ルイヴィトン愛好家なら誰もが知る人気の高いバッグ「スピーディ」。その歴史は古く、誕生は1930年頃と言われており、90年以上が経過した現在でも、人気は衰えることを知りません。今回は、そんなスピーディについて詳しく解説します。

まず、スピーディの誕生から現在までの歴史を紹介し、その魅力と特徴、さまざまなサイズやライン展開について説明します。続いて、スピーディが「ダサい」と言われる理由の考察、昔の値段、新型と旧型の違い、そして再ブーム到来について解説します。本記事を通して、スピーディの魅力をより深く知っていただければ幸いです。

1.ルイヴィトンのスピーディとは

スピーディは、旅行かばんのキーボルを原型とするルイヴィトンの代表的なバッグです。1930年頃に正式名称が付けられ、ボストンバッグの形状を保ちながら、コンパクトなハンドバッグへと進化しました。世界的な女優オードリー・ヘップバーンのカスタムオーダーや、著名人とのコラボレーションを経て、ルイヴィトンのアイコンバッグとしての地位を確立しました。

スピーディの魅力は、コンパクトな外観ながら優れた収納力を持ち、多様なサイズとラインナップを展開している点にあります。近年再び注目を集めているスピーディの魅力について、詳しく解説していきます。

2.スピーディの誕生から現在までの歴史

スピーディの起源は、1924年に登場した旅行かばん「キーボル」にさかのぼります。当初は旅行用として30・40・45の3サイズで展開されていました。1960年代、世界的女優オードリー・ヘップバーンのカスタムオーダーを受け、スピーディ25が誕生し、大ヒット商品となりました。

その後、様々なコラボレーションを経て、スピーディはルイヴィトンのアイコンバッグとしての地位を確立しました。以下では、スピーディの誕生から現在までの歴史を詳しく解説します。

2-1.トランク製造職人として地位を築いた創設者のルイ・ヴィトン

ルイヴィトンの創設者ルイ・ヴィトンは、若くしてトランク製造職人としてのキャリアをスタートさせました。高級仕立て服の梱包技術にも長け、その卓越した技術は世界中のセレブリティから高く評価されました。そして1854年、ルイ・ヴィトンは独立し、パリに旅行かばん専門店「ルイ・ヴィトン」を開業したのです。

2-2.平らで丈夫なトランクケースが大ヒット

ルイ・ヴィトン創業初期の大ヒット商品は、平らなフォルムのトランクケースでした。当時、セレブの間で流行していた船旅に最適だったためです。従来の丸みを帯びたトランクとは異なり、ルイ・ヴィトンのトランクは積み重ねが可能で、防水性と耐久性にも優れていました。これらの特徴が、ブランドの名声を高める大きな要因となったのです。

2-3.旅行用バッグ「キーボル」の誕生

世界的な注目を集めたルイヴィトンは、1924年に旅行かばん「キーボル」を発表します。自動車の普及に伴い、トランクとは別に持ち運べる大容量の旅行バッグとして開発されました。

2-4.スピーディの名前の由来は？

1930年頃、ルイヴィトンは、旅行バッグのみならず日常使いできるサイズのバッグ「エクスプレス」を発表します。後に、自動車の助手席に置けるコンパクトサイズのバッグとして進化し、名称を「スピーディ」に変更しました。「エクスプレス」（仏語で「すばやい」）から「スピーディ」（英語で「より早く」）への変更は、時代の速さを反映しています。

2-5.オードリー・ヘップバーンがカスタムオーダー

1960年代、ハリウッドの大女優オードリー・ヘップバーンが、より小型のスピーディをルイ・ヴィトンにカスタムオーダーしました。これを受けて「スピーディ25」が誕生しました。ヘップバーンの愛用により、スピーディ25は瞬く間に世界的な注目を集め、ルイ・ヴィトンを代表するアイコンバッグとなったのです。

2-6.スピーディはメゾンのアイコンバッグとして確固たる地位を確立

1997年にクリエイティブ・ディレクターに就任したマーク・ジェイコブスの下、スピーディは多彩な展開を見せました。現代アーティストの村上隆や草間彌生とのコラボレーションなど、常に注目を集め続けたのです。

2024年春夏メンズコレクションでは、新メンズ・クリエイティブ・ディレクターのファレル・ウィリアムスが、初コレクションでスピーディの新作を発表。これにより、スピーディがウィメンズだけでなく、メンズアイテムとしても確固たる地位を築いていることが示されました。

3　スピーディの魅力と特徴6選

1930年頃の登場以来、90年以上愛され続けているスピーディ。丸みを帯びた伝統的フォルムを保ちながら、時代に合わせて進化し、幅広い年齢層から支持を得ています。以下では、スピーディの魅力と特徴を6つのポイントに分けて解説します。

