください。

2023年7月14日

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