3-1.①サイズ展開が豊富

スピーディの魅力の一つは、豊富なサイズ展開です。いくらデザインやフォルムが気に入っていたとしても、使用シーンに合っていないサイズを選んでしまうと、使用頻度も低くなってしまう可能性があります。すべてのサイズをご紹介しますので、あなたが求めている大きさを確認してみてください。

以下に、スピーディの6つのサイズを紹介します。

3-1-1.ナノ・スピーディ

ナノ・スピーディは、スピーディシリーズ最小のモデルです。スマートフォンやICカードなど、必要最小限の荷物のみ収納可能な大きさです。実用性よりもファッション性を重視し、ルイヴィトンのラグジュアリーアイテムとして楽しみたい方に適しています。コーディネートのアクセントやセカンドバッグとしてもおすすめです。

3-1-2.スピーディ・バンドリエール20

スピーディ・バンドリエール20の特徴は、標準でショルダーストラップ（バンドリエール）が付属していることです。20サイズではこのモデルのみが販売されており、ストラップなしの選択肢はありません。キャッシュレス化が進む現代において、必要最小限の荷物で外出する方に最適なサイズです。

3-1-3.スピーディ25

スピーディ25は、コロンとした愛らしいフォルムが特徴で、オードリー・ヘップバーンのカスタムオーダーから生まれたサイズです。ちょっとしたお出かけや、荷物が少なめの方に最適です。このサイズは、実用性とスタイルのバランスが取れており、日常使いからカジュアルなパーティーまで幅広く活用できます。

3-1-4.スピーディ30

スピーディ30は、コンパクトな外観ながら、驚くほどの収納力を備えています。日常の必需品に加え、文庫本や大きめの化粧ポーチなども余裕で収納可能です。遠出や荷物が多めの方に最適なサイズで、ビジネスシーンでも活用でき、様々な場面で使える多目的なバッグです。

3-1-5.スピーディ35

スピーディ35は、原型の旅行かばんキーボルを彷彿とさせる大容量モデルです。短期旅行、マザーズバッグ、ビジネスバッグなど、多様なシーンで活躍します。A4サイズの書類や500mlのペットボトルが収納可能で、ショッピング時の荷物増加にも対応できる余裕のあるサイズです。

3-1-6.スピーディ40

スピーディシリーズ最大のスピーディ40は、大容量ながらも伝統的な丸みを帯びたフォルムを維持しています。家族旅行の荷物をまとめて収納したり、ジム通いに使用したりと、多量の荷物を運ぶ際に重宝します。ルイヴィトンの伝統と機能性が見事に融合したモデルです。

3-1-7.スピーディのサイズはバッグを見れば識別できる？

スピーディのサイズ展開は豊富であり、一目見ただけではサイズの区別がつきにくいかもしれません。そこで、スピーディのサイズを識別する方法を紹介します。

多くのスピーディモデルでは、ファスナー横のレザーパーツの裏に数字が刻印されています。例えば、「40」はスピーディ40を、「30」はスピーディ30を示します。ただし、この刻印はすべてのスピーディに共通ではなく、製造年によっては省略されている場合もあります。

この識別方法は、特に中古市場でスピーディを購入する際や、自身のスピーディのサイズを確認する際に役立ちます。

3-2.②バンドリエールを展開

スピーディには、バンドリエール（ショルダーストラップ）付きのラインも展開されています。このストラップにより、ショルダーバッグや斜めがけバッグとしての使用が可能となり、体への負担軽減と多様なファッションスタイルの実現につながります。

長さ調節と取り外しが可能なスピーディのバンドリエールは、身長や体形、ファッションに合わせて最適な長さで使用できます。この機能性により、スピーディの使い勝手が大幅に向上し、魅力的なアイテムとなっているのです。

バンドリエールの種類も充実しており、ヌメ革やレザーを使用したスタンダードなものから、「LOUIS VUITTON」の文字が縫製されたジャガード生地のものまで幅広く展開されています。特筆すべきは、スピーディ・バンドリエール20にジャガード生地のストラップが採用されている点です。バッグ本体だけでなく、バンドリエールの選択によってもスピーディの印象を変えられることが、魅力の一つとなっています。

3-3.③ラインが豊富

スピーディは、ラインが豊富な点も大きな魅力です。バッグのラインによって、その印象は大きく変わります。ここでは6つの代表的なラインをご紹介しますので、あなたに最適なラインを見つけるヒントにしてみてください。

3-3-1.モノグラム

モノグラムは、一目でルイヴィトンのアイテムだと認識できる象徴的なラインです。1896年に登場したこのデザインは、ルイヴィトンの伝統を体現しています。ルイヴィトン愛好家にとっては欠かせないラインであり、中古市場でも安定した人気を誇ることが特徴となっています。

3-3-2.ダミエ

ダミエは日本の市松模様にインスピレーションを得たラインで、四角形を交互に配置したデザインが特徴です。多くの人が一目でルイヴィトンの製品だと認識できる、人気の高いラインとなっています。モノグラムより落ち着いた印象を与えるため、控えめながらもブランドを主張したい方におすすめです。

3-3-3.エピ

1985年に登場したエピは、ルイヴィトンを代表するラインとして高い評価を得ています。上質なグレインレザーに麦の穂が揺れる様子を細かく型押ししたデザインが特徴で、ブランドを前面に押し出さない洗練された印象を与えます。ルイヴィトンに詳しい人だけが分かるような、さりげない高級感を求める方におすすめのラインです。

3-3-4.アンプラント

アンプラント（モノグラム・アンプラントとも呼ばれる）は、牛革にモノグラムパターンをエンボス加工したデザインが特徴の人気ラインです。エレガントな印象を与えるため、ビジネスシーンや式典などのフォーマルな場面に適していますが、日常使いにも向いている万能なラインとなっています。

3-3-5.モノグラム・アンプラント バイカラー

モノグラム・アンプラント バイカラーは、カウハイドレザーにモノグラムパターンをエンボス加工とプリントで施したラインです。通常のモノグラムより大きなロゴが特徴で、プリント加工により、モノグラムパターンがより鮮明に表現されています。定番モノグラムの魅力を残しつつ、個性的なデザインを求める方におすすめです。

3-3-6.モノグラム・チェリー

スピーディは、注目を集めるコラボ商品の歴史を持ちます。その一つ、モノグラム・チェリーは、2004年に現代美術家の村上隆と当時のアーティスティック・ディレクター、マーク・ジェイコブスのコラボレーションから生まれました。このラインは、伝統的なモノグラム柄の上に、愛らしい表情のチェリーをプリントしたデザインが特徴です。

発売から約20年経った現在も高い人気を誇り、中古市場では高値で取引されています。

3-4.④丸みを帯びた特徴的なフォルム

丸みを帯びた特徴的なフォルムも、スピーディの魅力の一つです。このフォルムは柔らかい印象を与え、様々なファッションスタイルに調和します。さらに、見た目以上の収納力を備えており、コンパクトな外観ながら予想を上回る容量を持つため、使い勝手にも優れています。

3-5.⑤シンプルな内装

スピーディの大きな特徴の一つが、シンプルな内装です。ポケットが一カ所のみのシンプルな作りで、仕切りがないため大きな荷物の出し入れがしやすくなっています。また、小物を多く入れたい場合は、ポーチやインナーバッグを使用して自分好みにアレンジできる自由度の高さも魅力です。

3-6.⑥使う年齢層を選ばない

スピーディは1930年頃の登場以来、90年以上もの長きにわたり愛され続けているバッグです。時代を超えて変わらないフォルムと、多彩に展開されるラインにより、どの世代からも高い支持を得ています。伝統と革新を巧みに融合させたスピーディは、これからも年齢を問わず愛用されるバッグとして、その地位を確立し続けるでしょう。

4.ルイヴィトンのスピーディはダサいって本当？

スピーディの魅力や特徴、長年にわたる高い人気について紹介してきましたが、一部からはダサいという評価も聞かれます。その理由を考察し、解説していきます。

4-1.理由①人と被りやすい

スピーディがダサいと言われる主な理由の一つに、人と被りやすい点が挙げられます。これは人気ブランドの定番バッグに共通する課題と言えるでしょう。街中で同じスピーディを持つ人を頻繁に見かけることで、独自性を求める人々の中に物足りなさを感じる方もいます。

決して安くはない価格帯にもかかわらず、同じバッグを持つ人を多く見かけることで、残念に思う人もいるようです。特に、ルイヴィトンを象徴するモノグラムラインは目立ちやすく、このような印象を強める要因となっているのです。

4-2.理由②コピー商品が多く出回っている

ルイヴィトンは世界中に多くのファンを持つ人気ブランドですが、その人気ゆえにコピー商品が多く出回っています。中には精巧なコピー品もあり、一見して見分けるのが難しい場合もあります。

一方で、明らかなコピー商品を持ち歩く人を見て、ダサいと感じる人も少なくありません。真のルイヴィトン愛好家にとって、コピー商品はブランドの価値を貶めるものであり、それがダサいという印象につながっているのです。

4-3.理由③手の届きやすい価格のイメージがある

かつてのルイヴィトン製品は、比較的手の届きやすい価格設定であったことをご存じでしょうか。特に1980年代には、学生でも購入できる価格帯で販売されていました。この過去のイメージが、現在でもスピーディにダサいという印象を持たせる一因となっています。

4-3-1.スピーディの昔の価格は破格？

1980年代のスピーディは約10万円で販売されていましたが、2024年9月現在、スピーディ・バンドリエール25（モノグラム）の価格は279,400円となっており、大幅な価格上昇が見られます。

ルイヴィトンの近年の値上げは顕著で、2022年と2023年にはそれぞれ年4回の値上げを実施しました。この背景には、原材料価格の高騰や人件費の上昇があります。しかし、これはルイヴィトンがブランド価値を高め、富裕層をターゲットにシフトしている戦略の表れとも考えられます。

このような価格戦略の変更により、「手の届きやすい価格だからダサい」という印象は今後薄れていく可能性が高いでしょう。

5.スピーディの旧型と新型の違いとは？

スピーディは約40年前には10万円前後で購入できましたが、現在は頻繁な価格改定により年々高価になっています。このため、新品ではなく中古品に注目が集まっています。2015年頃を境にモデルチェンジが行われ、旧型と新型では仕様が異なります。

中古品の購入や売却を検討している方は、これらの違いを参考にしてみてください。

5-1.違い①内ポケット

スピーディの内ポケットは、新旧型で2点の違いがあります。一つ目は、旧型がオープンポケットであるのに対し、新型はファスナー付きポケットになっている点です。二つ目は内ポケットの素材で、旧型はコーティング加工されたキャンバス、新型は内装と同じキャンバス素材が使用されています。

5-2.違い②ハンドルの付け根の縫製方法

スピーディの旧型と新型は、ハンドルの付け根の縫製方法でも見分けることができます。ハンドルの付け根とは、ビスが打たれたレザー素材でバッグと縫い合わせる部分です。旧型ではビスの下に縫い目が配置されていましたが、新型ではビスの上に縫い目があります。

この変更により、バッグの強度が増し、ヌメ革の耐久性も向上しました。新しい縫製方法は、バッグの長寿命化につながる重要な改良点と言えます。

5-3.違い③型番

ルイヴィトンの各アイテムには独自の型番が割り当てられており、スピーディも例外ではありません。旧型と新型では異なる型番が使用されているため、これを確認することで一目で区別が可能です。例えば、スピーディ25のモノグラムパターンの場合、旧型はM41528、新型はM41109という型番が付けられています。

6.スピーディは再ブーム到来！

スピーディは常に高い需要を誇るバッグですが、最近では再びブームが訪れていると言われています。この再ブームの要因として、二つの理由が挙げられます。

6-1.メンズコレクションで新作を発表

2024年春夏メンズコレクションでの新作発表が、スピーディブーム再燃の一因となっています。新たにルイヴィトンのメンズ・クリエイティブ・ディレクターに就任したファレル・ウィリアムスによるデザインが注目を集めました。音楽プロデューサーとしても知られるウィリアムスは、ファッションやアート分野でも活躍しています。

新作の「スピーディ P9 バンドリエール」は、ヌバックカーフレザーの滑らかな素材に、レザー刺繍とツイルを組み合わせたモノグラム・モチーフが特徴です。Rouge（赤色）、Vert（緑色）Jaune Mat（黄色）、Blue（青色）の鮮やかなカラーバリエーションも魅力となっており、妊娠中のリアーナがこのバッグを持って登場したことでも話題を呼びました。

この新作により、スピーディがウィメンズだけでなくメンズアイテムとしても価値を持つことが示され、再ブームの大きな契機となっています。

6-2　Y2Kファッション

Y2Kは「Year 2000」の略で、1990年代後半から2000年代初頭に流行したファッションを指します。現在、この時代のアイテムを現代風にアレンジしたレトロスタイルが注目を集めています。その中で、スピーディが積極的に取り入れられており、これが再ブームの一因となっているのです。

この現象は、スピーディが時代を超えて活用できるバッグであることを示しています。今後もルイヴィトンを代表する象徴的なアイテムとして、多くの人々に愛され続けるでしょう。

7.伝統あるスピーディは魅力あふれるルイヴィトンのアイコンバッグ

旅行かばん専門店として始まったルイヴィトンは、人気のボストンバッグ「キーボル」を生み出しました。スピーディはこのキーボルを原型とし、そのフォルムをコンパクトにしたものです。見た目以上の収納力と使いやすさから、スピーディはすぐにブランドを代表するバッグとなりました。

一時期ダサいと評されたスピーディですが、その理由は人気ブランド特有の課題でした。しかし、価格帯の変化がこの問題の解決につながる可能性があります。

幅広い年齢層に支持されるスピーディは、Y2Kファッションの流行やメンズ向け新作の登場により、さらに多様な層から注目を集めています。ルイヴィトンと歩んできたスピーディの今後の発展が期待されます。